絶対零度の悪役令嬢

５.ヒロイン登場！

体育祭②

…玉入れ以降は、玉入れの前の時と同じく座って観戦している。同じチームの子には勿体ないと言われたが、最近疲れたし少しくらい休ませて欲しいのが本音だ。セパルと共に大人しく観戦に徹する。…訂正、頭の中でセパルがうるさい。


  唯一駆り出されたといえば、借り物競争だった。ダレンが照れながら私に同行を頼んできて、深く考えずに一緒に走った。


「殿下が引いたのは、“婚約者”だったのですね！微力ながら尽力致しますわ」


…そう言ったら、何故か悲しげな顔をされた。


さらに、競技は続き、女子待望の騎馬戦がやって来る。何が待望か？簡単だ、男子が上半身裸だからだ。普段目にすることのない男子の筋肉に、深窓の令嬢達が密かに熱を上げている。


騎馬戦では、ペイント弾を用いて戦いが行われる。騎馬に乗った生徒が肩、腹、足に付けたマーカーにペイント弾を撃たれたらそこが光る。そして、全てが光った時、ゲームオーバーとなる。

騎馬戦は、過去激し過ぎて怪我人が続出したことから、このルールに変わったそうだ。一見、ぬるく見えるこの騎馬戦だが、息もつかせぬ頭脳戦となっており、見ている分にも楽しい。騎手のマーカーを庇うため、騎馬の学生はペイントを被りまくる。申し訳ないが、ちょっと笑ってしまう。


相手にばれずに忍び寄る隠蔽魔法や、幻術が得意な生徒は、敵に幻を見せる間に騎馬を次々に崩していく。


そんな激戦の中、私が注目したカードはフレッドとリュドシエルの戦いだ。フレッドは回避能力が群を抜いている。…日頃の賜物に違いない。一方、それに相対するシエルは、生物魔法を用いてフレッドを捕らえようとしていた。巨大な植物がフレッドの自由を奪うべく、彼に襲いかかる。


「お～！こいつ、ほんとに庶民かよ…どっかで実技習ってただろ～」


シエルの操る植物が、フレッドの腕を捕らえる。その瞬間、シエルは素早くペイント弾を撃ち込んだ。ピカピカ光るマーカーを見て、フレッドは降参！と片手を上げた。


 
 のんびり観戦していると、体育祭の目玉、組対抗リレーが始まった。この競技は、身体強化した選手が主に挑む。イケメンが多いと言われる魔法騎士の多くが参加するため、これまた女子が非常に盛り上がる。


 そこで満を持して登場したのが、我が兄である。アスター兄様は観客に向かって爽やかに手を振り、グラウンドの中心へ向かう。兄様とは別の組になってしまったことが、何よりも残念…！


周囲の期待を裏切ることなく、兄様はアンカーとして他の選手を寄せつけない圧倒的な走りを見せた。正直、自分の組の応援より兄様の応援をしてしまった。すまん、我が組の選手。


 こうして全競技を終え、私の組は準優勝に終わった。体育祭にそこまで熱を上げなかった私はそれを適当に聞いていた。


学園で初めての体育祭は、歓声の中閉幕した。