絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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5.ヒロイン登場!

体育祭①

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 準備期間に色々と問題があったものの、無事体育祭の日を迎えている。


 なお、あの一件から私はさらに遠巻きにされるようになった。…悲しくなんてないやい。唯一熱心に声をかけてきたのは水球部の皆さんだった。いや、私もう部活入ってますんで。


 体育館倉庫入口粉砕事件、長ったらしいがあの事件はこう呼ばれている。しかし、私は完全に被害者なので、特にはお咎めはなかった。ただ、もっと穏やかな方法があったんじゃないかな?と優しく聞かれた。ごもっとも。


あの時はああするしかなかった。主に、私の精神安定のために。入口には尊い犠牲となって頂いたが既に修復されている。備品についても、一部を除いて無事だった。その一部は弁償すると言ったのだが、フレッドが代わりに弁償を受け持ってくれた。


まぁ、彼も私の怒りの原因の一つだったしな。有難く、彼に頼んでおいたのだ。


 そして、その事件の余波はまだある。無駄に私の名前が広まってしまったことだ。悪い意味ではないが、ジロジロと見られるのは気持ちの良いものではない。


 『そなた、妾の居らん時に何楽しそうなことをしておる』


セパルには妙な責められ方で怒られた。楽しいことなんて何もないでしょうが。私の心配は一切なしか。


というふうに、体育祭を前にどっと疲れた私は、大人しく座っている。出場登録したの、玉入れだけで良かった…。


 この学園での玉入れは、空飛ぶ籠に順番通りに玉を入れなくてはならない。玉には一つ一つ番号が振ってあるので、それを正しい順に入れていくのだ。そのためには、探知魔法などが役に立つ。


しかし、玉入れだからといって安心してはならない。この玉入れでは、違うチームの玉を敢えて奪うことも許されているからだ。だから、玉入れをして点数を稼ぐ側と、相手チームからの妨害を防ぐ側とに分かれて学生は戦う。


意外とハードな競技なのだ。


玉入れの時間が近付いてきたので、選手の控えの場所へ向かう。この試合にはダレンも出るらしい。彼が私に気付いて手を振ってきた。それに笑顔で応えると、彼は顔を真っ赤にして俯いてしまった。


…王子、どんだけ初心だ!


しかし、王子が玉入れに出るとは思わなかった。私とは違うクラスなので、勿論敵側なのだが彼は玉入れ役だろうか、それとも防御側?


いずれにしても、高貴が服を着て歩いているような人間である。果たして、真っ向から立ち向かえる相手がいるだろうか?


「ちょっと、前もっと詰めなよ。後ろが入らないだろ」


あ、この人がいたわ。ジャック・ブラウン、彼なら誰に対してもこの態度だ。うん、適役がいて良かった!


彼に謝りながら期待の目で見つめていると嫌そうな顔をされた。

…未来の国母になるかもしれない私の機嫌を一切取ろうとしない、この不遜な態度…期待できるじゃないの…。


…無理矢理、そう考えることにした。



ーーー



ピピー!!笛の高い音が鳴り響き、玉入れの選手がグラウンドに入場する。


いざ、尋常に…勝負!


スタートを告げる2度目の笛を聞いてすぐに、私は水魔法を操る。1年では、家庭教師を付けていた貴族を中心に魔法実技の能力が高い。入学前に実技を習うのは、彼らの間では常識だ。それ以外の学生も、今は簡単な実技しか習っていないが、皆出来る魔法を駆使してくる。

ちなみに、私は私の意思に関係なく、防御かつ妨害側に回された。…理不尽である。


しかし、任されたからには仕事は遂行!それが私のモットーだ。


龍を模した水が宙をうねり、相手チームの玉を巻き上げていく。おまけに、数字の低い玉ばかりを狙ったので、相手はすぐに玉を投げることができない。


その水を消そうとダレンが火魔法を繰り出すが、それをジャックが食い止める。


あれ、いい感じに連携取れている…。私がこうして水魔法を気持ちよく使えるのは、彼のアシストあってのことだ。


途中で、ダレンの魔法がジャックの魔法を打ち破るも、その時点で私のチームの有利は決まっていた。


ーー玉入れは私達の圧勝に終わった。


その後、3組とも戦ったのだが、マリンによる自爆の結果、あっさり勝負がついた。彼女は、「あーん、何で入んないのぉー?」と自分の投げた玉を自らの頭で受け止めていた。味方の3組は「ざまぁ」と言うべきか、「真面目にやれ」と言うべきか悩んでいたのだろう。集中力に欠けていた…。

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