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8.文化祭
後夜祭
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色々あったが、文化祭も終わりに向かって最後の盛り上がりを見せている。そう、皆が楽しみにしていた後夜祭が今、始まるのだ。
ちなみに、クラスの出し物で優勝をもぎ取ったのはアスター兄様のクラスだった。何でも執事喫茶で荒稼ぎしていたらしい。私達のクラスはというと、その次の2位だった。1年生ながら健闘した方だろう。
というわけで、結果発表も終え、皆はダンスのお相手を誘うのに必死な中、私はというとダレン王子と向かい合っていた。開けた外の敷地で流れてくるワルツに身を任せて踊る。
仮にも婚約者、こういう時はまず最初に踊るのが暗黙の了解なのよ。ダンスのステップを踏みながら、私達は会話を続けていた。
「劇、お疲れ様だった。あれなら1位でもおかしくないと思ったが…」
「まぁ、ありがとうございます。また来年リベンジといったところでしょうか」
お礼を言って微笑むと、ダレンは目線を逸らしながら何か呟く。
「そ、それにいつもよりも凛としていて…その、きれ…」
「よ~!仲良くやってるか?お二人さん!」
可哀想にダレンの言葉はフレッドの言葉に掻き消された。フレッド…。ダレンの友人なのよね?時々、彼の言動は酷いと思うのは私だけじゃないはず。
「ささ、今夜は無礼講!色んな奴と踊りまくれる機会だぞ。出し物の特典にはダンス申し込みの優待権なんてもんがあったけど、俺らには関係ないからな~」
そう、あの優待権は主に上流階級の貴族以外を対象としているのだ。公爵令嬢や王子などの身分の高い者は、別に遠慮せず誰にでもダンスを申し込める。
「そうだな、色々な縁を結ぶのも必要だろう」
「そうそう。よし、んじゃ手始めにクリスティーヌ、俺と一曲どうだ?」
色々な縁、どこいった?いつも見知った仲なんだけど。とはいえ、断るのも何なので手っ取り早く差し出された手を取る。
「貴方はもう少し自重した方が宜しいのではなくて?未だに色々な女の子と仲良くしていると聞いているけれど」
「お、嫉妬か?そうゆうのはダレンに向けてやって。あいつ、泣いて喜ぶぞ~」
また適当なこと言って話を逸らされた。フレッドと話しているといつもこうだ。巧妙に話をすり替えられるから、私は彼と話すのは苦手だ。
そもそも、嫉妬ではないし、王子もそれくらいで泣いて喜ぶわけがないだろう。私達は家柄などで親に決められた形ばかりの婚約者なのだ。王子もきっと私のような愛嬌のない女より、いつも笑顔の明るい子が良かっただろうに。
王子も運が悪いと、それらをまとめて結論付けると、フレッドは大げさに驚いてみせた。
「おい、嘘だろ…。あんなに分かりやすいのに、何で全く気づいてないんだ…」
「はい?」
一曲踊り終わった後、フレッドは「俺、王子慰めてくる」と意味の分からないことを言い、足早に去っていった。
取り敢えず、二人と踊ったので一旦ご飯を取りに校舎内へ入る。飲み物で喉を潤してから、準備されていたご馳走にありつく。
フレッドは沢山踊ろうぜ!と言っていたが、私にそのつもりはない。むしろ、一人早々に退散していたシエルを恨みがましく思ったくらいだ。
文化祭で行われていたミスコンの結果発表も、この後夜祭で行われていた。とはいえ、それに興味もないので、人々の関心が逸れている間に移動する。
料理を盛り付けたお皿を片手に、私は校舎内の適当な教室に入った。外で楽しげに踊る生徒達を窓から見下ろす形で、料理を食べる。
「これでようやく文化祭も終わりか…。それにしても、あの時の魔獣は一体…」
『あれは例の悪魔の仕業かもしれぬな…』
楽しげな声が響く中、私とセパルの間には緊張が走った。しかし、せっかくの楽しい行事で湿っぽくなるのも嫌なので、気分を変えることにする。明日、冷静になってまた考えよう。どうせ疲れた頭であれこれ考えても上手くまとまらないだろうし。
私は、机の上にコトリと小さなオルゴールを置く。外から聞こえる楽しげな声や音楽、それらの音をオルゴールは記憶し、カラカラとネジを回し始める。
私の脈絡のない行動に、セパルが問いかける。
『何じゃ、その箱?』
「とにかく、今は魔獣もいないのだから、楽しい思い出でしょう?せっかくだから、ここに記憶として残しておこうと思って」
久々の魔法道具は、思い出のオルゴール。記録したい瞬間の音を、このオルゴールに残すことで後からも良い思い出を振り返ることができる。取り込むのは音だけだが、実際はその日あったことを、魔力を元に脳裏で映像としても鑑賞できる優れものなのだ。もし年老いて視力を失っても、これなら思い出を十分に堪能できるというわけだ。
『そなた、若いくせにやけに老後などと気がつくのう…』
「前世の突然死から学んだ教訓の成果です。…人生、何が起こるか分かりませんからね」
結局、微妙な気持ちになったクリスティーヌだった。
ちなみに、クラスの出し物で優勝をもぎ取ったのはアスター兄様のクラスだった。何でも執事喫茶で荒稼ぎしていたらしい。私達のクラスはというと、その次の2位だった。1年生ながら健闘した方だろう。
というわけで、結果発表も終え、皆はダンスのお相手を誘うのに必死な中、私はというとダレン王子と向かい合っていた。開けた外の敷地で流れてくるワルツに身を任せて踊る。
仮にも婚約者、こういう時はまず最初に踊るのが暗黙の了解なのよ。ダンスのステップを踏みながら、私達は会話を続けていた。
「劇、お疲れ様だった。あれなら1位でもおかしくないと思ったが…」
「まぁ、ありがとうございます。また来年リベンジといったところでしょうか」
お礼を言って微笑むと、ダレンは目線を逸らしながら何か呟く。
「そ、それにいつもよりも凛としていて…その、きれ…」
「よ~!仲良くやってるか?お二人さん!」
可哀想にダレンの言葉はフレッドの言葉に掻き消された。フレッド…。ダレンの友人なのよね?時々、彼の言動は酷いと思うのは私だけじゃないはず。
「ささ、今夜は無礼講!色んな奴と踊りまくれる機会だぞ。出し物の特典にはダンス申し込みの優待権なんてもんがあったけど、俺らには関係ないからな~」
そう、あの優待権は主に上流階級の貴族以外を対象としているのだ。公爵令嬢や王子などの身分の高い者は、別に遠慮せず誰にでもダンスを申し込める。
「そうだな、色々な縁を結ぶのも必要だろう」
「そうそう。よし、んじゃ手始めにクリスティーヌ、俺と一曲どうだ?」
色々な縁、どこいった?いつも見知った仲なんだけど。とはいえ、断るのも何なので手っ取り早く差し出された手を取る。
「貴方はもう少し自重した方が宜しいのではなくて?未だに色々な女の子と仲良くしていると聞いているけれど」
「お、嫉妬か?そうゆうのはダレンに向けてやって。あいつ、泣いて喜ぶぞ~」
また適当なこと言って話を逸らされた。フレッドと話しているといつもこうだ。巧妙に話をすり替えられるから、私は彼と話すのは苦手だ。
そもそも、嫉妬ではないし、王子もそれくらいで泣いて喜ぶわけがないだろう。私達は家柄などで親に決められた形ばかりの婚約者なのだ。王子もきっと私のような愛嬌のない女より、いつも笑顔の明るい子が良かっただろうに。
王子も運が悪いと、それらをまとめて結論付けると、フレッドは大げさに驚いてみせた。
「おい、嘘だろ…。あんなに分かりやすいのに、何で全く気づいてないんだ…」
「はい?」
一曲踊り終わった後、フレッドは「俺、王子慰めてくる」と意味の分からないことを言い、足早に去っていった。
取り敢えず、二人と踊ったので一旦ご飯を取りに校舎内へ入る。飲み物で喉を潤してから、準備されていたご馳走にありつく。
フレッドは沢山踊ろうぜ!と言っていたが、私にそのつもりはない。むしろ、一人早々に退散していたシエルを恨みがましく思ったくらいだ。
文化祭で行われていたミスコンの結果発表も、この後夜祭で行われていた。とはいえ、それに興味もないので、人々の関心が逸れている間に移動する。
料理を盛り付けたお皿を片手に、私は校舎内の適当な教室に入った。外で楽しげに踊る生徒達を窓から見下ろす形で、料理を食べる。
「これでようやく文化祭も終わりか…。それにしても、あの時の魔獣は一体…」
『あれは例の悪魔の仕業かもしれぬな…』
楽しげな声が響く中、私とセパルの間には緊張が走った。しかし、せっかくの楽しい行事で湿っぽくなるのも嫌なので、気分を変えることにする。明日、冷静になってまた考えよう。どうせ疲れた頭であれこれ考えても上手くまとまらないだろうし。
私は、机の上にコトリと小さなオルゴールを置く。外から聞こえる楽しげな声や音楽、それらの音をオルゴールは記憶し、カラカラとネジを回し始める。
私の脈絡のない行動に、セパルが問いかける。
『何じゃ、その箱?』
「とにかく、今は魔獣もいないのだから、楽しい思い出でしょう?せっかくだから、ここに記憶として残しておこうと思って」
久々の魔法道具は、思い出のオルゴール。記録したい瞬間の音を、このオルゴールに残すことで後からも良い思い出を振り返ることができる。取り込むのは音だけだが、実際はその日あったことを、魔力を元に脳裏で映像としても鑑賞できる優れものなのだ。もし年老いて視力を失っても、これなら思い出を十分に堪能できるというわけだ。
『そなた、若いくせにやけに老後などと気がつくのう…』
「前世の突然死から学んだ教訓の成果です。…人生、何が起こるか分かりませんからね」
結局、微妙な気持ちになったクリスティーヌだった。
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