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8.文化祭
秘密の共有
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クリスティーヌが目を覚ますと、こちらを上から覗き込むイケメンがいた。いつも安定の美少年、シエルことリュドシエルである。
ここは…?私は今まで何を…?というか、何故シエルが目の前にいるのかも含めて、現状がさっぱり理解できない。
「し、える…?」
ぼんやりしたまま、色々な説明を求めて彼を見上げる。すると、彼は私の目元を手で覆って視界を塞いできた。一体何をするのか。新たないじめか。
「ッ、今のは反則…そのアングル凶器だろ」
何と、よく分からないが貶されている?私の何がどう凶器だと言うのだ。確かに魔法力には自信あるけど。悪魔にもばっちり憑かれてるけどさ。……あれ、確かに私って存在が凶器的か…?
「……ティーヌ?おい、聞いてんのか?もう起きて大丈夫なのか?」
起きる…そうだ、私は何で寝てたんだろう。最後に覚えているものは…あぁ劇をやっていたんだ。そこで奮闘してパタリだな。それ以降全く記憶がないけれども、劇は大丈夫だっただろうか?
シエルが劇を見ていたかはさておき、その事を尋ねると彼は丁寧に説明してくれた。私が意識を失った後、セパルが私の代わりに憑依して何とかその場を乗り切ったこと、予定外の魔物が暴れた被害もその場にいた教師陣がフォローしてくれたそうだ。
そこまで聞いて、微睡みの途中だった私の頭は急に覚醒した。すごく丁寧に自然に説明してくれたが、ちょっと待て。今、シエルの口からセパルの説明出なかった?いやいやいや、聞き間違いかなそうだな聞き間違いか!
「あー、そうそう。お前にくっ付いてる悪魔のことなら口外しねぇから心配すんな」
くっ付いてる…。おめぇの背中に何か虫が付いてるぜ?みたいなノリで言われた…。じゃなくて、セパルの存在も悪魔だってこともばれてるじゃないの!
依然目元を塞がれたまま、横になっている私はガバッと起き上がる。その際に今までシエルに膝枕されていたことに気づき、一瞬顔を赤らめる。
「…!!ひ、膝枕じゃなくても良かったんじゃないの?あ、いえ、そうじゃないわね。迷惑をかけたみたいでごめんなさい。それよりもセパルのこと…!」
赤らめた頬は一気に青ざめる。自分でも何を言いたいのかちょっと分からない。混乱していることだけは分かる。
「落ち着け、様子がおかしいと思って声掛けたら、ティーヌに憑依してる状態のセパルだったっつーだけだ」
「逆にシエルは何でそんなに冷静なのか私には理解できないわ。それに、悪魔憑きだって恐れないのね」
精霊ならば、人間に好意的かつ協力的ということで人々から歓迎されるが、悪魔となると話は別だ。悪魔は人間から大切な何かを奪うことで彼らの願いを叶える。凶悪な存在として、力を持たない者からは特に恐れられているのだ。高位悪魔を召喚した者は尊敬と共に恐れの対象ともなる。
だというのに、シエルは「うるさいのに憑かれたなァ~」と気軽にさっくりセパルの悪口を言っている。間違いない、大物だ彼は。まぁ、私もうるさいと思う時があるから否定はしない。
特に驚きも見せず、忌避することもないシエルのいつも通りの態度に、どことなく張り詰めていた気が抜けた。
「まァ、ともかく俺は秘密をベラベラ喋ったりしねぇから。こうして知ったからには、ヤバイ時がありゃ頼ってくれていい」
そうして、彼は最初に出会った時のように、お姫様に忠誠を誓う騎士の真似事をしてみせた。彼は私の手の甲にそっとキスを落として、悪戯っぽくニヤリと笑った。その行動に、私も苦笑して声を出して笑った。
気づけば、秘密がばれたにも拘らず、私達は穏やかな雰囲気で笑い合っていた。シエルなら秘密をばらすことはないと信頼しているからこその結果だ。
かつて、食堂での騒動もありシエルとは距離を置いた方がいいのかと考えたこともあった。しかし、彼は私にとっての初めての友人でもあり、今や秘密の共有者となった。あの時宣言したように、シエルだろうが私自身であろうが、問題を引き起こしたのなら、それを全て乗り越えれればいいだけの話だ。
妙に爽快な気分で私は空を見上げた。
居心地の良いこの一時に私達はしばらく羽休めすることにし、他愛のないことを話す。
その後、シエルは改めて劇を見に来ると言い、私も無断で抜けてきたので慌ててクラスの元へ戻っていった。
足はシエルが応急処置を施してくれたものに、保健室でも治療してもらったので大分楽になった。クラスメイト達は急にいなくなった私が帰ってきたのを見て、号泣していた。その勢いにびくつきながらも謝る。
足の状態を心配してくれたクラスメイトの好意により、私の出番はなるべく座っていられるように変更された。そこで、急遽用意された豪華な椅子に偉そうに足を組んで座っていたら、やたらカメラのシャッター音がうるさかった。さらに、演出の変化を喜ぶ者は舞台裏にもいた。
「イイ…!クリスティーヌ様の麗しさが倍増されている!!くそ、あの椅子になりてぇ」
舞台裏でカザルスがそう口走り、その場がいつかのように、再びざわついていたことはクリスティーヌの知らない一幕であった。
ここは…?私は今まで何を…?というか、何故シエルが目の前にいるのかも含めて、現状がさっぱり理解できない。
「し、える…?」
ぼんやりしたまま、色々な説明を求めて彼を見上げる。すると、彼は私の目元を手で覆って視界を塞いできた。一体何をするのか。新たないじめか。
「ッ、今のは反則…そのアングル凶器だろ」
何と、よく分からないが貶されている?私の何がどう凶器だと言うのだ。確かに魔法力には自信あるけど。悪魔にもばっちり憑かれてるけどさ。……あれ、確かに私って存在が凶器的か…?
「……ティーヌ?おい、聞いてんのか?もう起きて大丈夫なのか?」
起きる…そうだ、私は何で寝てたんだろう。最後に覚えているものは…あぁ劇をやっていたんだ。そこで奮闘してパタリだな。それ以降全く記憶がないけれども、劇は大丈夫だっただろうか?
シエルが劇を見ていたかはさておき、その事を尋ねると彼は丁寧に説明してくれた。私が意識を失った後、セパルが私の代わりに憑依して何とかその場を乗り切ったこと、予定外の魔物が暴れた被害もその場にいた教師陣がフォローしてくれたそうだ。
そこまで聞いて、微睡みの途中だった私の頭は急に覚醒した。すごく丁寧に自然に説明してくれたが、ちょっと待て。今、シエルの口からセパルの説明出なかった?いやいやいや、聞き間違いかなそうだな聞き間違いか!
「あー、そうそう。お前にくっ付いてる悪魔のことなら口外しねぇから心配すんな」
くっ付いてる…。おめぇの背中に何か虫が付いてるぜ?みたいなノリで言われた…。じゃなくて、セパルの存在も悪魔だってこともばれてるじゃないの!
依然目元を塞がれたまま、横になっている私はガバッと起き上がる。その際に今までシエルに膝枕されていたことに気づき、一瞬顔を赤らめる。
「…!!ひ、膝枕じゃなくても良かったんじゃないの?あ、いえ、そうじゃないわね。迷惑をかけたみたいでごめんなさい。それよりもセパルのこと…!」
赤らめた頬は一気に青ざめる。自分でも何を言いたいのかちょっと分からない。混乱していることだけは分かる。
「落ち着け、様子がおかしいと思って声掛けたら、ティーヌに憑依してる状態のセパルだったっつーだけだ」
「逆にシエルは何でそんなに冷静なのか私には理解できないわ。それに、悪魔憑きだって恐れないのね」
精霊ならば、人間に好意的かつ協力的ということで人々から歓迎されるが、悪魔となると話は別だ。悪魔は人間から大切な何かを奪うことで彼らの願いを叶える。凶悪な存在として、力を持たない者からは特に恐れられているのだ。高位悪魔を召喚した者は尊敬と共に恐れの対象ともなる。
だというのに、シエルは「うるさいのに憑かれたなァ~」と気軽にさっくりセパルの悪口を言っている。間違いない、大物だ彼は。まぁ、私もうるさいと思う時があるから否定はしない。
特に驚きも見せず、忌避することもないシエルのいつも通りの態度に、どことなく張り詰めていた気が抜けた。
「まァ、ともかく俺は秘密をベラベラ喋ったりしねぇから。こうして知ったからには、ヤバイ時がありゃ頼ってくれていい」
そうして、彼は最初に出会った時のように、お姫様に忠誠を誓う騎士の真似事をしてみせた。彼は私の手の甲にそっとキスを落として、悪戯っぽくニヤリと笑った。その行動に、私も苦笑して声を出して笑った。
気づけば、秘密がばれたにも拘らず、私達は穏やかな雰囲気で笑い合っていた。シエルなら秘密をばらすことはないと信頼しているからこその結果だ。
かつて、食堂での騒動もありシエルとは距離を置いた方がいいのかと考えたこともあった。しかし、彼は私にとっての初めての友人でもあり、今や秘密の共有者となった。あの時宣言したように、シエルだろうが私自身であろうが、問題を引き起こしたのなら、それを全て乗り越えれればいいだけの話だ。
妙に爽快な気分で私は空を見上げた。
居心地の良いこの一時に私達はしばらく羽休めすることにし、他愛のないことを話す。
その後、シエルは改めて劇を見に来ると言い、私も無断で抜けてきたので慌ててクラスの元へ戻っていった。
足はシエルが応急処置を施してくれたものに、保健室でも治療してもらったので大分楽になった。クラスメイト達は急にいなくなった私が帰ってきたのを見て、号泣していた。その勢いにびくつきながらも謝る。
足の状態を心配してくれたクラスメイトの好意により、私の出番はなるべく座っていられるように変更された。そこで、急遽用意された豪華な椅子に偉そうに足を組んで座っていたら、やたらカメラのシャッター音がうるさかった。さらに、演出の変化を喜ぶ者は舞台裏にもいた。
「イイ…!クリスティーヌ様の麗しさが倍増されている!!くそ、あの椅子になりてぇ」
舞台裏でカザルスがそう口走り、その場がいつかのように、再びざわついていたことはクリスティーヌの知らない一幕であった。
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