地雷持ち聖女のチート商談

コトイアオイ

文字の大きさ
1 / 9

社会の洗礼

しおりを挟む
 雨宮真澄、今年から新卒一年目。OLとしての私の輝かしい社会人生活が始まる。そう信じて疑わなかった半年前の私は馬鹿だ。高いコスメを買って、季節感溢れるネイルにマツエクをして、できる女になるのが夢だった。

それが実際はどうだろうか。

毎日残業、何より自分の希望の部署ではない所で日々働くのがきつい、しんどい。

営業部に行きたいとは一言も言っていない。面接の時にも、様々な部署を経験できるという説明を受けたのに、研修もそこそこに私は営業部に決められたのだった。一応、面談という名ばかりの時間は取ってもらったが、そこでの拒否権など無いに等しい。新卒の私は「はい」としか言えず、今に至る。

そして、さらに最近の私はもう一つ悩み事を抱えていた。それは、同期の津村鈴の存在だ。最初は住所も近く、趣味も合うことからよく遊んだりご飯に行ったりした。しかし、とある時に鈴の自分勝手さを思い知った私は、それ以来どうしても冷たい対応を取ってしまう。

私が誘った飲み会は来ないのに、他の同僚(男子)の誘いには乗る。

私の買ったゲームや漫画を借りたまま、ずっと返さない。

例えを挙げればキリがない。一度嫌な面を目の当たりにしてしまうと、もう止められなかった。私の中での彼女は「嫌な女」でしかなくなってしまったのだ。

ところが、そんなギクシャクしている私と鈴だが、今日も勤務後の帰りを共にしている。鈴も何となく私の反応に気づいているだろうに、お互い急に一人で帰ろうとは言いづらい。だからこそ他愛もない話をしながら、毎日一緒に帰り続けている。

「あのゲームもうした?私はステージコンプリートしたよ~」

へぇ、そう。だから何? 

そう思っていることは内に潜め、私はそれなりの答えを返す。

「流石、鈴やるね。私も土日に進めるわ」

話題を探すのも疲れて、私は地面に視線を落とした。十二月の凍えるような寒さで、辺りは暗闇に包まれている。街頭の灯りと月明かりによって少しばかり明るいが、大通りから外れればそこはすぐに深い闇に染まる。

駅から小道に逸れて、静まり返った住宅街には二つのヒールの音だけが響く。

早く別れたくて、私は早足で進む。目の前に見える交差点さえ渡れば、私はそのまま真っ直ぐ、鈴は左折してしばらく行くことになる。青く光る交差点の信号に救われた気持ちで、私は気持ちが楽になった。


「じゃ、また明日も頑張ろ…」


交差点を渡り切る寸前に、別れを告げようとする。しかし、信号の色が突然赤と黄色に点滅し始める。次第に二つの色が混ざり合い、目に痛いような不快な色になる。


「な、何これ!?」


この時ばかりは、仲の悪い私達も同じ言葉を発していた。困惑する私達をよそに、信号の色は激しく点滅を繰り返し、そちらに目を取られている間に、私達は道路に空いた大きな穴に吸い込まれて行った。

落ちていく中、私は死を覚悟した。

せめて、納得出来る仕事で成果を残してから死にたかった。

じわりと滲む視界にそっと蓋をして、私は夢の世界を想像することで現実逃避した。

もうこうなったら…生まれ変わったら、バリバリのキャリアウーマンになってる!そんで、美意識高い系の女性として、過去の自分を上書きしてやる!

終わりの見えない穴に吸い込まれつつ、私はようやく決意した。死ぬ間際にそんなこと考えても遅いという点は目をつぶって欲しい。

自分のことで手一杯だったので、隣で鈴が悲鳴を上げ続けているのも、気にならなかった。最後が鈴と一緒というのは気に食わないが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...