地雷持ち聖女のチート商談

コトイアオイ

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セレブ風呂

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 これからどうするか。どの道、魔女扱いされて捕まえられて逃げ出した私に行く宛などない。その旨を話すと、何とルティウスはファティマ商会で働かないかと提案してくれた。ルティウスの家はかなり有名な商家らしく、働き手はいつでもあって困らないレベルの規模だそうだ。また、商会で働く者には、社宅が与えられるらしく、私には有難いことしかなかった。早速、商会へ入る手続きするため、私は意気揚々と部屋を後にしようとして、ルティウスに捕まった。

「待って下さい。その格好で行けば面倒になりかねませんから、一度着替えてもらえますか。必要であれば、浴槽で一息ついてからでも構いませんので」 

「分かりました!お風呂頂いてから行きます!」

暖かいお風呂の誘惑に負けて、私は素直に従った。だって、公園の水じゃ全然休まらないからね。お風呂でここ数日の疲れを癒したいんだ。

ルティウスが使用人を呼び、メイドさんが数人着替えとタオルなどを持って、私を風呂場に案内してくれるそうだ。私は数日ぶりのお風呂にうきうきしながら後を付いて行った。

「彼女は本物の聖女だ。くれぐれも失礼のないように。ただし、聖女と言うと気分を害するそうだから、マスミ様とお呼びするんだよ」

ルティウスがこっそりメイドの内の一人に耳打ちしていることなど、まるで気づかなかった。

ーーー

暖かいお湯で一息ついて、強ばった身体をほぐす…。私はそう思っていた。いや、ただ、それだけを求めていたのに。

メイドさんは着替えを手伝おうとしてきて、断るのに苦労した。私は幼女か!

そして、ようやく風呂に…と思えば、風呂が大きい。学校にある一般的なプールよりも大きい。それはいいんだ、それは。問題はそのだだっ広いお湯に、これでもかという勢いで薔薇が浮かんでいる点だ。薔薇の匂いに息が詰まる。

大きい風呂は薔薇臭がキツかったので、横にある少し狭めのお風呂に移動する。すると、そこに入って暫くして、籠を持ったメイドさん達がやってくるではないか。何、お風呂でお酒どうぞ的な感じ?と思っていたら違った。

「マスミ様、お加減は如何でしょうか」

「だ、大丈夫です」

「マスミ様、香油のお好みなどはございますか?」

「オススメで結構でふ………です…」

ヘッドスパが終わり、濡れた髪に櫛を通され、椿油を塗りこまれる。腕を手に取られ、何事かとびくついていると、腕や足のマッサージが始まる。

まさにセレブのお風呂か、といったサービス旺盛さである。昔は憧れもあったが、やられてみて分かる。慣れないやつは味わうものでは無い。人に裸を見られるのも抵抗があるのに、やけに丁寧に接されると、何だか困る。どういう態度で私はいればいいのか?

結論、リラックスとは程遠いバスタイムとなった。全身はいい香りで、えらく艶々していることだけが救いだろう。

これがカルチャーショック…。恐るべし。

私はよろよろとしながら、ルティウスの元へ再度案内された。
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