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ファティマ商会へ
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「見違えましたね」
私を見て、ルティウスが放った言葉がこれである。今の私は脱ジーパンして、ボルドーの品の良いワンピースに着替えている。
「ありがとうございます。ただ、褒めるなら、もっと素直に褒めて欲しいです…」
ほら、あるじゃない。女の子への褒め言葉と言えば、「可愛い」・「綺麗」が鉄則なはず。美女は飽き飽きしているかもしれないけど、私はあまり言われたことないから、いつでもウェルカムなんですよ。
そんな受け答えをしつつ、私達は馬車に乗り込む。この邸宅はファティマ家の別荘で、本家を含め、商会の本拠地は国境沿いの港町にあるらしい。その立地は、元々、ファティマ家当主の出身地という理由もあるが、王都とは完全に独立している機関であることの主張でもある。
ここが割りと王都のお膝元な大都市のようなので、移動するとなると商会のある港町に到着するのは数日後になる。馬車の寝心地はどうか心配だが、それだけの長距離なら休憩があるにしても疲れて寝ているだろう。
四人乗りの馬車に私とルティウスと、ルティウスの叔母エンデが乗り込む。叔母さんはルティウスの別荘の管理人だが、未婚の男女を馬車で二人乗りは外聞が悪いとして、ついてくることになった。私と叔母さんが横に、ルティウスが向かいに座る形で席に着く。
叔母さんに移動中にこの世界においての女性像について聞くと、やはり想像した通りだった。
女はスカート、髪は長ければ長いほど魅力的。
男はズボン、力のある(物理的、権力的)者ほど良いとされるのだとか。
しかし、商人である叔母さんはその風潮には反対らしく、パンツスタイルでビシッと決めている。髪はシニヨンにしているが、この世界で堂々と着こなしているのは叔母さんくらいかもしれない。ジーパンを愛用していた私は、すぐに叔母さんと打ち解けた。
途中、ルティウスを置いてけぼりにして盛り上がったくらいである。
「あ、そうだわ。マスミ、貴方は聖…ごほん、聖人で、特例貴族の煌爵位にあたるから、私達に敬語なんて使わなくていいのよ?」
ルティウスから正しく情報伝達がなされていたらしい。叔母さんも慌てて言い直す。
「煌爵?」
「えぇ、聖なる力を持つものに与えられる特別な爵位よ。国がその力を手放したくないっていうのが本音でしょうけど。そもそも、そういった人は何百年に一人現れるかどうかの存在だし」
「へぇ…?」
「煌爵の地位は、当人とその家族一親等に限り有効っていう特例地位なの」
両親と子供までか。でも、私の両親こっちにいないからな。可能性としては、配偶者と子供に恩恵があるといったところかな。
「はっ…!つまり、ルティウスに命令することもできると……あ、いえ、やっぱり何でもないデス」
瞬間、空気が冷えた気がしたので大人しくしておく。ルティウスの視線が私に突き刺さっている。イケメンの真顔、怖い。
「あっはははは!ルティウスに命令しようとするなんて、豪胆ね~!」
叔母さんが大笑いしているお陰で、何とか気が紛れた。彼と二人きりだったら、私はストレスで胃を痛めていただろう。叔母さんに感謝。
こうして、仲良く話をしていればあっという間に中継地の宿屋に到着した。そこで一泊してから翌日の朝、また馬車を走らせて次の中継地まで行く、ということを繰り返し、そろそろ私のお尻も痛くなってきた。暫くの間、私は座る位置をモゾモゾ変えて何とか凌いだ。お尻の悲鳴が上がりそうな頃合に、ようやく目的地である港町が見えてきた。
港町の入口には大勢の人が立ち並び、馬車が止まるのを見た途端、人々は一斉に駆け寄って来る。何事!と思ったのは私だけだった。ルティウスはいつも通り優雅な姿勢を崩さない。叔母さんも笑顔を浮かべている。
「お帰りなさいませ、ルティウス様!エンデ様!」
「お客人の方もようこそ、我らがファティマの本城、港町ベルンへ!」
私を見て、ルティウスが放った言葉がこれである。今の私は脱ジーパンして、ボルドーの品の良いワンピースに着替えている。
「ありがとうございます。ただ、褒めるなら、もっと素直に褒めて欲しいです…」
ほら、あるじゃない。女の子への褒め言葉と言えば、「可愛い」・「綺麗」が鉄則なはず。美女は飽き飽きしているかもしれないけど、私はあまり言われたことないから、いつでもウェルカムなんですよ。
そんな受け答えをしつつ、私達は馬車に乗り込む。この邸宅はファティマ家の別荘で、本家を含め、商会の本拠地は国境沿いの港町にあるらしい。その立地は、元々、ファティマ家当主の出身地という理由もあるが、王都とは完全に独立している機関であることの主張でもある。
ここが割りと王都のお膝元な大都市のようなので、移動するとなると商会のある港町に到着するのは数日後になる。馬車の寝心地はどうか心配だが、それだけの長距離なら休憩があるにしても疲れて寝ているだろう。
四人乗りの馬車に私とルティウスと、ルティウスの叔母エンデが乗り込む。叔母さんはルティウスの別荘の管理人だが、未婚の男女を馬車で二人乗りは外聞が悪いとして、ついてくることになった。私と叔母さんが横に、ルティウスが向かいに座る形で席に着く。
叔母さんに移動中にこの世界においての女性像について聞くと、やはり想像した通りだった。
女はスカート、髪は長ければ長いほど魅力的。
男はズボン、力のある(物理的、権力的)者ほど良いとされるのだとか。
しかし、商人である叔母さんはその風潮には反対らしく、パンツスタイルでビシッと決めている。髪はシニヨンにしているが、この世界で堂々と着こなしているのは叔母さんくらいかもしれない。ジーパンを愛用していた私は、すぐに叔母さんと打ち解けた。
途中、ルティウスを置いてけぼりにして盛り上がったくらいである。
「あ、そうだわ。マスミ、貴方は聖…ごほん、聖人で、特例貴族の煌爵位にあたるから、私達に敬語なんて使わなくていいのよ?」
ルティウスから正しく情報伝達がなされていたらしい。叔母さんも慌てて言い直す。
「煌爵?」
「えぇ、聖なる力を持つものに与えられる特別な爵位よ。国がその力を手放したくないっていうのが本音でしょうけど。そもそも、そういった人は何百年に一人現れるかどうかの存在だし」
「へぇ…?」
「煌爵の地位は、当人とその家族一親等に限り有効っていう特例地位なの」
両親と子供までか。でも、私の両親こっちにいないからな。可能性としては、配偶者と子供に恩恵があるといったところかな。
「はっ…!つまり、ルティウスに命令することもできると……あ、いえ、やっぱり何でもないデス」
瞬間、空気が冷えた気がしたので大人しくしておく。ルティウスの視線が私に突き刺さっている。イケメンの真顔、怖い。
「あっはははは!ルティウスに命令しようとするなんて、豪胆ね~!」
叔母さんが大笑いしているお陰で、何とか気が紛れた。彼と二人きりだったら、私はストレスで胃を痛めていただろう。叔母さんに感謝。
こうして、仲良く話をしていればあっという間に中継地の宿屋に到着した。そこで一泊してから翌日の朝、また馬車を走らせて次の中継地まで行く、ということを繰り返し、そろそろ私のお尻も痛くなってきた。暫くの間、私は座る位置をモゾモゾ変えて何とか凌いだ。お尻の悲鳴が上がりそうな頃合に、ようやく目的地である港町が見えてきた。
港町の入口には大勢の人が立ち並び、馬車が止まるのを見た途端、人々は一斉に駆け寄って来る。何事!と思ったのは私だけだった。ルティウスはいつも通り優雅な姿勢を崩さない。叔母さんも笑顔を浮かべている。
「お帰りなさいませ、ルティウス様!エンデ様!」
「お客人の方もようこそ、我らがファティマの本城、港町ベルンへ!」
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