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土下座で見せる覚悟
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「へぇ、貴方聖女なんですか!」
「聖女は止めてもらえます?」
ビキリと青筋を立てた私に、出迎えの商会のメンバーらが一瞬びくつく。しかしすぐに、彼らは喜びの声を上げた。
「何という目力!メンチの切り方に才能を感じるな!」
「将来有望ね~ジョブチェンジみたいな感じで商人はどう?あは、冗談よ冗談!」
私が商会に入るつもりで、ルティウスと共に訪れたとは予想もしていない様子だ。チラリとルティウスを見ると、頷き返された。うん、私達アイコンタクトが出来るようになった(多分)。ルティウスから私のことを紹介してくれるみたいだ。
「皆、久しいね。今回僕がここに戻ってきたのは、マスミ様を商会に勧誘したからだ。これは既にご本人にも確認を取ったことだけれど、煌爵等の身分に関係なく、彼女も基本から取り組んでもらう」
馬車の中でさらっと確認されたあれかな。販売員から始める的な。まずは現場から!というのは、どこの企業もそうなので別に驚きはしない。
気楽に聞いていた私に対して、商会の人々は戸惑いを隠せないようだった。
「いくら煌爵と言っても、貴族様がいきなり商売なんて出来るのか?」
舐めるな。元々私はド庶民かつ営業部だぞ。
ムッとした私は思わず口を挟んだ。
「大丈夫です!私にはお堅いプライドなんてありませんから。お怒りのお客様には、額を地面にこすりつけて土下座してみせますよ」
土下座?何それ?な空気が漂う。しまった、こちらでは土下座なんて文化はそもそも存在しないのか?ならば、とくと見るがいい。これが日本の土下座だ!
「知らぬと言うのなら、今、ここで!証明してみせます!」
ざっと地面に両手をつけてしゃがみこむ私に、周囲は「な、何だこの人大丈夫か」とヒソヒソ心配そうに見守る。別に腹痛とかじゃないんで大丈夫なんだけどね。土下座の前準備です。
地面の上もお構いなく正座し、一度姿勢を伸ばす。そして、一息に地面に頭を伏せる。勿論、お決まりの言葉も付けておく。
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!」
地につけた頭を起こすと、そこには呆然とした人々がいた。カルチャーショックでも受けているのかもしれない。あのルティウスでさえ驚いた顔をしている。何となく達成感を感じていると、そのルティウスがつかつか近寄ってきて私の腕を掴んだ。それから、小声で「何をしているんですか…」と非難してきた。呆れ半分、驚き半分といった声音だった。ルティウスに支えられ、私は立ち上がる。
「……土下座はよく分からないが、ちゃんと覚悟があるみたいで安心したよ。分からないことがあれば、気軽に聞いてくれ」
一人が言い出したのを皮切りに、次々と賛同の声が広がっていく。
こうして、私はファティマ商会の一員として認められた。後から聞いたことだが、もしあの場で人々の賛同が得られなかったら、ルティウスは私を商会に入れないという選択肢も考えていたらしい。本当に一歩間違えば危ないところだった。
「聖女は止めてもらえます?」
ビキリと青筋を立てた私に、出迎えの商会のメンバーらが一瞬びくつく。しかしすぐに、彼らは喜びの声を上げた。
「何という目力!メンチの切り方に才能を感じるな!」
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ムッとした私は思わず口を挟んだ。
「大丈夫です!私にはお堅いプライドなんてありませんから。お怒りのお客様には、額を地面にこすりつけて土下座してみせますよ」
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「知らぬと言うのなら、今、ここで!証明してみせます!」
ざっと地面に両手をつけてしゃがみこむ私に、周囲は「な、何だこの人大丈夫か」とヒソヒソ心配そうに見守る。別に腹痛とかじゃないんで大丈夫なんだけどね。土下座の前準備です。
地面の上もお構いなく正座し、一度姿勢を伸ばす。そして、一息に地面に頭を伏せる。勿論、お決まりの言葉も付けておく。
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!」
地につけた頭を起こすと、そこには呆然とした人々がいた。カルチャーショックでも受けているのかもしれない。あのルティウスでさえ驚いた顔をしている。何となく達成感を感じていると、そのルティウスがつかつか近寄ってきて私の腕を掴んだ。それから、小声で「何をしているんですか…」と非難してきた。呆れ半分、驚き半分といった声音だった。ルティウスに支えられ、私は立ち上がる。
「……土下座はよく分からないが、ちゃんと覚悟があるみたいで安心したよ。分からないことがあれば、気軽に聞いてくれ」
一人が言い出したのを皮切りに、次々と賛同の声が広がっていく。
こうして、私はファティマ商会の一員として認められた。後から聞いたことだが、もしあの場で人々の賛同が得られなかったら、ルティウスは私を商会に入れないという選択肢も考えていたらしい。本当に一歩間違えば危ないところだった。
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