男装聖女と暴走天使

コトイアオイ

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3.東の村

解決

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 私が再び目を覚ましたのは、あれから数十分後のことだった。少し無理をしたらしく、身体が重い。しかし、しばらくすればこうした力の使い方にも慣れるだろう。今は、生まれたての小鹿のように、足がガックガクのブルッブルだが。


そのせいか、先程までは感心していた少年は、一気に冷めた表情だ。あんなにかっこつけたのに、最後がこれなので夢が砕かれたようだ。何か…ちょっと申し訳ないような悔しいような。



「…神様の下っ端、だいじょーぶか?おめぇ、弱いんなら無理すんなよな」


あああああああ!!同じくらいか、もしかすると年下かもしれない少年に哀れまれた…。


「それに、無理なら神様に任せりゃいいじゃねぇか。それとも、無理矢理やらされたのか?」


いや、違う違う違う。何なのだ。老婆といい、少年といい、想像力逞しすぎる。


いきなり話の矛先を向けられ、リヒトも驚く。良い神様のはずが一転、過重労働を強いた疑いをかけられてしまった。


「い、いえ、そういうわけではなく…」


「そうなんだな?可哀想に…お前下っ端っていうか下僕なんだな!だけど、そういうの愛のムチって言うらしいぜ、オヤジが言ってた」


何か、さらにランク下がってない?


 私が少年の勢いにどっと疲れていると、老婆が温かそうなミルクを持ってきてくれた。そう言えば、喉も渇いてきたところだ。ありがたくいただこう。


口元にカップを引き寄せ、熱さを和らげようと息をそっと吹きかける。ミルクは濃厚な味で疲れた私の全身にゆっくり熱をもたらしてくれた。


 私がミルクを飲んでいると、リヒトが何かを思い出したように口を開く。 



「確か、狼が原因でしたね?ですが、僕達はこの辺りで狼の姿や気配を全く感じませんでしたが…」



言われてみれば確かに。天使の力とかが影響していなければだけど。


リヒトの疑問に、老婆と少年はありえないと反発した。昼でも見かけるくらいだ、絶対近くに潜んでいると、少年は言い切る。


「…この村に来て何となく思ってたんですけど…ここ、何だか甘ったるい匂いがしませんか?」


関係があるかは分からないが、私が農家の自宅で過ごしていた時、イノシシなどの獣に特定の甘い匂いは危険だと聞いたことがある。何でも、彼らはその匂いを嫌い、その匂いがする家の者を敵として判断するらしい。


私がそれを話してみると、老婆が考え込むようにして顎に手を添える。


「あのお香が…?あれは旅商人に貰ったお守りなんだけどねぇ…。でも、そうさね、あれを村で使い始めてから狼がよく来るようになったような気もするよ」


「あんなくっせぇの、さっさと捨ててこようぜ、ばばぁ!あったって何のお守りにもならねぇしよ」


 その後、元気よく家を飛び出した少年がお香を壊し、動ける村人が総動員されて、それを村の地面に埋めることになった。


 その効果があったのか、3日経った今では、狼の姿はこの村から見えなくなった。


農家の知識がここで役に立つとは。あの頃は理解できないまま聞いていたが、覚えていて本当に良かった。これで、村人が獣の恐怖に悩まされることも減るはずだ。


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