男装聖女と暴走天使

コトイアオイ

文字の大きさ
13 / 32
4.南のゴーストタウン

南の墓場、セイユ

しおりを挟む
 クォーツから移動を続けた私達は今、帝国の南部に位置するセイユという街に来ていた。このセイユについて、以前護衛の一人に話を聞いたことがある。

 
「南のゴーストタウンとはセイユのことです」


彼は声を潜めてそう語った。ゴーストタウンと言う割りに街には人がいるそうだが、そこに暮らしているのは、戦争で大きな怪我を負った者らしい。彼らの中には、自身のままならない身体に絶望して、精神を病んだ者も多い。


夜に足を引きずりながら街を徘徊する住人を、周囲の者は「ゴースト」と呼んだ。そこから、この街は「ゴーストタウン」と称されるようになったのだ。その街は昼間の静けさと夜の不気味さから、「南の墓場」とも呼ばれているらしい。


 私達がここに辿り着いたのは昼で、村人の姿は見当たらない。


目の前に広がるのは、壊れかけた大きな神殿に、ボロボロの荷馬車、やせ細った犬…。


草木もところどころに見られるが、元々この辺りは日があまり当たらないようで、その成長は微々たるものである。途中で枯れているものも多々ある。


 そして極めつけは、街から漂う強い異臭だ。前回のクォーツでも甘い匂いがあったものの、それがまだ優しいものだったと知る。ここの匂いは、何かが腐った様な匂いだ。街の中では、生ゴミもそのまま捨てられていたから、その影響だろう。衛生的にもかなりひどい。これでは、健康な人でも病になりかねない。


 あまりの惨状に私は口を抑える。ここまでひどいものを見たのは初めてで、吐き気を必死に堪えた。白い塔にいては一生見られなかったであろう現実だ。私はこれを受け止めなければいけない。


リヒトもまた、街の様子に顔を歪めていた。彼の美しさとこの街の退廃ぶりが、ある意味真逆で変に目立つ。


しかし、それを指摘する人すらいない。


「…夜になると、ゴーストタウンの真骨頂発揮ということかしら…?ともかく、人に会わないと何も始まらないわね」


「取り敢えず、適当に家を訪ねてみようか?」


 こうして、私はリヒトと一緒に手当たり次第、家を尋ねて回ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

処理中です...