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4.南のゴーストタウン
ゴーストにもなれない男
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家を訪ねて数軒目にして、ようやく人と出会えた。しかし、その人は簡易ベッドの上でブツブツと何かを唱えていて、私達になかなか気が付いてくれない。
その人がどういう状態かよく分からないから乱暴なことはしたくないけど、どうしたものか。
そんな私の迷いを全く気にせず、リヒトがその人にずんずん近づく。
どうするつもりかと、彼の行動を見守っていた私が馬鹿だった。
何と、リヒトはその人の頬を思いっきりビンタした。しかも1度ではない。往復ビンタである。何度もはたかれた頬はうっすらと、手の跡が赤く浮かび上がっていた。とても、痛そうだ…。
「…じゃなくて!ちょっと、リヒト!いきなり何してるのよ、病人かもしれないのに」
私がリヒトに向かってそう言うと、リヒトは純粋な顔で私を見つめてきた。
「何?シェリをこの男に触らせるわけにはいかないから…。それにほら、彼、起きたよ」
今のビンタの衝撃で男性は正気を取り戻したようだ。自分の身に何が起きたか理解できないようで、痛む頬を押さえて首をかしげている。
結果的には良かったけど、リヒトの言動はたまに怖い。しかも、自分のやったことに何の疑問も抱いていないのだ。これが、天使と人間の考え方の違いなのだろうか。
「うっ、頬が痛い…。寝ている時に打ったのか…?」
男性がゆっくりと身体を起こした。ごめんなさい、それは天使の仕業です。決して貴方の寝相のせいではない。
心の中で、リヒトの代わりに男性へ謝罪する。
起き上がった男性は、短髪の髪をかきながら、欠伸をする。彼は肌も日焼けしていて健康そうに見えた。しかし、その足は動くことがない。
「…あの、勝手にお邪魔してすみません。私達、旅しながら各地を回っている薬師の者です」
私が彼の様子を窺いながらそう告げると、男性はちらりとこちらに目を向けて驚いた。私達が家にいることを今知ったようだ。
「…薬師?この街に?」
「はい。ですが、この街の現状を詳しくは知らず…、とにかく誰かに話を聞かせてもらいたくて」
シェリマの頼みを、男性は興味なさげに聞く。かつて、この街にも薬師は何度か来たが、大抵の者は耐えられずに1日で去っていった。それが今度の薬師は小さな少年とやたら綺麗な青年だ。どうせすぐ悲鳴を上げて帰るだろうと彼は思ったのである。
「お前が使えるか、まずは俺で試してみよう。話はそれからだ」
本当に実力があるかどうか、暗に自分の薬師としての力を疑われたシェリマは望むところだと言い返す。まぁ、薬師というか聖女の力なんだけど。
「で?私は何をすればいいんですか」
すると、男性は自らの足を指差した。彼の足は病の後遺症で麻痺してしまったという。その足を少しでもいいから動かしてみせろと言うのだ。
「俺はここでゴーストにもなれないからな」
男性は皮肉を言い、悲しげに笑った。これは、男性としてはどうせできないだろうと思って言ってみたことだった。しかし、シェリマは真剣な顔で鞄を漁り、中からあるものを取り出した。
真っ白なシートに何かの薬を塗り、それを男性の足に当てる。すると、そこからほんのりとした暖かさが広がっていく。
「…?変な感覚だ…」
「はい、終わりましたよ。軽く足を曲げてみてください」
男性は取り敢えず、言われるがままに足を曲げてみる。そして、その時の自分の足の感覚に目を見開いた。
あれほどリハビリをしてもピクリともしなかった自分の足が、僅かにだが反応していたのだ。
「…動いた…?」
「今はこれくらいですが、あと数日間薬を塗っていて下さいね。そうすれば必ず良くなります」
実際は動かなくなった足の神経に刺激を与えたので、もう少しすれば歩けるようになるだろう。問題は長い事歩いていないことによって、足の筋肉に急に負荷がかかることが心配だ。どちらかと言えば、その後のケアの方が大事になる。
男性は未だ信じられないのか、自分の足を曲げたり伸ばしたりを繰り返している。
それから何度か同じことを繰り返した男性は、シェリマを認めたようで、この街について語り始めた。
その人がどういう状態かよく分からないから乱暴なことはしたくないけど、どうしたものか。
そんな私の迷いを全く気にせず、リヒトがその人にずんずん近づく。
どうするつもりかと、彼の行動を見守っていた私が馬鹿だった。
何と、リヒトはその人の頬を思いっきりビンタした。しかも1度ではない。往復ビンタである。何度もはたかれた頬はうっすらと、手の跡が赤く浮かび上がっていた。とても、痛そうだ…。
「…じゃなくて!ちょっと、リヒト!いきなり何してるのよ、病人かもしれないのに」
私がリヒトに向かってそう言うと、リヒトは純粋な顔で私を見つめてきた。
「何?シェリをこの男に触らせるわけにはいかないから…。それにほら、彼、起きたよ」
今のビンタの衝撃で男性は正気を取り戻したようだ。自分の身に何が起きたか理解できないようで、痛む頬を押さえて首をかしげている。
結果的には良かったけど、リヒトの言動はたまに怖い。しかも、自分のやったことに何の疑問も抱いていないのだ。これが、天使と人間の考え方の違いなのだろうか。
「うっ、頬が痛い…。寝ている時に打ったのか…?」
男性がゆっくりと身体を起こした。ごめんなさい、それは天使の仕業です。決して貴方の寝相のせいではない。
心の中で、リヒトの代わりに男性へ謝罪する。
起き上がった男性は、短髪の髪をかきながら、欠伸をする。彼は肌も日焼けしていて健康そうに見えた。しかし、その足は動くことがない。
「…あの、勝手にお邪魔してすみません。私達、旅しながら各地を回っている薬師の者です」
私が彼の様子を窺いながらそう告げると、男性はちらりとこちらに目を向けて驚いた。私達が家にいることを今知ったようだ。
「…薬師?この街に?」
「はい。ですが、この街の現状を詳しくは知らず…、とにかく誰かに話を聞かせてもらいたくて」
シェリマの頼みを、男性は興味なさげに聞く。かつて、この街にも薬師は何度か来たが、大抵の者は耐えられずに1日で去っていった。それが今度の薬師は小さな少年とやたら綺麗な青年だ。どうせすぐ悲鳴を上げて帰るだろうと彼は思ったのである。
「お前が使えるか、まずは俺で試してみよう。話はそれからだ」
本当に実力があるかどうか、暗に自分の薬師としての力を疑われたシェリマは望むところだと言い返す。まぁ、薬師というか聖女の力なんだけど。
「で?私は何をすればいいんですか」
すると、男性は自らの足を指差した。彼の足は病の後遺症で麻痺してしまったという。その足を少しでもいいから動かしてみせろと言うのだ。
「俺はここでゴーストにもなれないからな」
男性は皮肉を言い、悲しげに笑った。これは、男性としてはどうせできないだろうと思って言ってみたことだった。しかし、シェリマは真剣な顔で鞄を漁り、中からあるものを取り出した。
真っ白なシートに何かの薬を塗り、それを男性の足に当てる。すると、そこからほんのりとした暖かさが広がっていく。
「…?変な感覚だ…」
「はい、終わりましたよ。軽く足を曲げてみてください」
男性は取り敢えず、言われるがままに足を曲げてみる。そして、その時の自分の足の感覚に目を見開いた。
あれほどリハビリをしてもピクリともしなかった自分の足が、僅かにだが反応していたのだ。
「…動いた…?」
「今はこれくらいですが、あと数日間薬を塗っていて下さいね。そうすれば必ず良くなります」
実際は動かなくなった足の神経に刺激を与えたので、もう少しすれば歩けるようになるだろう。問題は長い事歩いていないことによって、足の筋肉に急に負荷がかかることが心配だ。どちらかと言えば、その後のケアの方が大事になる。
男性は未だ信じられないのか、自分の足を曲げたり伸ばしたりを繰り返している。
それから何度か同じことを繰り返した男性は、シェリマを認めたようで、この街について語り始めた。
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