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4.南のゴーストタウン
街の事情
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「まず初めにだが、俺の名はオーウェンと言う。先程は試すようなことをしてすまなかったな」
「いえ、貴方の対応は当然でしょうし、気にしないでください」
「今度シェリの腕を疑ったら…地獄に叩き落としてやるけどね」
後ろでリヒトが天使らしからぬことを言っている。私のことを信頼してくれているのは嬉しいけど、オーウェンが顔引き攣らせてるからやめて。美人が真顔って結構怖いんだから。
場を収めるため、それはリヒトなりの冗談ということにしておいて、オーウェンへ説明を頼む。すると、オーウェンはリヒトから目を逸らしながら説明を続けた。
それから彼に聞いた話では、この街はやはり噂通りの街だった。違うことといえば、その噂がかなり古い情報だということだ。この街に残っている住人はもう2、3人くらいしかいないと言う。
かつては、大病を患った患者や夢遊病者が多かったらしいが、彼らは既に寿命を迎え、亡くなっていったそうだ。
それももう何70年も前の話だと言うから驚きである。今残っているのは、自らの意思でこの地へ移ってきた者くらいだとか。
「俺の他は、廃墟好きな変わり者の芸術家に、ここで亡くなった家族の弔いにと、自分もここで寿命を迎えようとしてるやつくらいだ」
つまり、オーウェン以外はそれなりに元気に過ごしていたらしい。
だとすれば、何故、未だにこの街はゴーストタウンと呼ばれているのだろうか。
それをオーウェンに聞いてみると、彼は苦い顔で説明してくれた。
「恐らく、帝国の勝手なイメージ操作だろう。例の廃墟好きな芸術家みたいな奴らにとっては、ここは絶好の観光地みたいなものだしな」
私達は移動手段が移動手段なので、気づかなかったが、ここへ来るにはかなりの時間がかかるらしい。最近、大都市付近には鉄道が普及してきたそうだが、その鉄道はこの街の近くも通る。
しかも、鉄道利用者が話していたことには、「身も凍るホラースポット」というツアーに、この街も勝手に組み込まれていたとオーウェンは話す。
病や怪我に苦しむ人がいなかったのは、良いことだが、帝国の自分勝手さをこんなところでも耳にすることになろうとは。
少し前までは、自分も帝国の思う通りに過ごしてきた。だからこそ、こんな横暴、許し難い。
あらかたの事情を聞き終わった頃には、夕方前になっていた。そこまで時間を意識していなかったが、ここは昼でさえ日の光があまり差し込まない地だ。家の窓から見る限り、もう辺りは薄暗くなりつつある。
それにオーウェンも気づき、私達に向かってこの家に泊まるように提案してくれた。正直この荒れ果てた村で泊まる場所などあるかと不安に思っていたところだ。非常に助かる。
「夕食も、一応例の変人芸術家から色々分けてもらってるから、そこらへんのものを適当に食べてくれ」
「何から何までお世話になります」
オーウェンの指差した方を見て、私は心の中でうっと息を詰まらせた。確かに食材はある…ただ、ごちゃごちゃだ。さすがに生ものが放り出されているわけではないが…。食材を確認するだけで一苦労しそうだわ。
しかし、人様にお世話になりながら不満など言っていられない。
そう思い、私は部屋の台所近くに積まれた食材の元へと足を進めようとした。
ぼんやりと、立ち上がろうとした私を見上げていたオーウェンだったが、急に何かに気づいたように慌て始めた。
「あ、待て!そこにはーー!」
まだ立ち上がれないと思っていたオーウェンが、必死に私の腕を掴もうとした。ところが、予想以上に動いた自分の足にもつれて、オーウェンは私を巻き込みつつ派手に転んでしまった。
ここからがハプニングの始まりだった。
「いえ、貴方の対応は当然でしょうし、気にしないでください」
「今度シェリの腕を疑ったら…地獄に叩き落としてやるけどね」
後ろでリヒトが天使らしからぬことを言っている。私のことを信頼してくれているのは嬉しいけど、オーウェンが顔引き攣らせてるからやめて。美人が真顔って結構怖いんだから。
場を収めるため、それはリヒトなりの冗談ということにしておいて、オーウェンへ説明を頼む。すると、オーウェンはリヒトから目を逸らしながら説明を続けた。
それから彼に聞いた話では、この街はやはり噂通りの街だった。違うことといえば、その噂がかなり古い情報だということだ。この街に残っている住人はもう2、3人くらいしかいないと言う。
かつては、大病を患った患者や夢遊病者が多かったらしいが、彼らは既に寿命を迎え、亡くなっていったそうだ。
それももう何70年も前の話だと言うから驚きである。今残っているのは、自らの意思でこの地へ移ってきた者くらいだとか。
「俺の他は、廃墟好きな変わり者の芸術家に、ここで亡くなった家族の弔いにと、自分もここで寿命を迎えようとしてるやつくらいだ」
つまり、オーウェン以外はそれなりに元気に過ごしていたらしい。
だとすれば、何故、未だにこの街はゴーストタウンと呼ばれているのだろうか。
それをオーウェンに聞いてみると、彼は苦い顔で説明してくれた。
「恐らく、帝国の勝手なイメージ操作だろう。例の廃墟好きな芸術家みたいな奴らにとっては、ここは絶好の観光地みたいなものだしな」
私達は移動手段が移動手段なので、気づかなかったが、ここへ来るにはかなりの時間がかかるらしい。最近、大都市付近には鉄道が普及してきたそうだが、その鉄道はこの街の近くも通る。
しかも、鉄道利用者が話していたことには、「身も凍るホラースポット」というツアーに、この街も勝手に組み込まれていたとオーウェンは話す。
病や怪我に苦しむ人がいなかったのは、良いことだが、帝国の自分勝手さをこんなところでも耳にすることになろうとは。
少し前までは、自分も帝国の思う通りに過ごしてきた。だからこそ、こんな横暴、許し難い。
あらかたの事情を聞き終わった頃には、夕方前になっていた。そこまで時間を意識していなかったが、ここは昼でさえ日の光があまり差し込まない地だ。家の窓から見る限り、もう辺りは薄暗くなりつつある。
それにオーウェンも気づき、私達に向かってこの家に泊まるように提案してくれた。正直この荒れ果てた村で泊まる場所などあるかと不安に思っていたところだ。非常に助かる。
「夕食も、一応例の変人芸術家から色々分けてもらってるから、そこらへんのものを適当に食べてくれ」
「何から何までお世話になります」
オーウェンの指差した方を見て、私は心の中でうっと息を詰まらせた。確かに食材はある…ただ、ごちゃごちゃだ。さすがに生ものが放り出されているわけではないが…。食材を確認するだけで一苦労しそうだわ。
しかし、人様にお世話になりながら不満など言っていられない。
そう思い、私は部屋の台所近くに積まれた食材の元へと足を進めようとした。
ぼんやりと、立ち上がろうとした私を見上げていたオーウェンだったが、急に何かに気づいたように慌て始めた。
「あ、待て!そこにはーー!」
まだ立ち上がれないと思っていたオーウェンが、必死に私の腕を掴もうとした。ところが、予想以上に動いた自分の足にもつれて、オーウェンは私を巻き込みつつ派手に転んでしまった。
ここからがハプニングの始まりだった。
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