男装聖女と暴走天使

コトイアオイ

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5.西の港町

治療と原因解明

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 翌日、私は朝早くから病院を訪れ治療に勤しんだ。人数が多いのであと1週間くらいかかりきりになりそうだ。


私が治療に専念する間、リヒトには別行動をとってもらい、疫病の原因を探ってもらうことにしている。


 夕暮れ手前、限界まで力を使った後、私はふらつく足取りで宿を目指す。最近見つけた宿への近道を通っていると、覚束無い足取りには優しくない道だったのでちょっとした道の凸凹につまづいた。


あ、これ顔からこける!一番嫌なこけ方だわ。


覚悟を決めて目をつぶっていると、予想とは反対に柔らかいものにぶつかった。


ん?地面が柔らかいわけないし、もしかしてリヒトだろうか?私はそう信じて、お礼を言った。


「おや?誰かと間違えているのかな。お嬢さん」


んん?リヒトじゃない!うわ、助けてくれた人に何て失礼なことを!いや、それより、この人今何て言った?私のことをお嬢さんって…男装してるのに。


「ふふ、僕には分かるよ。君は可愛らしいお嬢さんだとね」


何で考えてることがばれた!と、取り敢えずお礼は言わなきゃ。助けてもらったのは事実だし。

 「あの…助けてくださってありがとうございます。それと、人違いしてすみません…!」


見上げると、私を支えていたのはマントに大きな帽子を被った見知らぬ男性だった。旅装束に身を包み、金髪の髪を後ろに流した男性はにこやかに笑っている。


「気にする事はないさ。では。男装のお嬢さん」


私は何度も頭を下げて帰路を急いだ。ふと振り返ってみたが、先程の男性は既にいなくなっていた。





 「おかえりシェリ。遅かったね?何かあった?」


迎えたリヒトの第一声にびくつく。先程のこけそうになったことはその「何か」に入るのだろうか。


私があからさまに動揺していると、リヒトはこちらに近寄ってきてーー。


私の服の匂いを嗅いだ。



「ちょっ、リヒト!な、何してるのっ!」



唐突なリヒトの謎行為に私の頭は爆発寸前だ。それなのに、リヒトはそんな私を気にかけることなく、不快そうに顔をしかめた。


「この匂い…。シェリ、誰か変な人に会った?」


え、何その質問。まるで、服についた香水を嗅がれて浮気を疑われてる夫の気分なんだけど。


変な人…。でも、あの金髪の人は私を助けてくれたいい人だし、違うと思う。


「変な人なんていなかったから大丈夫だよ」


私がそう笑い飛ばすと、リヒトも不承不承納得してくれた。




 その後、疫病の原因についてリヒトはこう仮説した。あの祭りに皆が気を取られている隙に、何者かが街の井戸に毒をもたらしたのではないかと。街の井戸水から僅かな穢れを感じたらしい。病にかかった人とそうでない人との差は、個人の免疫力、または井戸水を使っていない人がいたからだろうと彼は推測した。


小瓶に入れた問題の井戸水をリヒトは手渡してきた。それを私は無言で受け取った。


リヒトは僅かというが、人間にとってはかなり害のあるレベルだ。水の問題も早く解決しなくてはならない…。


やることの多さに私達は気を引き締めた。
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