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6.帝国の魔の手
天使の語り
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『リヒト!』
愛しい少女に名を呼ばれた気がして、リヒトはゆるゆるとまぶたを上げる。しかし、彼の目の前にはマントを身につけた男しかいなかった。
暫くぼんやりとしてからリヒトは覚醒する。そうだ、シェリが捕えられてしまった。守りきれなかったことが何より悔しいが、早く彼女を助けにいかないと。
そう思い身体を起こそうとするが、妙な痺れが残っていた。あの時の痛みもだが、これは一体何だろうか。目の前の天使の仕業か?
「そう睨まないでくれ。私は第31の使徒だ。私達はこの地上では少ない同胞だろう?仲良くやろう、第55の使徒よ」
「ふざけるな。僕はお前と仲良くする気はない」
31の使徒だと?まさか他の天使が地上にいるなんて…。天界であまり他の天使と交流を持とうとしなかったことが仇になったか。
「ふむ、そんなことは言っていられないと思うけどね。君の身体の不調は同じ天使にしか治せないよ?さっきだって、私が君の心臓に力を注いでいなければ危なかったし」
その発言に思わず31の使徒を凝視する。こいつ、何か知っているのか。
「天使が本来住まう場所ではないんだ、この地上はね。当然長く滞在すればするほど、僕らの身体は地上の毒素に蝕まれていくのさ。それを中和するのが慣れ親しんだ天使の聖なる力だ」
君はこのままだと死ぬしかない。天使が死ぬには翼を切られるか、毒素によってもがき苦しむかだし。だから、僕は天界と地上を行き来するんだ。この方法なら何とかなるから。
31の使徒は淡々と説明して、こちらの様子を窺う。どのみち死にかけの僕の力ではこいつを倒せないから色々と喋っているのだろう。ならば、それを利用して引き出せる情報は引き出そう。まだ身体は動く。リミットはそこまで迫っていないはずだ。
「…お前は何故地上に?」
天使はめったに地上に降りてこないはずだ。こいつの目的が分かれば、何かの時役立つかもしれない。なるべくこいつに話をさせよう。その間に少しは回復するだろう。
「そうだねぇ、驚きと楽しさを求めてかな?天界はいつも変わらないから暇で仕方なくてね」
こいつは天界のやつにしては、とんでもない変わり者のようだ。
「…ふーん。地上もそう変わらないと思うけどね?」
適当に話を流していると、31の使徒は「とんでもない!」と口を挟む。
「地上は実に楽しいとも。私のことを無条件に信じる人間達は滑稽だったしね。そう言えば君、あの村の者達を治したのかい?」
何の話だ?シェリと立ち寄った村のことだろうか。何故、こいつがその話をするのか疑問に思っていると、31の使徒は自分のしたことを暴露した。
「ほら、東の方の村だよ確か。僕が渡したお香を大事そうにしてた村人達だ。あれはお守りとは正反対の獣寄せだっていうのにね」
東の村、お香、獣…東の村クォーツのことか?リヒトは31の使徒の言う村に思い至り、舌打ちする。
こいつ、相当趣味が悪い…。シェリには絶対近づけたくない。
ただ、こいつの動機は大したことはなさそうだ。大方、帝国兵の様子から面白そうだと思って乱入したといったところか。これなら、どうにかこいつを利用できるかもしれない。
リヒトは31の使徒を説得するために思考を巡らせた。
愛しい少女に名を呼ばれた気がして、リヒトはゆるゆるとまぶたを上げる。しかし、彼の目の前にはマントを身につけた男しかいなかった。
暫くぼんやりとしてからリヒトは覚醒する。そうだ、シェリが捕えられてしまった。守りきれなかったことが何より悔しいが、早く彼女を助けにいかないと。
そう思い身体を起こそうとするが、妙な痺れが残っていた。あの時の痛みもだが、これは一体何だろうか。目の前の天使の仕業か?
「そう睨まないでくれ。私は第31の使徒だ。私達はこの地上では少ない同胞だろう?仲良くやろう、第55の使徒よ」
「ふざけるな。僕はお前と仲良くする気はない」
31の使徒だと?まさか他の天使が地上にいるなんて…。天界であまり他の天使と交流を持とうとしなかったことが仇になったか。
「ふむ、そんなことは言っていられないと思うけどね。君の身体の不調は同じ天使にしか治せないよ?さっきだって、私が君の心臓に力を注いでいなければ危なかったし」
その発言に思わず31の使徒を凝視する。こいつ、何か知っているのか。
「天使が本来住まう場所ではないんだ、この地上はね。当然長く滞在すればするほど、僕らの身体は地上の毒素に蝕まれていくのさ。それを中和するのが慣れ親しんだ天使の聖なる力だ」
君はこのままだと死ぬしかない。天使が死ぬには翼を切られるか、毒素によってもがき苦しむかだし。だから、僕は天界と地上を行き来するんだ。この方法なら何とかなるから。
31の使徒は淡々と説明して、こちらの様子を窺う。どのみち死にかけの僕の力ではこいつを倒せないから色々と喋っているのだろう。ならば、それを利用して引き出せる情報は引き出そう。まだ身体は動く。リミットはそこまで迫っていないはずだ。
「…お前は何故地上に?」
天使はめったに地上に降りてこないはずだ。こいつの目的が分かれば、何かの時役立つかもしれない。なるべくこいつに話をさせよう。その間に少しは回復するだろう。
「そうだねぇ、驚きと楽しさを求めてかな?天界はいつも変わらないから暇で仕方なくてね」
こいつは天界のやつにしては、とんでもない変わり者のようだ。
「…ふーん。地上もそう変わらないと思うけどね?」
適当に話を流していると、31の使徒は「とんでもない!」と口を挟む。
「地上は実に楽しいとも。私のことを無条件に信じる人間達は滑稽だったしね。そう言えば君、あの村の者達を治したのかい?」
何の話だ?シェリと立ち寄った村のことだろうか。何故、こいつがその話をするのか疑問に思っていると、31の使徒は自分のしたことを暴露した。
「ほら、東の方の村だよ確か。僕が渡したお香を大事そうにしてた村人達だ。あれはお守りとは正反対の獣寄せだっていうのにね」
東の村、お香、獣…東の村クォーツのことか?リヒトは31の使徒の言う村に思い至り、舌打ちする。
こいつ、相当趣味が悪い…。シェリには絶対近づけたくない。
ただ、こいつの動機は大したことはなさそうだ。大方、帝国兵の様子から面白そうだと思って乱入したといったところか。これなら、どうにかこいつを利用できるかもしれない。
リヒトは31の使徒を説得するために思考を巡らせた。
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