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4.南のゴーストタウン
賑やかな別れ
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「おーい、早く起きてくれ」
…ん?誰かしら。聞き覚えのない声だわ。
「いや、ほんと頼む。俺このままじゃ命危ないわこれ」
…命?何を大げさな。
「ちょっと…シェリの半径1メートル以内に君は近づかないでくれる?死にたいの?」
あれ、何かすっごい聞き覚えある声だわ。この物騒なセリフもついさっき聞いた気がする。ここまで思い至った私は、先程の切実な声の持ち主を思い出した。
オーウェン…まずい、私が早く起きないと彼の命は本当に危機的かもしれない。
そして、私の意識は覚醒した。
はっと目を開け、その勢いで身体を起こす。すると、目に入ってきたのは、オーウェンを威嚇するリヒトの姿だった。やっぱり、危なかった!
私が目覚めたことで、リヒトの意識はオーウェンから私へと移る。
「シェリ、起きたんだね。さっきはごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど…」
ほんとだよ、うぶな箱入り聖女を舐めてもらっては困る。今後はリヒトに羞恥心が如何なるものか教える必要がありそうだ。まぁ、でも、リヒトも反省してるみたいだし、今回は水に流そう。
「もういいわ。リヒトも私のために怒ってくれたんでしょ?でも、オーウェンは怪我人なんだからね」
「うん…でも、あの男もう治ってるよね?なのに、まだ庇うの?」
ん?雲行きが怪しくなってきた。それを感じ取ったのか、オーウェンが口を挟んできた。
「お、おう。俺は元気だからもう気にしないでいい。そいつの方を優先してやれ」
結果的に、オーウェンのこの気遣いのおかげで、その場はどうにか平穏に乗り切ることができた。
その後、バタバタしていて置き去りになっていた夕食だが、オーウェンがパンと野菜スープを振る舞ってくれた。
そして夕食を食べてからは、オーウェンと雑談をして就寝した。
治癒の力はそれほど使っていなかったのに、その後のやり取りのせいでどっと疲れていたのだろう。私の意識は一気に夢の世界へと旅立っていった。
ーーー
カァーカァーというカラスの鳴き声で私は目覚めた。小鳥のさえずりではなく、カラスの鳴き声という点が、セイユの街らしさだろうか。
同じく、オーウェンも目覚めたようで、朝食の準備のために台所へ向かう。その足取りは昨日よりもしっかりとしていた。
その状態を見て、彼の足はもう大丈夫だと判断した私は、今日中にここを発つことを決めた。
あまり1つのところに留まっていては、兵士達にも見つかりやすいし。
私の考えをリヒトに伝えると、彼は「今から出てもいいんだよ?」と言っていた。…彼は早く出たいらしい。
リヒトはそう言っていたが、結局、朝までご馳走になってセイユを出発することになった。オーウェンはリヒトにびくびくしながらも、朝食まで食べていけと言ってくれたからだ。
「まぁ、そんな大したものは出せないが…せめて食べてから出発しな」
というわけで、ゆっくり朝食まで取り、オーウェンの家を…セイユから出発することにした。
それから迎えた別れの際、オーウェンは私にこっそりと話しかけてきた。
「あの時は本当に悪かった。つい先日、台所の床に油と卵をぶちまけたままでな。拭いてからじゃないと危ないかもって言いたかったんだが」
なるほど、あの時焦っていたのはそういうことだったのね。騒ぎのせいですっかり忘れていた。オーウェンも説明する余裕がなかったようだし、だからあの後急いで台所へ行って床を拭いていたのか。
私が1人で納得していると、オーウェンがそのまま続ける。
「あと、あの兄ちゃん、あんまり怒らせるなよ。おまえら、恋仲なんだろ?お前があいつを抑えないと、いつか被害者が出るぞ」
俺もある意味、被害者だ。
オーウェンは疲れた顔でそう告げた。何か…精神的にかなりきてるようだ。それにしても…ん?こ、恋仲…!?
「な、何言ってるんです!?私とリヒトはそんなんじゃないですよ」
慌てて否定するも、オーウェンに「はぁ?何言ってんだこいつ…」という怪訝な顔をされた。いや、本当に本当だってば。
「あんなことまでしておいて、恋人じゃない方がおかしいだろうに」
あんなこと?…あんな、こと…。
オーウェンの指す「あんなこと」を思い出して、火がついたように顔が赤くなった。あれか、あのキスか!
すると、私達が2人で話していた時でさえ、不機嫌な顔をしていたリヒトがついに我慢しきれず、こちらへ歩み寄って来た。
オーウェンと私の間に身体を割り込ませ、リヒトは私を背に隠すように立つ。
「何の話?シェリがあんな顔するなんて…またこの男が何かした?」
…リヒトの過去の行動を思い出して照れてただけ!!とは言えず、とにかく勢いよく首を振る。
「そ、そうじゃないから!もう、リヒトの馬鹿!オーウェン、色々ありがとう!あと迷惑かけてごめんね」
「おう、ありがとうはこっちのセリフだ。この恩はいつか必ず返す。…その頃にはちゃんと恋人になるんだぞ」
オーウェンまで、また、何言ってるのよ!
そして、その言葉にリヒトは何故か機嫌を直したようだ。?何故だ…。
こうして、最後まで私達は騒ぎながら、オーウェンとセイユの街に別れを告げたのだったーー。
…ん?誰かしら。聞き覚えのない声だわ。
「いや、ほんと頼む。俺このままじゃ命危ないわこれ」
…命?何を大げさな。
「ちょっと…シェリの半径1メートル以内に君は近づかないでくれる?死にたいの?」
あれ、何かすっごい聞き覚えある声だわ。この物騒なセリフもついさっき聞いた気がする。ここまで思い至った私は、先程の切実な声の持ち主を思い出した。
オーウェン…まずい、私が早く起きないと彼の命は本当に危機的かもしれない。
そして、私の意識は覚醒した。
はっと目を開け、その勢いで身体を起こす。すると、目に入ってきたのは、オーウェンを威嚇するリヒトの姿だった。やっぱり、危なかった!
私が目覚めたことで、リヒトの意識はオーウェンから私へと移る。
「シェリ、起きたんだね。さっきはごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど…」
ほんとだよ、うぶな箱入り聖女を舐めてもらっては困る。今後はリヒトに羞恥心が如何なるものか教える必要がありそうだ。まぁ、でも、リヒトも反省してるみたいだし、今回は水に流そう。
「もういいわ。リヒトも私のために怒ってくれたんでしょ?でも、オーウェンは怪我人なんだからね」
「うん…でも、あの男もう治ってるよね?なのに、まだ庇うの?」
ん?雲行きが怪しくなってきた。それを感じ取ったのか、オーウェンが口を挟んできた。
「お、おう。俺は元気だからもう気にしないでいい。そいつの方を優先してやれ」
結果的に、オーウェンのこの気遣いのおかげで、その場はどうにか平穏に乗り切ることができた。
その後、バタバタしていて置き去りになっていた夕食だが、オーウェンがパンと野菜スープを振る舞ってくれた。
そして夕食を食べてからは、オーウェンと雑談をして就寝した。
治癒の力はそれほど使っていなかったのに、その後のやり取りのせいでどっと疲れていたのだろう。私の意識は一気に夢の世界へと旅立っていった。
ーーー
カァーカァーというカラスの鳴き声で私は目覚めた。小鳥のさえずりではなく、カラスの鳴き声という点が、セイユの街らしさだろうか。
同じく、オーウェンも目覚めたようで、朝食の準備のために台所へ向かう。その足取りは昨日よりもしっかりとしていた。
その状態を見て、彼の足はもう大丈夫だと判断した私は、今日中にここを発つことを決めた。
あまり1つのところに留まっていては、兵士達にも見つかりやすいし。
私の考えをリヒトに伝えると、彼は「今から出てもいいんだよ?」と言っていた。…彼は早く出たいらしい。
リヒトはそう言っていたが、結局、朝までご馳走になってセイユを出発することになった。オーウェンはリヒトにびくびくしながらも、朝食まで食べていけと言ってくれたからだ。
「まぁ、そんな大したものは出せないが…せめて食べてから出発しな」
というわけで、ゆっくり朝食まで取り、オーウェンの家を…セイユから出発することにした。
それから迎えた別れの際、オーウェンは私にこっそりと話しかけてきた。
「あの時は本当に悪かった。つい先日、台所の床に油と卵をぶちまけたままでな。拭いてからじゃないと危ないかもって言いたかったんだが」
なるほど、あの時焦っていたのはそういうことだったのね。騒ぎのせいですっかり忘れていた。オーウェンも説明する余裕がなかったようだし、だからあの後急いで台所へ行って床を拭いていたのか。
私が1人で納得していると、オーウェンがそのまま続ける。
「あと、あの兄ちゃん、あんまり怒らせるなよ。おまえら、恋仲なんだろ?お前があいつを抑えないと、いつか被害者が出るぞ」
俺もある意味、被害者だ。
オーウェンは疲れた顔でそう告げた。何か…精神的にかなりきてるようだ。それにしても…ん?こ、恋仲…!?
「な、何言ってるんです!?私とリヒトはそんなんじゃないですよ」
慌てて否定するも、オーウェンに「はぁ?何言ってんだこいつ…」という怪訝な顔をされた。いや、本当に本当だってば。
「あんなことまでしておいて、恋人じゃない方がおかしいだろうに」
あんなこと?…あんな、こと…。
オーウェンの指す「あんなこと」を思い出して、火がついたように顔が赤くなった。あれか、あのキスか!
すると、私達が2人で話していた時でさえ、不機嫌な顔をしていたリヒトがついに我慢しきれず、こちらへ歩み寄って来た。
オーウェンと私の間に身体を割り込ませ、リヒトは私を背に隠すように立つ。
「何の話?シェリがあんな顔するなんて…またこの男が何かした?」
…リヒトの過去の行動を思い出して照れてただけ!!とは言えず、とにかく勢いよく首を振る。
「そ、そうじゃないから!もう、リヒトの馬鹿!オーウェン、色々ありがとう!あと迷惑かけてごめんね」
「おう、ありがとうはこっちのセリフだ。この恩はいつか必ず返す。…その頃にはちゃんと恋人になるんだぞ」
オーウェンまで、また、何言ってるのよ!
そして、その言葉にリヒトは何故か機嫌を直したようだ。?何故だ…。
こうして、最後まで私達は騒ぎながら、オーウェンとセイユの街に別れを告げたのだったーー。
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