利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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2 海の国の聖人候補

271 タイチの礼

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271

領主の館に戻った私は、暫しあっけにとられた。

(昨日までと違いすぎる)

確かにセーヤとソーヤに、このままでは領主の館としてまだまだ建物も傷んでいるし、館内も雑然としているから、館の方々を助けてなんとかしてあげて、とは頼んでおいた。

(でも、この真新しさはなんだろう?)

領主の館は、外壁から、まるで新品になったような美しさだ。一瞬、一夜で立て替えたのかと思うような完璧な掃除振り。

(すごいよ、凄すぎるよ!、二人とも!)

最近慣れて来ていたが、やはりこの2人のスキルは普通じゃないと改めて感心する。
2人に言わせると、私との生活で異世界ご飯を食べているせいだそうだけど……
それにしても、素晴らしい仕事ぶりだ。

(後で、ちゃんと褒めておかなきゃね)

「私も長年執事をしておりますが、セーヤ様ソーヤ様ほどの完璧な方々は初めて目に致します。帝国の執事とは、凄いものでございますね……私共など……」

(ああ、家令のセンリさんが、すっかり自信を失くしている)

「あの子達は私の契約している妖精なのですよ。見かけは可愛らしい少年ですが、何百年も生きている者で、様々な経験を経てきているのです。決してセンリさん達の能力が劣っているわけではありません。
とても、使える子達なので、この家の復旧のために、協力させてあげて下さい」

私の言葉にセンリさんの顔がパッと明るくなった。

「ああ、そうでございましたか!あの方達は、そのような熟練の!
納得致しました。お二人のお力には、本当に助けられております。ありがとうございます。感謝の言葉もございません。

家具もお二人が調達して運び込んで頂けたので、もうタイチ様にもメイロードさまにも普通に生活して頂けます。ご安心くださいませ」

(うまくフォローできてよかった。それにしてもセーヤとソーヤ、仕事早いなぁ)

領主の家にふさわしい家具となると、マホロでもそう簡単には揃いそうにもなかったので、セーヤとソーヤに予算を伝えて、イスの家具屋や骨董店で揃えてもらい、運んだのだ。

センリさん達は、マホロから船で運んだと思っているらしいけど、今のマホロは、高級品があまり売れるような状況でもないのか、特注でないと高級家具は売っていないし、それを待っている間、ずっと館ががらんどうでは困るだろう。

となれば、だいぶ物価が高いとはいえ、大量の品物が売り買いされるイスでうまく中古品を探せば、存外安い買い物も可能で、すぐに揃えられると踏んだのだが、予想通りにいったようだ。

(ちなみにこの家具のためのお金は、私からのお祝いという事でタイチには納得させた。大事な領地のためのお金は、別のことに使うのがいいと思う)

執務室を見に行くと、タイチが大量の資料と格闘中だった。

だが、今はちゃんと執務用の机に、立派な椅子があり、ちゃんと領主の席らしい佇まいに整えられている。
まだ絵画を揃えるほどの余裕はないが、それはまた先の楽しみというものだろう。

「少し、なってきたわね」

私に気がついたタイチは、赤くなって頭を掻きながらも、ペンを走らせている。

「ここ数年分の陳情が、ほぼ全て棚上げになっているので、目を通して、優先順位をつけないと、どうにもならないんです。

領主の仕事って、思った以上に大変ですね」

真面目なタイチは、領主の仕事を覚えるのに一生懸命だ。

私はそんなタイチのために、急遽作った地図を渡した。

「この地図には、この領内で採取可能な、ギルドが欲しがっている素材の群生地が書き込んであるわ。

仕事のない人たちを領主のあなたが雇って賃金を保証し、ガイドとして山守の方を雇うようにすれば、迷うことなくたどり着けるはず。難易度はいろいろだけど、それも山守の方と相談して人を選べば危険は少ないでしょう」

紙製の大きく詳細な地図に目を丸くしたタイチは、内容を聞いて更に目を丸くした。

「これは、まさしく宝の地図じゃないですか!!

どこの国だってこんなものは持っていませんよ!すごい、凄すぎます!!

これがあったら明日からこの領の人たちに現金収入が入ります!」

私の狙いはまさにそれだ。
働いてすぐに得られる現金収入を、できるだけ早く広く領内に行き渡らせ、離れかけている人々の流出を食い止める。

同時に、昆布漁や新たな農業など、新しい産業を起こして、領内の産業の活性化を印象付け希望を持たせる。

そして調査目的の小規模な漁から徐々に海の仕事も再開して行く。

これで不漁にも強い港町が再生できるはずだ。

「エダイ親方にも同じ地図を渡してあるわ。彼等との協力は、この海を守るためにもとても重要だから、これからも大切にしてね」

さて、私のできることは、これぐらいだ。
後は、この領の、この街の人達次第だろう。

「はい!私はひとりでは何もできない領主ですが、人材には恵まれています。皆と協力して、必ずこの港は復興してみせます。ここまでして下さったメイロードさまに、恥じない領主になります!」

またも涙目の若き領主は、膝を降り私の前で礼をとる。

きっと何度も練習したのだろう、その姿はきちんと様になっていて、とても美しかった。

何も受け取らない私のために、せめて最高の礼をと、忙しい中、一生懸命慣れない最高礼の練習をするタイチの姿が目に浮かんで、私も泣きそうだ。

「あなたなら大丈夫!港はきっとよみがえるわ!」

そう言って私は無理に笑顔を作って、タイチとバンダッタの街に祝福を祈った。
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