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2 海の国の聖人候補
333 総員必死で準備中!
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この規模のパーティーをひとつの建物で賄うのは無理と早々に判断した私は、グレードの高い4つの建物が四角形の4つの頂点にくる配置の、会場として使えそうな建物のある場所を探してもらい、それぞれに突貫工事で渡り廊下を設置させた。
4つの建物に囲まれた中央にはこれまた突貫で、ゴージャスな庭を作り、《水の魔石》を使った滝を演出。
調度品については、ここは私個人の好みは脇に置いて、セイツェさん監修の元、格に相応しいゴージャスさを演出したものを取り揃えた。
特に、上級貴族の方々のための建物には、サイデム商会の総力をあげて揃えた国宝級の調度品が入り、眩しくて目が痛いほどだ。
「ここまでキンキラ……いえ豪華な金の装飾をしないといけないものなんですか?セイツェさん」
「そうでございますね……確かに、この過剰な金装飾は市井の方々には奇異に映るかもしれませんが、これには象徴的な意味があるのでございますよ。実は金には魔力を通さない性質があるとされておりまして、それに関連しているのでございます」
セイツェさんに聞いたところ、完璧に防げるわけではないものの、金は古来から邪なものを寄せ付けないとされ、また魔法による傍受や攻撃を防ぐ手段としてある程度有効なため、魔法に関わる人々に珍重され使われているそうだ。なんでも〝皇宮内には極秘密談用に全て金で覆われた部屋がある〟と言われており、金の魔法防御力は強く信じられている。それが、時を経て習慣化し、魔法の世界に生きる貴族たちを象徴するものになっていった、ということのようだ。
どうやら、今では自分たちの身を守ってくれるという〝信仰〟に近いものがあるらしい。
「それで、納得がいきました。思ったより深く金への思いがあるんですね」
私はメモを取りながら、この黄金好きを演出プランに取り入れることにした。
人数が多い今回の宴、食に関しては入念な事前準備とライブキッチンの両方で対応する。オードブルなどの冷食については〝大地の恵み〟亭の料理人たちがすでに準備を始めてくれており、アイテムボックスにも、着々と料理がストックされているので、問題はないだろう。
暖かい料理のためには、前世よくブッフェで見かけた道具をアレンジしたものを採用することにした。
《火の魔石》を使って常に温めたお湯を張っておける浅めの鍋状の台座と、それに乗せて使うプレートを特注。プレートを取り替えることで、料理の即時補充が可能なため、大人数での宴会には重宝するだろう。
新しい試みや珍しい装置もあるため、当日働いてくれる人たちとのリハーサルは念入りに行った。
セイツェさんからの薫陶を受け、すでに多くのパーティーを取り仕切ってきた催事部は優秀で、人材は豊富だったため、こちらも問題なさそうだ。
当日のライブキッチンも、すでに経験のある〝大地の恵み〟亭の方々が担当してくれるので問題ない。彼らの移動にはアタタガ・フライによる移動を使うので、イスの店を閉める期間も最小限にできそうだ。
この期間、おじさまも頻繁な移動が必要となるため、緊急措置として一時的にアタタガ・フライでの移動を完全解禁した。きっとこき使われるはずなので、いくつかポーションを渡して、先にアタタガには謝っておいたが……ちょっとだけ心配。
ただ、貴族になったおじさまには、以前特別に乗せてもらった〝天船〟を個人所有の移動手段として作ることが可能になるため(申請はいるそうだが、貴族の個人所有は合法)、おそらく近いうちにそちらを使うようになるだろうと思う。
莫大な費用がかかるため〝男爵〟という最下級貴族には通常とても持てるようなものではないが、なにせ幾ら資産があるのか誰にもわからない大富豪のサイデムおじさまだ。仕事に必要なら、即決だと思う。いや、もう作る準備は始めているかもしれない。
(普段は全然贅沢をしない人だけど、こういうお金は惜しまないんだよね。根っからの商売好きなんだろうな)
この大掛かりなイベントに許されたのはたった2週間の準備期間。
全員ヘロヘロになりながらも、一生懸命頑張ってくれているところを見ると、サイデムおじさまには、それなりに人徳があるらしい。
私は体力不足のため、後方支援だけだが、それでもかなりの仕事量だ。
セイツェさんたちとの打ち合わせは完了し、必要なものの調達にはなんとか目処は立ったが、今度は各所への指示書作成に追われ、机に張り付いている。
動く人数が多いので、指示書も膨大だ。
(それにしても、おじさまが貴族ねぇ……)
普段の丼を抱えてラーメンをすすっている姿が浮かぶばかりの私には、冗談にしか思えないが、これは皇室と直接取引をするための〝免許〟のようなものなのだろう。
なんにせよ、おじさまにはめでたい貴族デビューの晴れ舞台だ。
できるだけ盛り上げてあげようと思う。
ペンを走らせていた時、私はふと、あるアイディアを思いつき《異世界召喚の陣》を開いた。
そしてかなり高価なあるものを、おじさまへのお祝いだと思って手に入れた。
この規模のパーティーをひとつの建物で賄うのは無理と早々に判断した私は、グレードの高い4つの建物が四角形の4つの頂点にくる配置の、会場として使えそうな建物のある場所を探してもらい、それぞれに突貫工事で渡り廊下を設置させた。
4つの建物に囲まれた中央にはこれまた突貫で、ゴージャスな庭を作り、《水の魔石》を使った滝を演出。
調度品については、ここは私個人の好みは脇に置いて、セイツェさん監修の元、格に相応しいゴージャスさを演出したものを取り揃えた。
特に、上級貴族の方々のための建物には、サイデム商会の総力をあげて揃えた国宝級の調度品が入り、眩しくて目が痛いほどだ。
「ここまでキンキラ……いえ豪華な金の装飾をしないといけないものなんですか?セイツェさん」
「そうでございますね……確かに、この過剰な金装飾は市井の方々には奇異に映るかもしれませんが、これには象徴的な意味があるのでございますよ。実は金には魔力を通さない性質があるとされておりまして、それに関連しているのでございます」
セイツェさんに聞いたところ、完璧に防げるわけではないものの、金は古来から邪なものを寄せ付けないとされ、また魔法による傍受や攻撃を防ぐ手段としてある程度有効なため、魔法に関わる人々に珍重され使われているそうだ。なんでも〝皇宮内には極秘密談用に全て金で覆われた部屋がある〟と言われており、金の魔法防御力は強く信じられている。それが、時を経て習慣化し、魔法の世界に生きる貴族たちを象徴するものになっていった、ということのようだ。
どうやら、今では自分たちの身を守ってくれるという〝信仰〟に近いものがあるらしい。
「それで、納得がいきました。思ったより深く金への思いがあるんですね」
私はメモを取りながら、この黄金好きを演出プランに取り入れることにした。
人数が多い今回の宴、食に関しては入念な事前準備とライブキッチンの両方で対応する。オードブルなどの冷食については〝大地の恵み〟亭の料理人たちがすでに準備を始めてくれており、アイテムボックスにも、着々と料理がストックされているので、問題はないだろう。
暖かい料理のためには、前世よくブッフェで見かけた道具をアレンジしたものを採用することにした。
《火の魔石》を使って常に温めたお湯を張っておける浅めの鍋状の台座と、それに乗せて使うプレートを特注。プレートを取り替えることで、料理の即時補充が可能なため、大人数での宴会には重宝するだろう。
新しい試みや珍しい装置もあるため、当日働いてくれる人たちとのリハーサルは念入りに行った。
セイツェさんからの薫陶を受け、すでに多くのパーティーを取り仕切ってきた催事部は優秀で、人材は豊富だったため、こちらも問題なさそうだ。
当日のライブキッチンも、すでに経験のある〝大地の恵み〟亭の方々が担当してくれるので問題ない。彼らの移動にはアタタガ・フライによる移動を使うので、イスの店を閉める期間も最小限にできそうだ。
この期間、おじさまも頻繁な移動が必要となるため、緊急措置として一時的にアタタガ・フライでの移動を完全解禁した。きっとこき使われるはずなので、いくつかポーションを渡して、先にアタタガには謝っておいたが……ちょっとだけ心配。
ただ、貴族になったおじさまには、以前特別に乗せてもらった〝天船〟を個人所有の移動手段として作ることが可能になるため(申請はいるそうだが、貴族の個人所有は合法)、おそらく近いうちにそちらを使うようになるだろうと思う。
莫大な費用がかかるため〝男爵〟という最下級貴族には通常とても持てるようなものではないが、なにせ幾ら資産があるのか誰にもわからない大富豪のサイデムおじさまだ。仕事に必要なら、即決だと思う。いや、もう作る準備は始めているかもしれない。
(普段は全然贅沢をしない人だけど、こういうお金は惜しまないんだよね。根っからの商売好きなんだろうな)
この大掛かりなイベントに許されたのはたった2週間の準備期間。
全員ヘロヘロになりながらも、一生懸命頑張ってくれているところを見ると、サイデムおじさまには、それなりに人徳があるらしい。
私は体力不足のため、後方支援だけだが、それでもかなりの仕事量だ。
セイツェさんたちとの打ち合わせは完了し、必要なものの調達にはなんとか目処は立ったが、今度は各所への指示書作成に追われ、机に張り付いている。
動く人数が多いので、指示書も膨大だ。
(それにしても、おじさまが貴族ねぇ……)
普段の丼を抱えてラーメンをすすっている姿が浮かぶばかりの私には、冗談にしか思えないが、これは皇室と直接取引をするための〝免許〟のようなものなのだろう。
なんにせよ、おじさまにはめでたい貴族デビューの晴れ舞台だ。
できるだけ盛り上げてあげようと思う。
ペンを走らせていた時、私はふと、あるアイディアを思いつき《異世界召喚の陣》を開いた。
そしてかなり高価なあるものを、おじさまへのお祝いだと思って手に入れた。
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