利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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2 海の国の聖人候補

346 ギルドへの報告

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346

博士の高度な《地形把握》スキルを持ってしても、封印し固めてしまった7階層より下の様子は探索不可だそうだ。
見えない、探せない、入れない、なので、これで完璧に〝爆砂〟は消えたと言っていいと思う。

もうあの下に動くものは何もないので、不用意に《索敵》に引っかかるようなこともない。
あの封印の下は、誰も見つけることのできない完全な〝無いモノ〟となった。

あれから2日経った後も、セイカは目覚めず、まだこんこんと眠り続けている。

「心配はいらないよ。命に別状はないはず。ただ極限まで魔力を使い過ぎて、回復が間に合っていないだけだから。精神的な疲労も長くあったようだし、今は、とにかく休ませてあげて」

セイリュウがそう言うので、栄養剤代わりに〝ポーション〟を少しずつ飲ませて様子を見ていたところ、徐々に血色が良くなり、その日の夕方、セイカはやっと目を覚ましてくれた。

「ええと、封印はどうなりましたか?!ちゃんとできたのでしょうか?!」

彼女の目覚めの第一声はだった。

私たちは彼女に、気を失った後のことを説明し、封印が完璧であることを伝えて安心させた。そして、更に2日後彼女の体調が動けるまで戻ったところで、セイカを連れて第6層へ戻り、現場を確認してもらった。

「これでアキツから〝爆砂〟は完全になくなったわけだけど、これでよかった?」

私の言葉にセイカは、微笑んで頷いてくれた。

「ありがとう、ありがとうございます。グッケンス博士、セイリュウ、エジンさん、セーヤ、ソーヤ……そして、ありがとうメイロード! あなたたちがいなかったら、きっとこの封印は成せなかった。

本当にありがとう!」

綺麗な涙を浮かべて、セイカは深々と頭を下げた。

そして私たちは、ダンジョン入り口に作った《無限回廊の扉》から6日ぶりに地上に戻ったで、再びダンジョンの監視員さんの元へ戻った。

(エジン先生だけは、家に戻ったけど……)

「第6層まで、しかも完全攻略されたのですか?!!」

あまりの驚きに目を白黒させている監視員さんに苦笑しつつ、書類に全員無事帰還したことを記入して、私たちはこの〝爆砂〟のダンジョンを後にした。

ラキの冒険者ギルドへ戻った我々は、オノンダ幹事に面会を要請した。

(あのお姉さんのいるカウンターで完遂報告なんてしたら、まだきっと目立ちまくっちゃう。
報告も含めて、直接オノンダ幹事に処理してもらった方がいいよね)

私は部屋に通されると、オノンダ幹事の前に第6層までの地図を広げた。

「これが、ラキ東南新ダンジョンの全容です。結論から申し上げると〝爆砂〟はこのダンジョンには存在しませんでした。しかし、有望な資源が採取可能なダンジョンですよ」

「ば、バク……〝爆砂〟がない?!」

オノンダさん、口が開いたまま閉じなくなっている。
しばらくは、声も出ない状態でパクパクと何か言おうとしていたが、声にならず、まじまじと地図を見つめてだいぶ長い間、目を白黒させていた。

〝爆砂〟が採れないという事実を突きつけられたショックはかなり大きかったようだ。

「最下層は水で満たされていました。そこには〝ゴズメ〟という凶悪な水棲の魔物がおり《地形探査》でもその下はありませんでした。〝爆砂〟の片鱗もなかったです」

「本当に、たった一度の攻略であのダンジョンを全て明らかになさったので……」

どうしても信じられないらしいオノンダ幹事。
事実を認めたくないのかもしれない。期待が大きかっただけに気持ちは分からなくもないが……

「ご不明な点があれば、その地図はお預け致しますので検証なさって下さい。実は、そのダンジョン地図の権利についても、こちらのギルドにお譲りしたいと思っているのですよ」

衝撃の事実に今ひとつ頭が回っていないオノンダさんに、私は更に爆弾発言をした。

「な、なんと!!そんな、とんでもござません。このような貴重な地図の権利を頂くわけには参りません。必ず、しっかりとお支払いさせて頂きます」

慌てるオノンダ幹事を制して私は言った。

「もちろん、タダでお譲りするつもりはありません。この地図から得られる収入を、使って欲しいことがあるのです」

「へ?」

オノンダ幹事、秘書の方、慌ててやってきた地図部門の責任者らしき方々、皆さんで私を見る。
《火の魔石》と爆薬が採取できることがはっきりし、長く利益が見込めるこの地図を一体どうする気なのか、皆さん興味津々のようだ。

「このダンジョンの魔物は今のところ〝ネオ・パクー〟だけです。
攻略には水魔法があれば、かなり有効ですが、1匹づつ追い込んで叩ければ魔力がなくても上層階ならば採取可能だと思われます。ですが、そのためには中に障壁を作るなど工作も必要ですし、きっちり仕留めるための強い武器もいるでしょう。

今こちらでは攻略のために必要な支度金を出せない状況だとお聞きしています。

こうして、攻略情報が得られた今でも、沿海州の冒険者の方はかなり準備をしなければ採取には向かえません。たとえ採取できれば確実に利益があると分かっていても、先行投資が大きすぎるのです」

そこで私は、冒険者ギルドの事業として、沿海州の冒険者の皆さんに支度金を融資するシステムを作ってくれないか、と依頼した。そして、その原資として、このダンジョン地図の利益を使って欲しい、と持ちかけた。
せっかく沿海州で得られる利益、大陸の冒険者達だけが圧倒的に有利な状況にあるのは、あまりにも気の毒だ。

「私はこの街、そしてアキツになるべくこのダンジョンの利益が還元されるべきだと考えています。
〝爆砂〟こそありませんでしたが、火薬は採取できますから、きっと〝爆砂〟で培った技術が役に立つでしょうし〝爆砂〟よりは危険の少ない武器作りなどの工房も仕事ができるのではないでしょうか」

タイチやエジン先生の苦労を見てきた私は、かなりアキツの貧しさに同情的になっていた。そのため〝爆砂〟の利益はなくとも、新しい仕事の芽を作ってあげたくて、こんな提案をしたのだ。

すると……私はいつの間にかギルドの皆さんに取り囲まれていた。皆さん目がウルウル、思いっきり泣いている方までいる。

そして口々に、感謝の言葉を何度も言い、私の手を握りしめる。

「ありがとうございます。大陸の方が、そこまで沿海州の小国のことを考えて下さるなど、思ってもみないことでございました。なんという美しいお心でございましょう!」

「この地に、再び活気が戻ること、間違いございません。全てはメイロード様のおかげでございます。あじがどうございまづぅ~」

「いえ、あの、私も沿海州に居を構えておりますので、ここがたくさんお仕事のある街になるといいなぁ、と思っただけで……」

「ありがとうございます」
「アジガトウございますぅ!」

なんだか収拾がつかなくなってきた。

ついてきてくれたセイリュウは、知らん顔だし……。

(タスケテ!!)
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