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2 海の国の聖人候補
247 楽しくお料理
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247
料理好きだったというこの家の前オーナーのおかげで、新しい家の料理環境は悪くなさそうだ。
道具や食器も全て譲られたので、直ぐに料理ができ、沿海州風の食器も色々使える。
(素晴らしい!)
残念ながら沿海州の物件なので、高級別荘とは言っても、魔導系の道具はなかった。でも、必要なら持ち込めばいいだけのことだ。
改めてキッチンを詳しく見た所、前の持ち主が料理好き、そしてもてなし好きだったのは間違いないようで、調理道具も食器もとっても充実している。
大陸ではあまり見ない魚料理に合いそうな土物の食器もたくさんあり、見ているだけで嬉しくなってしまう。
ナギワさんもご招待したことだし、《無限回廊の扉》を出たり入ったりしているところを見られてもまずいので、今日はこのキッチンだけを使って料理をしていこう。
彼女は一旦お店に戻った後、夕食の時間帯に再度来ることになっているので、それまでが料理時間だ。
必要と思われる道具を揃えてから、まずは大量のお湯を沸かしつつ、下拵えをしていこう。
「やっとまともにこれが役立つ日が来たわ!」
臨戦態勢の私は出刃包丁を片手に割烹着でキッチンに仁王立ちしている。
「ああ、それもメイロードさまが鍛治工房に特注していた包丁のうちの一本ですね。確かに、あまりお使いになっているところを見たことがありませんでした。魚用だったのでございますね」
「ふふふ」
ご機嫌の私は、大小様々の魚を次々に、捌いていく。
魚の解体は散々前世でやっていたので、カツオぐらいの大きさの魚でも余裕だが、知らない魚にはどんな毒や危険があるかわからないので、一応慎重に調べながら進めていこう。
《鑑定》で得た情報を参照しながら、初めての魚も次々に捌いていく。
ソーヤは、魚のさばき方をよく知らないというので、まずは私が手本を見せながら捌いていく。
私のやり方を見て覚えたら、ソーヤもすぐ参戦するそうだ。
「こんな色々な魚を捌くところから魚料理が見られるなんて、なんて面白い経験でしょう!メイロードさま、楽しいですね!」
家事妖精もわくわくが止まらないようだ。
赤身の魚、白身の魚、小骨の多いものに油の多いもの、魚の個性は色々だ。
もうすでに《鑑定》は済んでいるので、魚の特徴は把握済みだ。
「まずは昆布締めを作っておきましょうか」
白身の魚を薄めに削ぎ切り、酒で表面を軽く拭いた昆布で挟んで、少し重石をして冷暗所で保存する。
先ほどの市場から買ってきた昆布を使ってみたが、問題なさそうだ。
でも、こういう使い方はアキツではしていない。出汁を取るのではなく煮物の具材として使ったりしているようだ。
(もったいないな、とは思うけど天然物だけで生産量はそう多くないみたいだからなぁ。値段もそこそこ高いし)
「昆布で挟むだけ……これだけですか?」
不思議そうなソーヤだが、後で食べて驚いてもらおう。
さて、次は煮付けだ。
油の乗ったいい型の赤魚があったので、こってり味でつまみにもおかずにも最高の煮付けを作ろうと思う。
「とは言っても、特に難しいことはないんだけどね。新鮮な魚で作る煮付けは一味違うよ、期待してね!」
今日は醤油もみりんも日本酒も使って、和食パーティ。
(醤油が市場で見つからなかったのはがっかりだけど、魚醤文化が浸透しているところを見ると可能性はまだあると思う。山間部の方に足を伸ばしてみたほうがいいかもしれない)
「あとは、茶碗蒸しも作ろうかな。
あ、天ぷらもしよっと!」
昆布と鰹節に近い半乾燥のアキツ風生節カオカオを使って出汁を引く。
(これこれ!この香り!!)
私はソーヤに桂剥きを教え、飾り包丁もいくつか教えてみた。
ソーヤは楽しそうに新しい技術の習得に取り組んでいる。きっとソーヤなら、あっと言う間に私より上手く出来るようになるに違いない。
ソーヤとふたり、大量の海産物を捌きながら、味見をし、批評し合い、料理法を考えたりしていると、本当に楽しくて仕方がない。
この世界で生き抜くため、後先考えず突っ走った結果、やたら有名になってしまった私は、なんだか色々と窮屈だと思っていたのかもしれない。
出汁や醤油のいい香りが漂うキッチンに響く包丁の音……なんて心地いい。
誰も自分のことを知らない場所で好き放題できることに、今とても開放感を感じている。
しかも新しい土地の新しい素材に出会えて、更に美味しい料理がもうすぐ出来上がる。
(最高だね!)
私は元のオーナーが残してくれた野趣あふれる沿海州産のステキな食器類を選びながら、幸せを噛み締めていた。
料理好きだったというこの家の前オーナーのおかげで、新しい家の料理環境は悪くなさそうだ。
道具や食器も全て譲られたので、直ぐに料理ができ、沿海州風の食器も色々使える。
(素晴らしい!)
残念ながら沿海州の物件なので、高級別荘とは言っても、魔導系の道具はなかった。でも、必要なら持ち込めばいいだけのことだ。
改めてキッチンを詳しく見た所、前の持ち主が料理好き、そしてもてなし好きだったのは間違いないようで、調理道具も食器もとっても充実している。
大陸ではあまり見ない魚料理に合いそうな土物の食器もたくさんあり、見ているだけで嬉しくなってしまう。
ナギワさんもご招待したことだし、《無限回廊の扉》を出たり入ったりしているところを見られてもまずいので、今日はこのキッチンだけを使って料理をしていこう。
彼女は一旦お店に戻った後、夕食の時間帯に再度来ることになっているので、それまでが料理時間だ。
必要と思われる道具を揃えてから、まずは大量のお湯を沸かしつつ、下拵えをしていこう。
「やっとまともにこれが役立つ日が来たわ!」
臨戦態勢の私は出刃包丁を片手に割烹着でキッチンに仁王立ちしている。
「ああ、それもメイロードさまが鍛治工房に特注していた包丁のうちの一本ですね。確かに、あまりお使いになっているところを見たことがありませんでした。魚用だったのでございますね」
「ふふふ」
ご機嫌の私は、大小様々の魚を次々に、捌いていく。
魚の解体は散々前世でやっていたので、カツオぐらいの大きさの魚でも余裕だが、知らない魚にはどんな毒や危険があるかわからないので、一応慎重に調べながら進めていこう。
《鑑定》で得た情報を参照しながら、初めての魚も次々に捌いていく。
ソーヤは、魚のさばき方をよく知らないというので、まずは私が手本を見せながら捌いていく。
私のやり方を見て覚えたら、ソーヤもすぐ参戦するそうだ。
「こんな色々な魚を捌くところから魚料理が見られるなんて、なんて面白い経験でしょう!メイロードさま、楽しいですね!」
家事妖精もわくわくが止まらないようだ。
赤身の魚、白身の魚、小骨の多いものに油の多いもの、魚の個性は色々だ。
もうすでに《鑑定》は済んでいるので、魚の特徴は把握済みだ。
「まずは昆布締めを作っておきましょうか」
白身の魚を薄めに削ぎ切り、酒で表面を軽く拭いた昆布で挟んで、少し重石をして冷暗所で保存する。
先ほどの市場から買ってきた昆布を使ってみたが、問題なさそうだ。
でも、こういう使い方はアキツではしていない。出汁を取るのではなく煮物の具材として使ったりしているようだ。
(もったいないな、とは思うけど天然物だけで生産量はそう多くないみたいだからなぁ。値段もそこそこ高いし)
「昆布で挟むだけ……これだけですか?」
不思議そうなソーヤだが、後で食べて驚いてもらおう。
さて、次は煮付けだ。
油の乗ったいい型の赤魚があったので、こってり味でつまみにもおかずにも最高の煮付けを作ろうと思う。
「とは言っても、特に難しいことはないんだけどね。新鮮な魚で作る煮付けは一味違うよ、期待してね!」
今日は醤油もみりんも日本酒も使って、和食パーティ。
(醤油が市場で見つからなかったのはがっかりだけど、魚醤文化が浸透しているところを見ると可能性はまだあると思う。山間部の方に足を伸ばしてみたほうがいいかもしれない)
「あとは、茶碗蒸しも作ろうかな。
あ、天ぷらもしよっと!」
昆布と鰹節に近い半乾燥のアキツ風生節カオカオを使って出汁を引く。
(これこれ!この香り!!)
私はソーヤに桂剥きを教え、飾り包丁もいくつか教えてみた。
ソーヤは楽しそうに新しい技術の習得に取り組んでいる。きっとソーヤなら、あっと言う間に私より上手く出来るようになるに違いない。
ソーヤとふたり、大量の海産物を捌きながら、味見をし、批評し合い、料理法を考えたりしていると、本当に楽しくて仕方がない。
この世界で生き抜くため、後先考えず突っ走った結果、やたら有名になってしまった私は、なんだか色々と窮屈だと思っていたのかもしれない。
出汁や醤油のいい香りが漂うキッチンに響く包丁の音……なんて心地いい。
誰も自分のことを知らない場所で好き放題できることに、今とても開放感を感じている。
しかも新しい土地の新しい素材に出会えて、更に美味しい料理がもうすぐ出来上がる。
(最高だね!)
私は元のオーナーが残してくれた野趣あふれる沿海州産のステキな食器類を選びながら、幸せを噛み締めていた。
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