オーバーパワード! ~最強勇者と最強魔王~

正島まさし

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7.最後の言葉

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 周囲を警戒しながら、魔王の死体と思われるものに近づく。
 と言っても下半身の部分しか見当たらない。

(上半身は消滅したか、どこかに吹っ飛んだか……)
 だが、さっきから不吉な予感がするのはどういうことか。
 地面に倒れてる下半身がよく見える所まで来た。

 何かがおかしい。
 うつ伏せの向きで倒れている下半身は、女の体の下半身のように思える。
 その腰の辺のラインは、エディスのそれを思い起こさせた。
 愛を確かめるために肌を重ねたあの夜の記憶がよみがえる。

(そんなはずはない。あの死体が、エディスのものであるはずはない)
 そうおもいつつも、額に冷や汗がにじむ。
 エディスの名を呼ぼうとしてためらう。
 もし返事が帰ってこなかったら、それはつまり……。

「エディス?」
 俺はついにその名を呼んだ。
 背後から帰ってくるはずの返事はない。

「エディス!」
 俺は恐怖にかられながらもう一度その名を呼ぶ。
 どうして返事をしてくれない。
 俺の後ろにいるんだろ?

「くっ……」
 俺は覚悟を決めて、後ろを振り返る。
 すると。
 そこに。
 はにかんだような笑顔の。

 ――魔王がいた。

「き、貴様!」
 俺はパニックになりそうな心を押さえつけながら、一歩飛び退って杖を構え、戦闘に備える。
「エディスをどこにやった!」
 自分の顔が引きつってるのが分かる。

「どこって、下半身は見たでしょ、あそこ」
 聞きたくなかった、残酷な答えが帰ってくる。

「それから上半身は向こうの方に飛んでったよ。もしかするとまだ意識がわずかに残ってるかもね」
「なっ……」
 俺は絶句する。
「行ってあげれば? 死ぬ間際に、何か言い残すことがあるかも? 聞いてあげなきゃ」

「う……うおおおおおお! エディス! エディス!」
 俺は思わず、魔王が言った『向こう』の方に走った。

 そして、俺は見つけてしまう。
 血溜まりの中、胸から上の上半身しかない、エディスの体を。

「ああああああああああああああ!」
 俺はエディスの体の前に崩れ落ち、震える手で彼女の手をとった。
 不思議なことに、エディスは安らかな表情で目を閉じていた。

 そして。
 エディスの手を通して、俺の脳に思念が伝わってきた。
 もう言葉を口にすることもできないエディスの、最後の言葉。

『逃げて』
『生き延びて』
『お願い』

 そして、エディスの命の灯が消えたのが、はっきりと、分かった。
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