オーバーパワード! ~最強勇者と最強魔王~

正島まさし

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8.魔王の力

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「ねえ、ちょっとお話しようよ」
 場違いに明るい声が聞こえた。
 もちろん、魔王の声だ。

「……貴様」
 俺の声は怒りで震えている。
「え? 何?」
 無邪気な魔王の声。

「貴様ああああ!」
 俺は……パニック寸前だった。
 怒りのまま、何の魔法でもないただの腕力に任せて、杖で魔王を殴った。

「たはは……」
 顔面を殴られた魔王は口の中を切ったらしく、唇の端に血をにじませていた。

「お話するのに邪魔なものは、取っちゃおうか」
 魔王はあくまで無邪気な笑顔で、すっと右手を俺の体に伸ばす。
 さほど早くない動きだが、何故か俺は躱すことができない。

 魔王の右手の指先が俺の肩に触れると、杖を持った俺の腕が、俺の体から切り離されて落ちた。

「!?」
 何が起きたか理解できない。
 本能的に俺は後ろに飛び退る。同時に複合回復魔法を使う。
時空治癒スペーシオテンポラル・ヒール
 俺の腕が元通り再生する……服の袖までは再生しないが。

「面白いね。組織の再生を開始した直後に、組織の再生が終わった未来から腕を借りてくる魔法が発動するんだね」
 この魔法は俺が編み出した魔法でこの世界では知られていない。
 魔王はひと目見て魔法の構造を理解したようだ。

(駄目だ……今の俺では勝てない!?)
 俺の心が純粋な恐怖に満たされる。

『逃げて』『生き延びて』『お願い』

 脳裏に浮かぶエディスの最後の意思……。
 俺は、魔王に背を向けて、全力で駆けた。
 この部屋の出口に向かって。

 背後で、魔王が追いかけてくる様子はない。
 大丈夫だ、逃げられる。
 俺は、全力で駆けて、魔王の玉座にたどり着いた。

(?)

 玉座の前で俺はうろたえた。
 俺は部屋の出口に向かって駆けた。それなのに、どうしてここに部屋の一番奥にあったはずの玉座が……。
 俺はすばやく周囲を見渡す。
 どういうわけだ。
 どうして俺は部屋の一番奥にいる――。

「触った!」

 背後、至近距離から聞こえる無邪気な声。
 両肩を、とん、と軽くタッチされて。

 俺の両腕が切断されて地面に落ちた。

「たしか君たちの魔法の使い方ってさあ、手の指がないと、魔法使えないよね?」

 絶望的なことに、いま魔王が言ったことは、全くそのとおりなのだ――。
 俺は魔法を使うすべを失った。
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