オーバーパワード! ~最強勇者と最強魔王~

正島まさし

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9.ゲームオーバー

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 全ては絶望的だった。
 たった一人の仲間は死んだ。
 俺は両腕を失い、戦闘能力を失った。
 両肩の傷口からぼたぼたと血が流れている、止血をしなければ死んでしまうだろうが、それをする手段はない――。

 それでも。
 俺はあるかも知れない奇跡に賭け、この部屋からの脱出をしようと決意する。
 助かる可能性はもはや一億に一つもない。
 それでも、俺が愛した、俺を愛してくれたエディスが、最後に望んだのが、俺が生き延びることなら。

 俺は、魔王の横をすり抜け、今度こそ部屋の出口に向かって駆ける。
 走りにくい。腕がないから体のバランスが取れない。
 それでも、走り――。

 とん。

 腹部に何かが触れた。
 何故か俺の前方にいた魔王の右手の指が、俺の腹に軽く触れていた。

「う、うわああああああ!」
 体を切断されたかと思って、恐怖にみっともない声を上げてしまう。
 幸いそれはなかった。魔王はただ俺の体に触れただけだった。

「君、死んじゃうよ?」
 魔王は悲しそうな声で言った。

(こいつは、なにを、言っている?)
 俺は混乱しながら、意識を明瞭に保とうと努力する。

「君の怪我を治してくれる人は近くに居ないんだろ? 傷の手当をしないと、死んじゃうよ? 僕は、君に、死んでほしくないなあ」

(こいつは、何を……)
 血が足りなくなってきているのか。
 思考能力が働かない。

「今はまだ痛みを感じてないかも知れないけど、その両腕の切り口も痛くなってくるはずだし……」

(こいつは、一体……何が……目的……)
 目がかすむ。

(こいつの目的が……俺を殺すことでないなら……俺が生き延びる道は……まさか……)
(いや、駄目だ……魔王に助けてもらうなんて……そんな……)
 思考はまとまらない。
 
「分かってくれた?」
 魔王の指が、俺の両太ももに触った。

 積み木を崩すように、両脚を切断された俺の体が、地に倒れた。

「安心して、お喋りができるように回復はしてあげる。回復したらいろいろお話しよう? あ、そうだ、君の仲間の体を使って、やりたいこともあるんだ!」

 俺は、本物の絶望を知った。
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