生贄な花嫁ですが、愛に溺れそうです

湖月もか

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花嫁と生贄について知りました

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「そもそもの話だが、生贄なぞ我らは一度も求めたことなどない。永くから続く風習が歪んだだけの話だ。……昔、我より前の代が花嫁として人間の娘を求めた事が発端だ。だからお主に言うた事も嘘ではない」

 周りを見渡し、人の多さに辟易している様だが仕方が無いと諦めたようだ。
 これみよがしに大きく溜息をつき、最後まで黙って聞くようにと忠告するのも忘れずに、彼は【生贄】について語り始めた。


 曰く--
 山翔の前の山神は女好きで神や人間構わず手を出していたのだとか。『あの貞操なしは名を覚えるに値しないから覚えとらん』とは山翔の言葉だ。なにか腹に据え兼ねるものがあるのだろう。

 そして、かの神はあの村に目をつけた。
 どこからかやってきた人々が山の麓に住み着き、人が増え、村という組織になり数年が経った頃。魔獣や獣の襲撃に怯えながらも生活していた彼らの代表である村長むらおさに、若い娘を差し出す代わりに保護すると提案した。
 交渉を有利に進めるためにすぐに手を差し伸べるのではなく、あえて困り始めた時期に声をかけたと本人が誇らしげに話していたのだという。

『そういう所が大嫌いだった』
 と、山翔は不快そうに眉をひそめ、憎々しげに言葉を吐き捨てた。


 獣達の存在に怯えながら生活していた彼ら。移住も考えていたが近くの街、もしくは村までは何日間も歩かなければならない。その上、女や子供も多く食料等の物資もギリギリかそれ以下しかない為、移住は断念せざるを得なかったようだ。
 その為、村長は神が護ってくれるならとその提案を快く承諾。
 生贄では無く、花嫁として百年に一度娘を娶る。
 つまり、娘が寿命で亡くなって、数年後にはまた新しく娘を娶りの繰り返し。それが何百年、何千年と続いた。

 村の人達は娘を山神の元へと送り出す。
 ……もちろん泉に投げ入れるわけではなく、泉より奥へ行ったところに神様が迎えに行っていたのだとか。
 当時はそこへ向かう道中も神によって保護されてる為、日中は魔獣に襲われる事無く向かう事が出来ていたのだとか。
 ……聞こえはいいが、村のために娘を差し出すと言うのは生贄となんら変わりない。
 ただ、一点違うのは神様の花嫁として誇らしい事だと娘達は喜んで嫁いでいったようだ。
 ちなみに、神と人との間に産まれた子は神の力を持つ訳ではなく普通の人間として生をまっとうするのだとか。
 そうしないと神の力をもつ者が溢れかえり、制御しきれずに危険なのだと。
 主にこの神のために定められたらしい。

 だが、神といっても寿命はある。
 死という概念は無いのだが、神としての力が衰え、やがてその存在が消失する。そして力が衰え始めた頃に次の神が誕生し、一般的には消失した時に交代している。
 ちなみに、山翔は前任の神が消失するより前にその地位を無理やり奪ったのだとか。

 今周囲にかなりの人数が集まっている関係上、悪用されないという保証はない為、神がどうやって生まれるのかは教えられないとの事。

 ちなみに、山翔が存在してるのに山吹に代替わりしているのは山吹が誕生した途端にこれ幸いと譲った--もとい、押し付けた--のだという。

 そして山翔が貞操なしの神から代替わりし、一回目は娘を娶ったそう。その娘が大層美人で、纏う雰囲気も柔らかく、穏やかな時間を一緒に過ごすうちに心底惚れたのだと。その娘は山翔の隣で年々歳を重ね、天寿をまっとうした。
 その数年後に訪れた村長と娘に対し、山翔は妻は一人だけでいい。と、次の娘を断った。
 --そしてこの時から、【花嫁を捧げる】という事実が歪み始めたのだという。

『当時、我がもう少し気を回していれば……何人も若い娘が死なずに済んだ。……それに、お主も死にかけることも無かった。本当に、すまぬ』

 申し訳なさそうにこちらを真っ直ぐと見、頭を深々とさげた。

 元々は花嫁として丁重に迎えられていた娘達。嬉しそうに、誇らしそうに堂々と道を歩き、華やかな花嫁衣裳を見に纏い、歓迎されていたという。
 では……何故、生贄を泉に投げ入れる・・・・・・・・・・ようになったのか。
 山翔に要らないと断られたとしても、何故そのようになってしまったのか。

 推測の域を出ないがほぼ確定だろうと、それも山翔が語ってくれた。

 村は資源が少ない。
 一人分の食料が浮くだけでもかなり楽になっただろう事は容易に想像できる。
 そして、護ってもらう代償として娘を差し出していたのにも関わらず、その娘を村に連れて帰ると護ってもらえないと村の人達が騒ぎ立てるだろうことも同様に。

 食料も浮き、今年も花嫁を受け取ってもらったと皆に認識させるにはどうすればいいか。

 そうだ。
 捨てて殺してしまおう。

 多分そういう発想に至ったのだと思う。
 神には納得し、引き下がったようにする。そして下山途中にあるあの・・泉へと到達した。
 泉としては深さも広さもあるそこならば、重い衣装を纏った娘は泳げずに、そのまま底へ沈むだろうと。

 そして一人、また一人と娘を迎える事の無い山翔が断る事に泉へ投げ込まれる娘達。
 次の代へと伝わる時に歪んだのだろう。
 いつからか娘を連れてくることはなくなり、そのまま直接泉へと投げ込まれるようになった。

 その頃は常日頃妻の墓の傍で穏やかな日々を過ごしていた山翔は預かり知ることは無かった。
 時が過ぎ、偶然にも泉をのぞき込んだ時にひらひらと光を反射するものが底にあったの見つけたのだそう。
 ……そこで初めて発覚した。

 すぐさま泉から彼女達の遺骨を引きあげ、丁寧に丁寧に墓を作り埋め、花を捧げ、謝罪したのだと。
 花嫁として捧げていた事実が薄らと残っているのか、泉の底に沈んだ遺骨全てが白い衣装だった布を纏っていたという。

 この頃もまだ少しだけ残っていた前の神の力で村は保護されていた為、誰もその行為が無駄だと気づかなかったようだ。

 そして、気づけなかった自分を責め、悔いた山翔は力が衰え、次の神山吹が生まれてすぐに替わった。

 ……で、山吹に替わりしばらくして鈴音が投げ込まれ、今に至る。

 ちなみに忌み子についても山翔はこう推測している。

『村の人数があまり増えてない所を見るに、子供は一人だけと決まってたのだろう。だが、双子が産まれてしまった。それ故、片方を無かったことに・・・・・・・した。【忌み子】と名をつけ、それらしい理由を偽造し、殺したのではないだろうか』

 との事。
 当時の村人達を知らないので確証はないのだが、納得出来る内容だ。
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