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一応、決着が着きました
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「……まあ、こんなところだ。我の知り得た情報と推測が混ざってはおるが、あながち間違いではなかろう」
「俺、山翔から代わった時にそんな話一切聞いてないんだが。泉に花嫁が投げ込まれるとは聞いていたが、もう少し詳しく教えてくれてもよかっただろう」
「お主が娘を娶る時には村は潰れてる計算だったんだがのう」
だからといって、大事なことはちゃんと後任に引き継ぎましょうよ。
聞いていた皆、心の中で思っただろう。
神様だと聞いて緊張した面持ちで聞いていた人々も、今は困惑した顔をしている。
それもそうだろう。
神様でもとんでもない女好きが居るとは思わない。……思いたくないし、聞いた今でも信じたくはない。
「……まあ、そんな村も昨日無くなった故、心配する必要はあるまい」
「はあ? それ、どういうことよ」
「言葉通りの意味だ。土砂に埋もれてしもうたようでな。跡形もない」
「うそ、でしょ……?」
「嘘をつく利点など我にあるわけなかろう」
山翔と琴音が口論になっている。
というよりも、突っかかっていく琴音を山翔が面倒そうにあしらっているような感じである。
「あの、山吹さん。もしかして昨日の地鳴りって……」
「そうだろうな。あれは村の方角だったようだ………………大丈夫か?」
「故郷といっても、思い入れも何も無い場所ですから……そこまで悲しくないです。……薄情ですね、私」
両親という肩書きの他人がいただけのようなものだし、友人と呼べる人も、大切な思い出も何も無い場所だ。
大切なものなどあそこには何一つ無いので、特に何も感情は湧いてこない。
……街の方角でなくてよかったなとは思うけれど。
「別に、それでいいんじゃないのか? どうせ、鈴音に何一つ与えてこなかった人しかいない村だ。そんな場所が一つや二つ無くなったって差異はないだろう」
「そう、でしょうか?」
目の前で瞳に涙を溜めながら信じられないと喚く琴音をみると、自分が欠陥品のような気さえする。
「鈴音。今は、まだ割り切れないのかもしれないが……あまり気にしすぎない事だ」
「……かも、しれないですけど」
「今回は自然災害だから仕方ないだろう。たまたまその村の方に土砂が流れただけのことだ。山の近くに住んでいればいつかは起こりうる事だし、俺や山翔が手を出した訳では無いからな……人為的なものでないし、鈴音が重く考える必要は無い」
だから気にするな。
そういって、山吹はぽんぽんと軽く頭を撫でた。優しく、大きな暖かいその手はまるで慰めてくれるかのようだった。
ゆるゆると口角があがる。
「……して、山吹。良い雰囲気の所すまないが、この小娘はどうするのだ。このまま放置する訳にはいかぬだろう?」
「…………おかあさん、おとうさん」
この数分で何があったのかは分からないが琴音が項垂れて静かになっている。
そしていつの間にか拘束から解放されていた。
一応すぐ脇に熊さんがいる。
混乱が落ち着いて現実が飲み込めたのだろうか?私よりも家族として一緒に生活していた分、衝撃も大きいのは安易に想像出来るが、にしても変わりすぎだろう。
ちなみにこの時点でただの野次馬だった人達はそれぞれの仕事や用事に戻って行った。
最初心配そうにしてた妊婦とその旦那も、大丈夫だと分かると店に戻った。といっても、すぐ目の前なので何かあってもとんでこれると思ったのだろう。あとは妊婦さんが立ちっぱなしなのを旦那が心配してたのもある。
「……山翔、その女既婚者だぞ。旦那呼べばいいんじゃないのか?」
山吹が琴音を指さし、問う。
流石に『人を指さしては駄目なんですよ』とは言えない雰囲気である。
「嫁の貰い手があったんだな」
「感心するところはそこではありませんよ……。そういえば、今日は一人なんですね? 栄太さんはどうしたんですか?」
「……しらない。勝手に出てきたから」
「何か置き手紙とかは書いてきたんですか?」
「書いてないわよ。いちいちどこそこへ行くとか言わなくたっていいじゃない」
それは……旦那があちこち探し回っているのではないだろうか。
彼の気の弱さからしたら、出ていかれたと泣きながら探していそうだ。
「それは旦那が可愛そうだぞ、嬢ちゃん。……ん? この場合は奥さん、か。…………おい、誰か栄太という男を呼んできてくれ。流石に不憫だ」
「……熊さん。あんたのすぐ後ろにいるわよ」
「んなわけ………………いや、すまねえ。気付かなかった。気配感じなかったぞ。……そういう訓練受けてるのか? これ、騎士等から欲しがられる人材だな。確実に情報収集に向いてる」
こちらからは大柄な熊さんの後ろに立たれると誰がいても分からない。全くもって分からなかった。そもそも声が小さくて聞こえないのもあるが。
「…………」
「なによ、その言い方。わたしが悪いみたいじゃない」
「………………」
「なんで謝らなきゃいけないのよ。そんな事よりも両親が死んじゃったのよ……。今感傷に浸ってるんだからほっとして」
「……」
「ほっといてって……言ってんじゃない」
栄太は琴音の近くに寄り、彼女の背をとんとんと優しく叩く。宥めるように、慰めるように。
彼女も振り払うことは無く、大人しくそれを受け入れている。
「俺には何言ってるか聞こえないんだが……さすが夫婦だな。すげえや」
そばにいる熊さんですら聞こえない音量らしいが、会話が成立しているように見える。
この二人、わりといい相性なのではないだろうか?……正直、栄太が琴音の暴走を止められれば完璧なのだが。
その後、置いてけぼりだった周囲を更に置いて、二人は帰っていってしまった。というより、追い返したというのが近い。
ずっと至近距離で囁くように会話してる二人をみて、正直どうでも良くなった。
ずっといちゃいちゃしてるようにしか見えないから、山翔と山吹がなんとも言えない顔をしていた程だ。
それ以上続くなら家でやれと怒声が飛んだのも当たり前だろう。
最後に栄太が腰を折り、綺麗なお辞儀で謝罪して去っていった。
琴音は相変わらず睨んで帰って行った。
そして琴音と栄太が帰った為、解散。
疲労困憊な私達は街に被害がなかったのも確認できたので、早々に帰宅した。
後日 鐐 に『そんな面白い事になんで呼んでくれなかったのか』と問いただされるのだが、騒ぎの最中それどころではなかった私はこの時 鐐 を忘れていた。
本当にそれどころではなかったのだ。
「俺、山翔から代わった時にそんな話一切聞いてないんだが。泉に花嫁が投げ込まれるとは聞いていたが、もう少し詳しく教えてくれてもよかっただろう」
「お主が娘を娶る時には村は潰れてる計算だったんだがのう」
だからといって、大事なことはちゃんと後任に引き継ぎましょうよ。
聞いていた皆、心の中で思っただろう。
神様だと聞いて緊張した面持ちで聞いていた人々も、今は困惑した顔をしている。
それもそうだろう。
神様でもとんでもない女好きが居るとは思わない。……思いたくないし、聞いた今でも信じたくはない。
「……まあ、そんな村も昨日無くなった故、心配する必要はあるまい」
「はあ? それ、どういうことよ」
「言葉通りの意味だ。土砂に埋もれてしもうたようでな。跡形もない」
「うそ、でしょ……?」
「嘘をつく利点など我にあるわけなかろう」
山翔と琴音が口論になっている。
というよりも、突っかかっていく琴音を山翔が面倒そうにあしらっているような感じである。
「あの、山吹さん。もしかして昨日の地鳴りって……」
「そうだろうな。あれは村の方角だったようだ………………大丈夫か?」
「故郷といっても、思い入れも何も無い場所ですから……そこまで悲しくないです。……薄情ですね、私」
両親という肩書きの他人がいただけのようなものだし、友人と呼べる人も、大切な思い出も何も無い場所だ。
大切なものなどあそこには何一つ無いので、特に何も感情は湧いてこない。
……街の方角でなくてよかったなとは思うけれど。
「別に、それでいいんじゃないのか? どうせ、鈴音に何一つ与えてこなかった人しかいない村だ。そんな場所が一つや二つ無くなったって差異はないだろう」
「そう、でしょうか?」
目の前で瞳に涙を溜めながら信じられないと喚く琴音をみると、自分が欠陥品のような気さえする。
「鈴音。今は、まだ割り切れないのかもしれないが……あまり気にしすぎない事だ」
「……かも、しれないですけど」
「今回は自然災害だから仕方ないだろう。たまたまその村の方に土砂が流れただけのことだ。山の近くに住んでいればいつかは起こりうる事だし、俺や山翔が手を出した訳では無いからな……人為的なものでないし、鈴音が重く考える必要は無い」
だから気にするな。
そういって、山吹はぽんぽんと軽く頭を撫でた。優しく、大きな暖かいその手はまるで慰めてくれるかのようだった。
ゆるゆると口角があがる。
「……して、山吹。良い雰囲気の所すまないが、この小娘はどうするのだ。このまま放置する訳にはいかぬだろう?」
「…………おかあさん、おとうさん」
この数分で何があったのかは分からないが琴音が項垂れて静かになっている。
そしていつの間にか拘束から解放されていた。
一応すぐ脇に熊さんがいる。
混乱が落ち着いて現実が飲み込めたのだろうか?私よりも家族として一緒に生活していた分、衝撃も大きいのは安易に想像出来るが、にしても変わりすぎだろう。
ちなみにこの時点でただの野次馬だった人達はそれぞれの仕事や用事に戻って行った。
最初心配そうにしてた妊婦とその旦那も、大丈夫だと分かると店に戻った。といっても、すぐ目の前なので何かあってもとんでこれると思ったのだろう。あとは妊婦さんが立ちっぱなしなのを旦那が心配してたのもある。
「……山翔、その女既婚者だぞ。旦那呼べばいいんじゃないのか?」
山吹が琴音を指さし、問う。
流石に『人を指さしては駄目なんですよ』とは言えない雰囲気である。
「嫁の貰い手があったんだな」
「感心するところはそこではありませんよ……。そういえば、今日は一人なんですね? 栄太さんはどうしたんですか?」
「……しらない。勝手に出てきたから」
「何か置き手紙とかは書いてきたんですか?」
「書いてないわよ。いちいちどこそこへ行くとか言わなくたっていいじゃない」
それは……旦那があちこち探し回っているのではないだろうか。
彼の気の弱さからしたら、出ていかれたと泣きながら探していそうだ。
「それは旦那が可愛そうだぞ、嬢ちゃん。……ん? この場合は奥さん、か。…………おい、誰か栄太という男を呼んできてくれ。流石に不憫だ」
「……熊さん。あんたのすぐ後ろにいるわよ」
「んなわけ………………いや、すまねえ。気付かなかった。気配感じなかったぞ。……そういう訓練受けてるのか? これ、騎士等から欲しがられる人材だな。確実に情報収集に向いてる」
こちらからは大柄な熊さんの後ろに立たれると誰がいても分からない。全くもって分からなかった。そもそも声が小さくて聞こえないのもあるが。
「…………」
「なによ、その言い方。わたしが悪いみたいじゃない」
「………………」
「なんで謝らなきゃいけないのよ。そんな事よりも両親が死んじゃったのよ……。今感傷に浸ってるんだからほっとして」
「……」
「ほっといてって……言ってんじゃない」
栄太は琴音の近くに寄り、彼女の背をとんとんと優しく叩く。宥めるように、慰めるように。
彼女も振り払うことは無く、大人しくそれを受け入れている。
「俺には何言ってるか聞こえないんだが……さすが夫婦だな。すげえや」
そばにいる熊さんですら聞こえない音量らしいが、会話が成立しているように見える。
この二人、わりといい相性なのではないだろうか?……正直、栄太が琴音の暴走を止められれば完璧なのだが。
その後、置いてけぼりだった周囲を更に置いて、二人は帰っていってしまった。というより、追い返したというのが近い。
ずっと至近距離で囁くように会話してる二人をみて、正直どうでも良くなった。
ずっといちゃいちゃしてるようにしか見えないから、山翔と山吹がなんとも言えない顔をしていた程だ。
それ以上続くなら家でやれと怒声が飛んだのも当たり前だろう。
最後に栄太が腰を折り、綺麗なお辞儀で謝罪して去っていった。
琴音は相変わらず睨んで帰って行った。
そして琴音と栄太が帰った為、解散。
疲労困憊な私達は街に被害がなかったのも確認できたので、早々に帰宅した。
後日 鐐 に『そんな面白い事になんで呼んでくれなかったのか』と問いただされるのだが、騒ぎの最中それどころではなかった私はこの時 鐐 を忘れていた。
本当にそれどころではなかったのだ。
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