3 / 15
第3話
しおりを挟む
無数のグールに囲まれて、隠しボスであるオブソリートリッチが鎮座していた。その姿は禍々しく、薄茶色の朽ちかけた骨が寄せ集まってできた怪物だ。見るからに禍々し様相を呈している。
石造りで囲まれたドーム状の部屋へ想次郎が踏み入った瞬間、入口が地面から這い出してきた石板で塞がれる。
幾度となく経験してきたことだけに流石の想次郎も狼狽えず、カランビットナイフを片手に早くも聖属性魔法を唱える。
「フォルストゥム」
魔法の効果でナイフが白く輝く。装備している武器に聖属性を付与するエンチャント魔法だ。これによって、このボスのようなアンデッド属のモンスターには効率よくダメージを通すことができる。
「うえぇ」
オブソリートリッチの妙に生々しい質感に気分が悪くなりながらも、慣れた身のこなしで攻撃を躱しつつ、適格にナイフでダメージを与えていく想次郎。そして取り巻きのグールには目もくれず、ものの数分で隠しボス、オブソリートリッチを撃破した。
「はぁ……あとは……」
このボスは取り巻きのグールを含めて「ボス扱い」となる為、あとはその雑魚敵を処理すれば無事クリアとなるのだが、このボスステージの厄介なところは一定時間でその雑魚的が復活してしまうことだ。
しかしステージの適正レベルを大きく上回る想次郎ならば既にグール程度の雑魚的ならまとめて瞬殺できる実力だった。
だが、想次郎は動きの遅いグールの攻撃を掻い潜りながら、グールが一体復活すると時折攻撃を加え、また一体処理、といったように、明らかに意図的に攻撃の手を緩めて戦闘を続ける。
無限に湧き続けるグールを倒していると、稀に別種のモンスターが出現する。女性型のアンデッド属モンスター、バンシーである。
薄汚れたボロ布を纏う肌はどこかのマッドサイエンティストの実験体にでもされたのか、所々継ぎ接ぎだらけで、その瞳は燃えるように赤かった。クラスはグールよりも上のC2で、所謂レアキャラに位置する存在だ。
レアキャラと言っても通常よりも強敵になる為、プレイヤーにとっては出会ってしまうこと自体が不運でしかなく、ゲームクリアの邪魔をする制作側の用意した意地の悪いトラブルイベントと捉えるのが普通だ。
「来たっ!」
しかし想次郎は違った。そのシルエットを確認するなり、歓喜の声を上げる。
「――っと、違う。この娘じゃない」
と思いきや、瞬時に表情を曇らせ出現したばかりのバンシーを躊躇なく倒してしまう。
それからもひたすらグールを狩り続け、時折出現するバンシーを倒していった結果、9体目のバンシーが姿を現す。
モンスターの頭上に表示されるキャラ名にはその同名モンスターが複数体存在する場合、アルファベットがAから順番に割り振られるのだが、たった今現れたバンシーは9体目を示すバンシーIと表示されていた。
このゲームのリアルへの追求は敵となる各種モンスターにも現れており、同名モンスターでも無数の容姿パターンが存在するのだ。
バンシーIは長い銀髪の背が高い女性型で、他のバンシーと同じくボロボロの布切れのような服に身を包み、その肌は他と同様に継ぎ接ぎだらけだ。しかし、その禍々しい見た目の中には隠し切れない女性の艶やかさが滲み出ている。左右にバランスを崩しながらゆらゆらと歩く様子も、そのスタイルの良さが相まってどこか妖艶ですらある。
端的に言えば、バンシーIは美人だった。美人アンデッドである。
想次郎の目的、それはこのバンシーに出会うことであった。
そう、想次郎はこのファンタジー世界のアンデッドモンスターに恋心を抱いていた。
「やっと会えた……」
目当てのバンシーから視線を逸らさないまま、周囲から襲い来るグールを瞬時に一掃する想次郎。
レベルアップ時のステータスをある程度自由に割り振れる本ゲームにおいて、想次郎がその大半を俊敏性に割り振ったのも彼女に会う為の効率性を重視した結果であった。
------------------フレーバーテキスト紹介------------------
【魔法】
聖属性C2:フォルストゥム
装備武器に一定時間、聖属性をエンチャントする。
祈りに特別な神具は必要ない。水星の日時や刻印の力すら不要だ。あなたが心から真の祈りを捧げるのなら、神は常に平等に光を分け与えるのだから。
石造りで囲まれたドーム状の部屋へ想次郎が踏み入った瞬間、入口が地面から這い出してきた石板で塞がれる。
幾度となく経験してきたことだけに流石の想次郎も狼狽えず、カランビットナイフを片手に早くも聖属性魔法を唱える。
「フォルストゥム」
魔法の効果でナイフが白く輝く。装備している武器に聖属性を付与するエンチャント魔法だ。これによって、このボスのようなアンデッド属のモンスターには効率よくダメージを通すことができる。
「うえぇ」
オブソリートリッチの妙に生々しい質感に気分が悪くなりながらも、慣れた身のこなしで攻撃を躱しつつ、適格にナイフでダメージを与えていく想次郎。そして取り巻きのグールには目もくれず、ものの数分で隠しボス、オブソリートリッチを撃破した。
「はぁ……あとは……」
このボスは取り巻きのグールを含めて「ボス扱い」となる為、あとはその雑魚敵を処理すれば無事クリアとなるのだが、このボスステージの厄介なところは一定時間でその雑魚的が復活してしまうことだ。
しかしステージの適正レベルを大きく上回る想次郎ならば既にグール程度の雑魚的ならまとめて瞬殺できる実力だった。
だが、想次郎は動きの遅いグールの攻撃を掻い潜りながら、グールが一体復活すると時折攻撃を加え、また一体処理、といったように、明らかに意図的に攻撃の手を緩めて戦闘を続ける。
無限に湧き続けるグールを倒していると、稀に別種のモンスターが出現する。女性型のアンデッド属モンスター、バンシーである。
薄汚れたボロ布を纏う肌はどこかのマッドサイエンティストの実験体にでもされたのか、所々継ぎ接ぎだらけで、その瞳は燃えるように赤かった。クラスはグールよりも上のC2で、所謂レアキャラに位置する存在だ。
レアキャラと言っても通常よりも強敵になる為、プレイヤーにとっては出会ってしまうこと自体が不運でしかなく、ゲームクリアの邪魔をする制作側の用意した意地の悪いトラブルイベントと捉えるのが普通だ。
「来たっ!」
しかし想次郎は違った。そのシルエットを確認するなり、歓喜の声を上げる。
「――っと、違う。この娘じゃない」
と思いきや、瞬時に表情を曇らせ出現したばかりのバンシーを躊躇なく倒してしまう。
それからもひたすらグールを狩り続け、時折出現するバンシーを倒していった結果、9体目のバンシーが姿を現す。
モンスターの頭上に表示されるキャラ名にはその同名モンスターが複数体存在する場合、アルファベットがAから順番に割り振られるのだが、たった今現れたバンシーは9体目を示すバンシーIと表示されていた。
このゲームのリアルへの追求は敵となる各種モンスターにも現れており、同名モンスターでも無数の容姿パターンが存在するのだ。
バンシーIは長い銀髪の背が高い女性型で、他のバンシーと同じくボロボロの布切れのような服に身を包み、その肌は他と同様に継ぎ接ぎだらけだ。しかし、その禍々しい見た目の中には隠し切れない女性の艶やかさが滲み出ている。左右にバランスを崩しながらゆらゆらと歩く様子も、そのスタイルの良さが相まってどこか妖艶ですらある。
端的に言えば、バンシーIは美人だった。美人アンデッドである。
想次郎の目的、それはこのバンシーに出会うことであった。
そう、想次郎はこのファンタジー世界のアンデッドモンスターに恋心を抱いていた。
「やっと会えた……」
目当てのバンシーから視線を逸らさないまま、周囲から襲い来るグールを瞬時に一掃する想次郎。
レベルアップ時のステータスをある程度自由に割り振れる本ゲームにおいて、想次郎がその大半を俊敏性に割り振ったのも彼女に会う為の効率性を重視した結果であった。
------------------フレーバーテキスト紹介------------------
【魔法】
聖属性C2:フォルストゥム
装備武器に一定時間、聖属性をエンチャントする。
祈りに特別な神具は必要ない。水星の日時や刻印の力すら不要だ。あなたが心から真の祈りを捧げるのなら、神は常に平等に光を分け与えるのだから。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる