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第六章 最強の少女、罪に問われる
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「ひ、ひとまず私は一度受付に戻りますから、ツルカさんはここでゆっくり休んでください。まだ病み上がりなのですから、無理はよくありません。何かご用がありましたら私をお呼びください。今さらですが、私はアリアナと申します。では」
宿の受付娘──アリアナは軽く頭を下げると、ツルカの部屋からそっと退出した。
「……さてどうするか」
《まあ、仕方ないですね》
「んなもんで済むかァ────ッ! Cランク冒険者が危険種を倒しちまったんだぞ。どう言い訳すれば……!」
《知りませんよ。マスターがしたことではありませんか》
「流石にこれは予想外だ……いや、冷静に考えておけばこうなるのは予想できたか。ただ後々の事を考えてなかった……。くそ、なんで広まっちゃったんだよ」
《冒険者ギルド協会の人がいたのが不運でしたね。さすがに隠せません》
「とりあえず出来事をまとめよう。俺は三日前にみんなでクエストに行き、危険種と戦うことになった。俺は力を使い、記憶にはあんまりねえけどアザンドラを倒した……。そういえばあの女騎士、大丈夫だったのかな。何者だったんだろう、名前も聞いてねえし」
《あの方なら無事に帰還できていると思います。日を改めて礼をするとマスターがお眠りの時におっしゃっていたのですが……あの方は夜─────》
「つ、ツルカさんッ!」
その時、アリアナが扉を破るかの如くツルカの部屋に押し入った。
「な、なんだ⁉ 次はなに!」
「き、ききき、騎士団長様がご来訪です! ツルカ様に用があると────ひいっ」
怯えるアリアナに続いて、只ならぬ覇気を放つ人物がツルカの前に現れる。
「貴様がツルカ=ハーランだな。命令だ、今すぐ私と同行しろ」
間違いなくツルカはその瞬間に絶望を感じた。
「只今より、ツルカ=ハーランに対する異端審問を行う!」
グランディール王城、玉座の間に大臣の声が響き渡る。
(いやいやいや、展開が速いよ⁉ 何がどうなってこの結末に至ったんだよ!)
「ツルカ=ハーランを前に出せ」
拘束されているツルカを一人の騎士が連れ出し、国王の前に無理矢理に跪かせる。
「お主がツルカか。うむ……一見、ただの少女にしか見えんが」
まるで事の発端があやふやな国王は、どうもツルカに対して温厚であった。
見た目はちょうど背骨が徐々に前に倒れてきた老人といったところであろうか。白い顎髭を伸ばし、目尻が大きく垂れ下がった、老人ならではの相貌だ。
「では情報の再確認を行う。ビジルゴス国冒険者ギルド協会によると、彼女はCランク冒険者にも関わらず、『賢人』級破壊魔法の『デストロイヤー』を詠唱した。さらには危険種といわれる黒竜アザンドラの討伐を成し得た。間違いないな、ハレイン殿?」
大臣が書物を読み上げると、隅に立ち竦む老人を睨んだ。三日前に知り合った真ん丸とした胴が特徴的なギルド協会の老人だ。どうやら彼の名前はハレインというらしい。
「は、はい。相違ありません。しかし、彼女は二百年討伐できなかったアザンドラを討伐された! それは称賛に値するべきでは────うっ!」
「私語は慎め。小賢しい」
突然、ハレインの首元に騎士が剣を構える。
「確かに称賛には……な。だが、調べたところ彼女はCランク冒険者だ。才能があったとて、『賢人』級を扱うのは奇矯ではないか。人口に膾炙した風魔法使いのSランク冒険者三位でさえ『天人』級魔法使いだ。Cランクでその領域のあと一歩まで来ているのだぞ」
「で、ですが……」
「ある伝承を抜粋した。厄災の悪魔についての話だ」
「………」
「『世界の一部を滅ぼした厄災の悪魔は我ら神々によって封じられ、億万劫の眠りにつく。然れども、不思議なことに度々、人並み外れた能力を持つ人間がグランドシオルに現れるようになった。神より天賦の才を賜った者か、否。そやつは厄災の悪魔の血を引く者。人間に化けた悪魔は時が経つと自我を取り戻し、破壊の限りを尽くす。故に、奮励をせんとして力に溺れる子を処刑せよ。未来のグランドシオルを守護するため、疑わしき存在は如何なる手段も厭わず罰するべし』。これは古代にグランドシオルを創造した神々が記したものと聞く。どうだ、まさに彼女はこの伝承に合致している人物ではないか?」
「ま、待ってください! 私は悪魔の子なんかじゃありません!」
「すまないな、ツルカ=ハーラン。悪魔は時が経つまで自我を取り戻さないらしい。君がなんと言おうと信じられる根拠がないのだ」
大臣は冷笑するようにして、ツルカの弁解をいとも容易く一蹴する。
「グランドシオルの神々がおっしゃる事なのです。仮に彼女を釈放し、悪魔の子と後々に分かっては手遅れになります。グランドシオルのため、今ここでツルカ=ハーランの『処刑』を行うべきだと思うのです」
滅茶苦茶すぎる内容に、ツルカも顔を顰めて脱力する。まさに詭弁そのものだった。
「騎士団長殿もどうですか。異論はありませんか」
ツルカは最後の綱でもあるアルベルに決死の表情を向ける。アルベルは思案顔でツルカの瞳を見つめ続けるが、咄嗟に顔を背けてしまった。
「嘘だろ……ちょ、陛下もなにか、私の潔白を!」
「す、すまない。私も今回ばかりは何も言えん……」
遂にツルカは取り付く島もない状態になった。
「ん、何用だ」
一人の騎士が大臣の元へ駆け寄り、耳元で何やら囁く。
宿の受付娘──アリアナは軽く頭を下げると、ツルカの部屋からそっと退出した。
「……さてどうするか」
《まあ、仕方ないですね》
「んなもんで済むかァ────ッ! Cランク冒険者が危険種を倒しちまったんだぞ。どう言い訳すれば……!」
《知りませんよ。マスターがしたことではありませんか》
「流石にこれは予想外だ……いや、冷静に考えておけばこうなるのは予想できたか。ただ後々の事を考えてなかった……。くそ、なんで広まっちゃったんだよ」
《冒険者ギルド協会の人がいたのが不運でしたね。さすがに隠せません》
「とりあえず出来事をまとめよう。俺は三日前にみんなでクエストに行き、危険種と戦うことになった。俺は力を使い、記憶にはあんまりねえけどアザンドラを倒した……。そういえばあの女騎士、大丈夫だったのかな。何者だったんだろう、名前も聞いてねえし」
《あの方なら無事に帰還できていると思います。日を改めて礼をするとマスターがお眠りの時におっしゃっていたのですが……あの方は夜─────》
「つ、ツルカさんッ!」
その時、アリアナが扉を破るかの如くツルカの部屋に押し入った。
「な、なんだ⁉ 次はなに!」
「き、ききき、騎士団長様がご来訪です! ツルカ様に用があると────ひいっ」
怯えるアリアナに続いて、只ならぬ覇気を放つ人物がツルカの前に現れる。
「貴様がツルカ=ハーランだな。命令だ、今すぐ私と同行しろ」
間違いなくツルカはその瞬間に絶望を感じた。
「只今より、ツルカ=ハーランに対する異端審問を行う!」
グランディール王城、玉座の間に大臣の声が響き渡る。
(いやいやいや、展開が速いよ⁉ 何がどうなってこの結末に至ったんだよ!)
「ツルカ=ハーランを前に出せ」
拘束されているツルカを一人の騎士が連れ出し、国王の前に無理矢理に跪かせる。
「お主がツルカか。うむ……一見、ただの少女にしか見えんが」
まるで事の発端があやふやな国王は、どうもツルカに対して温厚であった。
見た目はちょうど背骨が徐々に前に倒れてきた老人といったところであろうか。白い顎髭を伸ばし、目尻が大きく垂れ下がった、老人ならではの相貌だ。
「では情報の再確認を行う。ビジルゴス国冒険者ギルド協会によると、彼女はCランク冒険者にも関わらず、『賢人』級破壊魔法の『デストロイヤー』を詠唱した。さらには危険種といわれる黒竜アザンドラの討伐を成し得た。間違いないな、ハレイン殿?」
大臣が書物を読み上げると、隅に立ち竦む老人を睨んだ。三日前に知り合った真ん丸とした胴が特徴的なギルド協会の老人だ。どうやら彼の名前はハレインというらしい。
「は、はい。相違ありません。しかし、彼女は二百年討伐できなかったアザンドラを討伐された! それは称賛に値するべきでは────うっ!」
「私語は慎め。小賢しい」
突然、ハレインの首元に騎士が剣を構える。
「確かに称賛には……な。だが、調べたところ彼女はCランク冒険者だ。才能があったとて、『賢人』級を扱うのは奇矯ではないか。人口に膾炙した風魔法使いのSランク冒険者三位でさえ『天人』級魔法使いだ。Cランクでその領域のあと一歩まで来ているのだぞ」
「で、ですが……」
「ある伝承を抜粋した。厄災の悪魔についての話だ」
「………」
「『世界の一部を滅ぼした厄災の悪魔は我ら神々によって封じられ、億万劫の眠りにつく。然れども、不思議なことに度々、人並み外れた能力を持つ人間がグランドシオルに現れるようになった。神より天賦の才を賜った者か、否。そやつは厄災の悪魔の血を引く者。人間に化けた悪魔は時が経つと自我を取り戻し、破壊の限りを尽くす。故に、奮励をせんとして力に溺れる子を処刑せよ。未来のグランドシオルを守護するため、疑わしき存在は如何なる手段も厭わず罰するべし』。これは古代にグランドシオルを創造した神々が記したものと聞く。どうだ、まさに彼女はこの伝承に合致している人物ではないか?」
「ま、待ってください! 私は悪魔の子なんかじゃありません!」
「すまないな、ツルカ=ハーラン。悪魔は時が経つまで自我を取り戻さないらしい。君がなんと言おうと信じられる根拠がないのだ」
大臣は冷笑するようにして、ツルカの弁解をいとも容易く一蹴する。
「グランドシオルの神々がおっしゃる事なのです。仮に彼女を釈放し、悪魔の子と後々に分かっては手遅れになります。グランドシオルのため、今ここでツルカ=ハーランの『処刑』を行うべきだと思うのです」
滅茶苦茶すぎる内容に、ツルカも顔を顰めて脱力する。まさに詭弁そのものだった。
「騎士団長殿もどうですか。異論はありませんか」
ツルカは最後の綱でもあるアルベルに決死の表情を向ける。アルベルは思案顔でツルカの瞳を見つめ続けるが、咄嗟に顔を背けてしまった。
「嘘だろ……ちょ、陛下もなにか、私の潔白を!」
「す、すまない。私も今回ばかりは何も言えん……」
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