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世界でいちばん、美しい蝶
とても嬉しいことだから
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「……懺悔します……」
口の中で夢の名残を転がしながら、純太は目を覚ました。カーテンを開けっ放しにしている窓の外がずいぶんと明るい。昨日は、唯希に付き合って夜更かしをしてしまったから、さすがに夜明け前に目を覚ますのは無理だったみたいだ。
(それにしても……)
「随分と、懐かしい夢だったね」
寝る前に唯希と話をしていた影響だろうか。ふあ、と欠伸をこぼして、純太はベッドから起き上がる。あの日のことは、夢で思い出すまでもなく、鮮明に覚えている。赤みがかった唯希の瞳が、斜陽を映して、うつくしい赤色に染まっていたことも。もう退職してしまった三枝先生の、震えた声も。赤ちゃんこと、清水聡がくれた、まっすぐな賛辞も。
なにもかもが鮮明で、愛おしい思い出だ。
(唯希は、きっと想像もしないだろうな)
あの日のことを、彼は覚えてすらいないかもしれない。
だって、彼にとってはなんでもない日だ。当たり前に正しいと信じることを、当たり前に、ただ真っすぐに主張しただけ。特別なことをしたつもりはないだろう。ましてや、純太を救ったことなんて、きっと、気づいてすらいない。
(でも、君があの日、僕を人間として扱って、それを当たり前のことして主張してくれたから、僕はこの学園の中で、人間になれたんだよ。唯希)
昇る朝日を窓越しに見つめる。あの、不器用で真面目な小鳥も、どこかでこの朝焼けを見ているのだろうか。教室か、美術科室か。昨日は唯希が寮を抜け出さなかったから、たぶん、一睡もしていない。
どうか倒れてくれるなよ、と祈る。
入学式のあの日、純太を照らし出して人間にしてくれた唯希を太陽とするならば、終一はやっぱり小鳥だ。
純太という空を飛ぶ、愛おしい隣人。
(君は、僕を神童として扱いながら、決して遠ざけなかった)
窓越しに、朝焼けの眩しさをなぞる。終一は、唯希のように、純太を人間にしてくれたわけじゃない。でも、彼は、純太の才能を認め、自身にそれがないことを嘆き、憂い、泣きわめき。それでも、追いつけないと諦めて、純太を別の土俵には乗せることは、決してしなかった。ずっと、初めて話をしたときからずっと、変わらずに、彼は純太と同じ土俵に立ってくれている。
「ふふ」
それは、なんて嬉しいことだろう。
それは、なんて喜ばしいことだろう。
「……ちょっと予定をズラされるくらい、許してあげるとも」
純太を人間にしてくれた太陽のためならば。
純太を神様と仰ぎながら、傲慢にも、人の身で神様だって刺し殺してやると牙を研ぐ愛おしい小鳥のためならば。
僕は、世界を滅ぼしたっていいんだ。
「だから早く、君たちは幸せになりたまえよ」
大切で、大好きで、愛おしくて、宝物のような二人の幸せを朝日に願って、純太は今日の悪戯についての思案を始めた。
口の中で夢の名残を転がしながら、純太は目を覚ました。カーテンを開けっ放しにしている窓の外がずいぶんと明るい。昨日は、唯希に付き合って夜更かしをしてしまったから、さすがに夜明け前に目を覚ますのは無理だったみたいだ。
(それにしても……)
「随分と、懐かしい夢だったね」
寝る前に唯希と話をしていた影響だろうか。ふあ、と欠伸をこぼして、純太はベッドから起き上がる。あの日のことは、夢で思い出すまでもなく、鮮明に覚えている。赤みがかった唯希の瞳が、斜陽を映して、うつくしい赤色に染まっていたことも。もう退職してしまった三枝先生の、震えた声も。赤ちゃんこと、清水聡がくれた、まっすぐな賛辞も。
なにもかもが鮮明で、愛おしい思い出だ。
(唯希は、きっと想像もしないだろうな)
あの日のことを、彼は覚えてすらいないかもしれない。
だって、彼にとってはなんでもない日だ。当たり前に正しいと信じることを、当たり前に、ただ真っすぐに主張しただけ。特別なことをしたつもりはないだろう。ましてや、純太を救ったことなんて、きっと、気づいてすらいない。
(でも、君があの日、僕を人間として扱って、それを当たり前のことして主張してくれたから、僕はこの学園の中で、人間になれたんだよ。唯希)
昇る朝日を窓越しに見つめる。あの、不器用で真面目な小鳥も、どこかでこの朝焼けを見ているのだろうか。教室か、美術科室か。昨日は唯希が寮を抜け出さなかったから、たぶん、一睡もしていない。
どうか倒れてくれるなよ、と祈る。
入学式のあの日、純太を照らし出して人間にしてくれた唯希を太陽とするならば、終一はやっぱり小鳥だ。
純太という空を飛ぶ、愛おしい隣人。
(君は、僕を神童として扱いながら、決して遠ざけなかった)
窓越しに、朝焼けの眩しさをなぞる。終一は、唯希のように、純太を人間にしてくれたわけじゃない。でも、彼は、純太の才能を認め、自身にそれがないことを嘆き、憂い、泣きわめき。それでも、追いつけないと諦めて、純太を別の土俵には乗せることは、決してしなかった。ずっと、初めて話をしたときからずっと、変わらずに、彼は純太と同じ土俵に立ってくれている。
「ふふ」
それは、なんて嬉しいことだろう。
それは、なんて喜ばしいことだろう。
「……ちょっと予定をズラされるくらい、許してあげるとも」
純太を人間にしてくれた太陽のためならば。
純太を神様と仰ぎながら、傲慢にも、人の身で神様だって刺し殺してやると牙を研ぐ愛おしい小鳥のためならば。
僕は、世界を滅ぼしたっていいんだ。
「だから早く、君たちは幸せになりたまえよ」
大切で、大好きで、愛おしくて、宝物のような二人の幸せを朝日に願って、純太は今日の悪戯についての思案を始めた。
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