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第1章 プロローグ
③
しおりを挟む【俺のライバル】
俺の名前は松本 健二郎。
そして、和田悠理。俺のライバルだ。
あいつは、むかーーーしの話だが初恋でもある。
今となってはむかーーーしの話だがな。
和田と会ったのは俺らが小学生の時だった。
----------------
「健二郎くんすごい、頭いいんだね」
「さすが健二郎だよな」
「おれ、かーちゃんから健二郎と同じ塾行けって言われちゃったよ」
俺の話をする時には大抵俺を褒める話しかなかった。
もちろんだろう。
このクラスじゃ、頭もいい、顔もいい、性格もいい(よく見せている)、こんな俺が悔しさなど感じることなど今まであっただろうか。
その現実を突きつけてきたのは
紛れもなく和田悠理、あいつだった。
「このクラスで1番優秀だったのは、松本くんです。みんな拍手ー!」
担任の先生がホームルームで俺を褒める。
そうだろう、そうだろう。
小学生統一テストで俺は25位という順位だったのだ。
何万人も受けた中での25位!この名誉!
俺は鼻高々に拍手を受けていた。
「ただねー、隣のクラスの和田さんがまさかの2位だったのよー。もう少しで1位も夢じゃなかったのにねー。残念でしたねー。」
おい、担任よ。何サラーっと言ってやがる。
2位だと!?
俺でさえ3ヶ月前からスパルタ塾で猛勉強しての25位だぞ。俺の通ってるスパルタ塾は勉強に関しては周辺地域では右に出る者がいないくらいに厳しいが結果を出すことで有名な塾だ。その塾に同い年で和田なんて奴はいなかった。
2位なんてありえない。
率直にそう思ったのだ。
認めん、認めんぞ。
その日の昼休み。
俺は隣のクラスへ乗り込んだ。
そう、和田に会うために。
「おい、和田と言う奴はいるか。」
クラスの奴らは昼休み中だからか賑やかだったが、俺のこの一言でみんなが同じ方向を向いた。
クラス後方窓際で本を読む女。
それが和田悠理だった。
黒髪、ショートカットに
切れ目が特徴の整った顔の持ち主だった。
そこだけは騒がしいクラス内でも時間がゆっくり流れているようなそんな雰囲気だった。
悠理はゆっくりと本から顔を外すとこっちを見た。
「……私だけど」
静かに呟いた。
一瞬俺は彼女の綺麗さに見とれてしまったが、あくまで彼女の順位が気になって乗り込んだのだ、本来の目的を忘れてはいけない。
前ドアから俺は黒板前を通り和田の元へ向かう。
「俺は1組の松本健二郎だ。お前は和田といったな、お前に聞きたいことがーーー…」
「しー、静かにして。真司が起きちゃう」
彼女は俺の口の前に指を置き、俺の言葉を制止した。
「………/////」
こんなことされたのは初めてだった。
こんな心臓の高鳴り、気のせい、気のせいだ。
「真司が起きたら、せっかくの寝顔が見れない。勿体無いことしたくないの」
「ご、ごめん」
「要件は何? くだらないことなら後にして」
彼女は不機嫌そうに話してくる。
「お前、統一テストで何位だった」
「2位」
「んな、そんなはずが…!?」
「うるさい、真司が起きるっていったでしょ」
途端に彼女の綺麗な顔の眉間にシワがよる。
「ご、ごめん」
すると彼女が机の中から紙一枚取り出して、渡してきた。統一テストの結果の紙だった。
確かに2位だった。
各教科満点、唯一社会だけ95点だった。
どういうことだ、これは。
俺は25位で彼女は2位。
完全なる敗北だった。
思わず俺は和田に近寄り声を荒げる。
「お前どこの塾に行ってるんだ。特別な勉強方法があれば俺に…」
「うっ…ん…? 悠理……どう…した??」
悠理の前の席に座り、悠理の机に突っ伏して寝ていた真司が起きたようだ。
毎日この時間は真司が昼寝する時間だ。
たくさん育って、私より大きくなるんだと。かわいいなぁ、真司は。
「真司、おはよう。起こしてごめんね。」
和田が真司と言う奴に優しく声をかける。
健二郎の時と態度が違うのが一目でわかる。
真司と言う奴は起きた後、俺の顔を見て
「ううん、大丈夫。悠理宛にお客さんなんて珍しいな」
「すぐ終わる要件だから」
「そっかー、ふーん。」
彼は彼女ににっこり笑い、俺の方を向き、あくびをすると、トイレ行ってくるーと席を外してしまった。
彼がクラスから出るまでを確認すると彼女は
「私は塾には行ってない。自学でどうにかしてるしなんなら真司の勉強をいつも見てるだけ。用がそれだけなら帰って」
彼女は必要事項だけを健二郎に回答して本に戻った。
なんなんだこの女。
健二郎にとって今までにないタイプの女の子、それが和田悠理だった。
正直あいつが初恋だと思うと今となっては恥ずかしい。
そしてなんの縁なのか分からないが高校までずーっと一緒なのだ。
そして今でもライバルである。
----------------
健二郎は今回の和田 悠理のテストの結果には呆れていた。
何が本を読んでて点数を落としただと、
この高校2年の大事な時期に、、、
このテストの結果で大学の推薦だって左右されるかもしれないんだぞ。
それよりも読書を優先するなど、もともとズレてる奴だと認識していたが勉強に関しては認めていたのだ。正々堂々と闘えるライバルだと思っていたのに、だ。
そのライバルだと思っていた奴に、手を抜かれた。そのことが健二郎にとっては最も悔しかった。
(あいつの本気は、俺相手じゃ出す気にもなれないという事なのか…)
ふとそんな考えが浮かんだ。
(もしも真司が関わることなら、あいつは本気を出すのだろうか)
悔しいな。あいつへの思いなんて、あっという間に消えたと思っていたのにーーー…
もうすぐ、各クラス三者面談が始まる。
あいつの親は医者と弁護士だ。
今回の結果なんて許すはずがない。
もちろん、三者面談では今回のテストのことも触れてくるだろう。
あいつがどうなるのか、気になりながらもワクワクしている自分がいた。
(あーー、早く三者面談が始まらねーかな。)
健二郎は、自身の初恋の思い出に蓋をして、三者面談をことを考えると、思わず自席にてニヤついてしまった。
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