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第1章 プロローグ
④
しおりを挟むその日、悠理と真司は同じ日に
三者面談を予定していた。
先に悠理の三者面談、
そのあと真司の順となる。
放課後のこと---
悠理は相変わらず自分の席で本を読んでいた。面談まで時間があるのだ。
「悠理、俺の三者面談遅くなりそうだし、先帰ってろよ」
家が隣同士なだけにいつも一緒に帰ってるが、真司としては流石に遅くなりそうな時間帯に悠理を帰すわけにもいかず、声をかけたのだ。
「ううん、教室で本読んで待ってるから。終わったら教室に寄ってね」
「まじお前んとこと違って俺長くなるから。。。あははー、笑えねー。泣」
「それでも待つよ。一緒に帰ろう」
食い下がってくる悠理。
ちょっと可愛いところあんじゃん。
思わず顔がにやけそうになる。
(いけない、いけない。話を逸らさないと。)
「ま、まだその異世界ブームかよ。飽きねーのな。」
思わず悠理が読んでいた本を指差して話題にする。
「うん。後に役に立つと思うから」
本をパラパラとめくりながら、悲しい顔をして悠理が呟く。
(あぁ、綺麗だな…)
窓際の席で、右側の髪を耳にかけると、本をゆっくりめくりながら伏し目がちに本を読む姿。小さい頃から見ていたその姿がオレンジの夕日に染まってとても綺麗だった。
いつも近くで見てる姿、でもどこか遠くに行ってしまいそうな儚さがあるその姿に思わず俺は手を伸ばしかけるーーー…
「悠理、俺さ……」
「……??」
ガラガラ…
「お邪魔だったかな?」
そう言ってドアを開けたのは
晶馬さん、悠理のお兄さんだった。
「い、いえ。別に…////」
俺は慌てて手を引っ込めてポッケに突っ込む。
(何しようとしてたんだ、俺ーーー/////)
晶馬さん来なかったら、俺は悠理に…
思わず悠理を方を見てしまう。
悠理はよく分かってなかったのか?マークを浮かべて、俺の方を見ている。首を傾げた。
(あぁ、もう。首を傾げた姿も可愛い)
改めてこの恋心を自覚する。
俺、青春してますわ。はい。
「悠理、そろそろ面談時間でしょ。行こうか」
「そうだった。真司行ってくるね」
「おう、いってら」
ちょっと不躾な見送りをして、
和田兄妹の姿がドアのガラスから見えなくなったのを確認すると俺は床に崩れた。
(思わず告白しそうだった…よな。俺。)
恋心というものは自覚すればするほど
こそばゆいものだ。
そしていきなり溢れてくる。
(でも、今はまだ……その時じゃない。)
悠理を助け出すにはまだ俺自身の力が足りない。
安易に手を伸ばしても、絡め取られて終わるだけだ。
(……悠理を守れる力が欲しい)
腕と手のひらを伸ばして見つめる。
(もうあんな顔、絶対させねーから。)
そう、真司は思うのだった。
----------------
「真司くんとなんの話をしてたの?」
「兄貴が知らなくてもいいこと」
「あいも変わらずだね。僕の妹は」
晶馬は思わず笑って見せた。
「あと、成績の件、お父さんとお母さんには伝えてあるよ。近々悠理に直接連絡行くんじゃないかな」
むすっとした顔でちょっと不機嫌になる妹。すまんね、兄としては可愛いとしか思わないよ。その顔。
父と母は海外を飛び回っているので基本連絡はメールだ。そして時々日本の自宅に帰ってきては成績に関しての説教がある。
と言っても年に数回だから、
悠理も僕もイベントと思うようにしている。
そうじゃなきゃ、僕はともかく悠理の心は壊れてしまう。
(今も真司くんがいなきゃ、こんなにも脆く見える)
正直、晶馬は妹の悠理に対して自慢できるほどお兄さんをやっていない。
父と母の期待を自分1人で受けているのだから、自分を守ることで精一杯なのだ。
悠理もそれを自覚しているのか、晶馬ではなく真司を頼っている。
晶馬もそれを認めており、定期的に真司から悠理の普段の様子を聞いているのだ。
(最近また何かあったようだな。真司くんに聞いておこう)
面談に関しては、ものの10分で終わった。
今回のテストで成績は落ちたが、先生方もたまにはね、という感覚だった。
(これだけゆるい学校だからか、ある意味得したな)
隣の席で、悠理は早く終わらせたそうにしているのがわかる。
(妹の頼みだもんな…)
家からの連絡は特にないものとして
さっさと終わらせることとした。
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