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第2章 俺と幼馴染と異世界
15.
しおりを挟む俺は悠理を置いて街に繰り出した。
夜の風が気持ちいい。
こんなにも街は人で溢れかえり、
休みの前のタイミングだからか
華やかさと煩さがあるにも関わらず
俺の気持ちは沈みきっていた。
もっと静かなところを求めて
俺はフラフラしていた。
街から外れた住宅街の一角に広場があった。
日中は子供達がたくさん遊んでいるのだろう
砂場と思われる場所に子供用のおもちゃがそのまま置かれている。
俺はベンチに座って空を見上げる。
考えるために外に出たのに
(今は何も考えたくないな………)
この世界の空は星が綺麗だ。
もしかしたらこの見えている星の中に
地球があるのかもしれない。っておもったが、
地球って別に自分で光を出しているわけじゃないから、
この世界じゃ見えないんだろうな。
無駄に知識を得ていた俺はロマンチックな気持ちにはなれなかった。
空を眺めていたら自分はなんて小さい男なのだろうと
(まぁ、実際小せえ男なんだけどな…)
こう考えることでしか俺は現実逃避ができないのだ。
「おい………生きてるか………おい」
俺はいつの間にか閉じていた目を開けた。
するとベンチの後ろ側から覗き込むように青年が俺を見ている。
「うわぁあぁぁ」
「すまん、死んでるかと思ってよ」
その青年は俺と同じくらいの年だろうか。
そして、ケモ耳と尻尾。
「お前獣人を見たことないのか?」
いつの間にか俺はじーっと見ていたらしい。
「この国じゃ獣人なんて珍しくねーぞ」
「ご、ごめん。」
「なぁ、お前冒険者だろ?結構魔物を倒したりしてんのか?」
その青年が目を輝かせながら聞いてくる。
そしていつの間にかベンチの隣に座っている。
「なんで冒険者って分かったんだよ」
「いや、だってお前プレート付けてるじゃん」
確かに!
「俺は確かに冒険者だけど、
まだクエストとかはやったことない初心者だ」
「ってことは、まだファミリーに所属してないってことか?なーなー、今度クエスト行くときに俺も連れっててくれよ!なぁ!」
「いやだよ、責任取れないし」
「別に分け前寄越せってわけじゃない。経験が欲しいんだ。」
こいつグイグイくるなぁ。
「こう見えても俺は〔リュウザン〕で働いてるんだぜ!しかも3番弟子!いい物件だと思うけど??」
知らないよ。グイグイくるなよ。
だが、正直頭が疲れていた俺は青年のグイグイさを避けれるほどの元気はなかった。
「おれはその〔リュウザン〕がどれほどのものか知らないんだ。
悪いが他を当たってくれ。」
「解体屋〔リュウザン〕を知らないなんて
お前ほんとに冒険者なりたてなんだな」
(だからそう言ってるじゃねーか。)
心の中で突っ込む。
「〔リュウザン〕は解体屋の専門店だ。
この国で動いている冒険者達は
みんな俺らのところに魔物や動物を持ってくる。
なんてったって師匠達の解体さばきは目で追えねーくらい凄いんだ」
確かジュベルさんが解体屋とは仲良くしておけと言っていたな。
彼らの仕事次第でギルドでの買取金額が変わるとも言っていたか。
ひよっこの俺としてはチャンスなのかもしれないが。なぜ今なんだ、と俺は思っていた。
「俺はある程度の技術は持っているが経験がないんだ。だから一緒に行ってくれる冒険者を探してたところだったんだよ。けどよー、ファミリーとかに入ってるとメンバー登録とか大変だし、いろんな冒険者について行って、経験したいんだよ。
冒険者達がどうやって殺すのかも一種の勉強だからな」
だからいいだろ!な!
青年は俺の肩を掴み前後に振る。
やめろ、やめてくれ。首がもげる。
「わかった、分かったから」
俺は、〈内容はわかったから〉の意味合いで返信したつもりが
彼に誤解を与えてしまったようだ。
「ほんとか!いい奴だな!
同じ歳くらいだし仲良くしようぜ!
俺はフォースだ。お前は?」
「俺はシンジだ」
「んじゃ、早速明日クエストに行こうぜ!
そうだな9時にギルド〔アルジューム〕で!」
お前がくるまで待ってるからなー。
と言い残して、彼は帰ってしまった。
あ、これ、、、まずいパターンじゃね。
悠理のこともフォースに伝えてないし、
悠理に言わずに決めちまったようなもんだ。
ただでさえ、色々考えたいのに
別の問題抱えちまったじゃねーか。俺のアホ。
なんでこうも問題って重なるかなぁ。
1つ1つの問題は簡単でも重なったりすると重くなるじゃん。
今回は俺からしたら1つ1つ全部重いんだよ?
胸焼けですよ。あーームカムカする。
俺は、両手で目の当たりを抑えながら空を仰ぐ。
(なーーーーんも考えたくない)
結局俺は何も決められず、考えられず、宿に戻った。
悠理はまだ寝ていた。
一安心した俺はシャワーを浴びてベットに入る。
頭がパンクした俺はとりあえず無理やりにでも目を閉じて
眠りにつくことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フォースとの約束をしていたが
正直行く気にはなれなかった。
それでも、約束は約束だ。
悠理にはなんとか納得してもらって一緒に来てもらおう。
そうしよう。それがベストだ。
起きながら悠理の方を向く、まだ彼女は寝ているようだ。
(やっぱり寝顔可愛い。。。)
朝起きて好きなやつの寝顔が見れるって最高だぞって、
転移前の非リア達に全力で自慢したい。
そして時計を見た。8:30。
まさかな、と思ってもう一回見る。8:30。
いやいや、待ち合わせ9時だよな!
完璧寝坊だ!
悠理を揺さぶって起こそうとするも………起きない!?
息しているのか確認する。
多分寝ているだけのようだ。
しょうがないシュリアさん達に伝えて、
俺だけでも行くか。
心細いよー。アルラくんに言ったらついてきてくれるかなぁ。←
俺は支度して、アルシュさんに見立ててもらった
魔法具類を身につけたことを確認して、食堂へ急いだ。
「アルシュさん、あの、、、悠理が、、まだ起きなくて、、」
「昨日ローリエちゃんが1日にかかるって言ってたわ。
本来なら半日くらいらしいけど、咄嗟に強く魔法かけちゃったて。」
んなーーーーーー!!!!
「とりあえず俺約束があって、、、ギルドに行くので、
悠理が起きたら伝えていただけますか?」
「わ、わかったわ、ご飯は?」
「すみません。
約束間に合わなくなっちゃうので、ごめんなさい!」
「気をつけて!行ってらっしゃい!」
シュリアさんの言葉を背中で聴きながら
俺はギルドへと急いだ。
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