俺と幼馴染だけ、異世界の別の場所に転移したそうです

ふじ

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第3章 勇者たちの行方

4.

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松本と別れたあと
俺は安藤と遠藤とさらに呼び寄せた。

「夜遅いし、寝たいんだけど」

「いや、お前の働きで明日の健二郎が殺されずに済むかどうかの話なんだ、悪いが付き合ってくれよ」

「もしかして明日何かしら姫さんから仕掛けてくると?」

「あぁ、俺はそう踏んでいる。先手必勝ってやつだろうな」

「だとしても、どうやって?」

「お前らと合流する前に、俺とアイツは姫様に会ってるんだ。正確には健二郎に会いにきたって感じだろうがな。そこで姫さんは健二郎にって言ったんだ。おかしくねぇか?個々のステータスは本人にしか見えない、はずが姫さんは他人のステータスが分かっている」

「何かしらの魔法もしくは魔法道具といったものを使っている、、、と?」

「あぁ。俺はそう考えるね」

「さっきの宴会の様子から人間関係的なのから予想したとかって可能性は?」

「無きにしも非ずだが、あの宴会の時の健二郎は、変にクラスメイトの奴らと絡むことはなかった。お前らも分かってるだろ?」

「うん」
2人が頷く。

「たしかに私が後ろに回り込んだ時も、ずっと1人だった」

「たぶん、姫さんの話に違和感を感じたから、わざと離れていたんだと思う。それは佐々木くんもそうだったろ?」

「あぁ、俺もだ。んで、話は戻すが、姫さんとの1対1の時に健二郎は勇者じゃないといったんだ。たぶん姫さん的にはそれを確認したいと思うはずだ」

「けど、そんなの勇者じゃなくてもまとめて殺す予定なら関係ないんじゃないのか?」

「確かにまとめて殺す、それは変わらないと思うが、戦う時には前衛と後衛がある。もっと細かな策略とかあると思うが、前衛を先に殺して後衛を殺すってやり方もある。それかその逆」

「なるほどな、攻撃陣営を殺せば必然的に守備陣営も結果として自滅していく、逆もまた然り。、、だが、それを姫さんが考えるか?」

「結構若そうな姫さんだよ?そこまでの戦いの知識なんてあるのかな?」

「確かに、けど見た目だけだろ。現に俺たちに言葉で操りをかけて来ようとするやつだ。身代わりなんかがいてもおかしくねぇよ」

安藤と遠藤、2人も黙ってしまった。

(正直、健二郎をここで殺されては困る。国外に出た際の戦いの前衛になる予定なんだからよ…)

「正直、お前の話をどこまで信じるか。だよな。」
口を開いたのは遠藤だった。

「俺も健二郎が勇者だとバレた後の方が怖いと思ってはいるから、協力しよう。」

安藤は正直2人がどこまで考えて発言しているのか、考えられてはいなかった。
(こんなに人を疑って、出来事を予想して動かないといけないのね…)
直感で生きてきたような安藤には、この世界を生き抜くことは難しいかもしれない。
(それでも私は元の世界に帰る.そう決めたもの)

「私はよく分からないけど、健二郎がターゲットになるのは頂けない。仲間だもの。私は何をすれば良いの?」

「俺としては何かしらの理由をつけて、俺ら全員のステータスを確認しようとしてくると予想している。そういうことがあった場合に備えて、安藤。お前他人の存在を消すようなスキルは持ってるか?」

「他人の存在を消す?殺すってこと?」

「ちげーよ。お前、気配殺して連絡手段取れるよな?それを他人に施す事ができるのか聞いてるんだよ」

「私の持つこの《気配消去》ってやつね。他人と一緒に使ったことないから分かんない」

「ちょっと俺に触って、その気配消去ってやつを使ってくれ」

安藤は佐々木の腕を触る。
遠藤はイラっとしたが、仕方ないと心を鎮める。

「気配消去」

 2人とも
実際にはその場にいるのだが、のだ。

「遠藤、俺たちが見えるか?」

「いや、見えない」
遠藤も驚いていた。

「まさか、こんなうまくいくとはな…」
思わずニヤリと笑う。

「もういい?」

安藤は佐々木の腕から離れる。
すると2人とも見えるようになった。

「これで分かったのは、安藤に触れて気配消去を使えば、健二郎をできる」

「けど、他のクラスメイトからいないってバレないか?」

「その時は俺のスキル《幻影》でどうにかする」
佐々木には切り札となるスキルがあった。
それは《幻影》というスキル。
人やものをあたかもそこにいるように映すことのできるスキルだ。これが何故俺のスキルなのかは話からねぇ。けど、あるもんは使う。そうやって生き延びるしかねぇ。

「俺はこの幻影で安藤と健二郎の幻影を作り、他のやつらを騙す。」

「これで明日はとりあえず生き延びるぞ」

----------

翌日、俺たちは国王に呼ばれて
召喚されたあの場所へと来ていた。

「皆さま、昨日はゆっくりおやすみ頂けましたか?」

エリーゼ姫が上手から現れて優しく声をかける。
そもそも国王に呼ばれたはずが、エリーゼ姫が仕切っているのはおかしくないか?
そう言うものなのか??

「昨日の今日で申し訳ないのですが、さっそく摩耗討伐に向けて動いていきたいと思います」

「ちょっといいか?」
佐々木が手を上げた。

「素朴な疑問なんですが、、、この国のことも、ましてはこの世界のことも知らない自分らが、本当に魔王なんて倒せるんですかねぇ…?」

佐々木がエリーゼ姫に声をかける。

「それに、倒すっても相手の弱点とか普通知ってないと…剣も弓も魔法も知らない俺らに無知のままと言ってるんですか?」

他のクラスメイトたちがざわつく。
佐々木、うまくクラスメイトを操ったか。

「たしかに安易に言ってしまいましたね。ここにお詫びいたします。もちろん我々は皆さまをフォローすべくその体制を整えております」

「どんな体制なんでしょうか?
俺たちにご説明くださいませんか?」

わざと煽るような言い方を…
けど、俺たちが知りたかったことがそこにある。
言い方は別としても道は間違っていない。

「まずは皆さまをグループ分けさせていただきます。
戦士、魔術師、治癒師、隠密者、多くはこの4つです。あとはそれぞれのグループで研鑽していただきます」

以上です。と言った顔をしているな。
隼也は大まか予想通りの回答が返ってきたと思っていた。
(上の者など所詮現場には立たないのだ、これくらいのざっくりでしか認識していないのはわかっていた。)
そして、佐々木、安藤、遠藤は昨日の予想通りの流れになっていると感じた。
(((術式の開始は、姫さんが動きをした時…)))

「各グループに分かれての訓練と言うことですが、それぞれ具体的にご説明頂けますか?
俺らの中にはどう言った力を身につける必要があるのかが分からないやつもいると思うんでね。それにお互い知っていた方が攻撃連携を取るときにもいいと思うんですよね?いかがでしょ。
姫様からの説明が出来ないのであれば、各グループで訓練の指揮を執る方からでもいいのですが?」

姫様の周りについている雰囲気が変わった。
佐々木の煽りに対してイラついているのだろうか。


(俺は戦士、佐々木は魔術師か治癒師、遠藤は魔術師、安藤が隠密者グループか…)

うまく分散出来そうなのが助かるな。

「各グループでの訓練は我々から話そう」
壇上右手側にいた鎧を着た恰幅のいい男といかにも魔術師の風体をしているもの、そして、忍者の格好をした男が並んでいた。

「我々は姫様からの命により、君たちを鍛えることになった。王国騎士、第3騎士団長:イブロフだ。主に戦士たちの訓練を執り行う。
まずは各武器の扱い方、そして基礎体力を身につけてもらう。そのあと対人、対物での戦い方を学んでもらう。もちろん盾もあるため組み合わせた戦い方を学んでもらう」

「私は魔術師の、カルデリアと言います。
私は攻撃魔法、防護魔法を中心に学んでいただきます。魔力向上もやっていきます。あとは使えそうな日用魔法も触れていきます。遠隔魔法がメインとなりますが、多少の武術も必要となりますのでそれもやっていきます」

「俺は盗賊スキルを持つナルシャだ。隠密者グループでは、危険察知と魔力感知をメインに接近戦での戦い方を学んでもらう。もちろん基礎体力は必要になるので組み合わせてやっていく」

そして、治癒師グループは…

「治癒師グループは私が担当いたします。
主に魔法を用いての治癒となりますので、魔力の向上、そして魔法を用いての治療をするのか否かの判断について、あとは簡単な看護方法などをやっていきますわ」

まさか、エリーゼ姫が来るとは。

「わざわざご教示くださるのですか?」

「本来は別の担当をと思っていたのですが、私もこの国のために戦っていただく僭越ながら…」

他のクラスメイト達が
みんな姫様の思いやりに心を打たれたようだ…

(何をする気なんだ、あの姫さんは…)
佐々木は思わず唇を噛み締めた。

「それではグループ分けも兼ねて皆様のステータスをさせていただきますね」

「それが狙いかよ」
くそ、先手を打たれた。

「こちらの水晶に手を触れてステータスオープンと仰ってください、するとこちらにステータスが浮かび上がりますので」

これじゃ俺がバレてしまう。
バレてしまったら真っ先に殺される…
どうしたら…

「松本くん、聞こえる?」
後ろから声がする、この声は安藤だ。

「今から松本くんを私のスキルで隠すわ、腕を触るから。ノーリアクションでよろしく」

すると安藤が俺に触る。
俺の視界は変わらないが、周りからは俺の姿が消えた。

そして佐々木の幻影スキルを発動。
至近距離にて、安藤と健二郎を映す。

(これで何とか持ってくれ…)

---------

(を聞いた時にスキルを使ったか…しかも2人)

ガルデリオは、気づいていた。
が、あえてをした。

他の2名が気づいたかどうかは分からないが
(考えたものだな…)

姫さんのに気づいたのがいるという事だ。

(これは面白くなりそうだな…)
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