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第3章 勇者たちの行方
9.
しおりを挟む「楽しい話って、本気で言ってんのかよ。この先生」
佐々木、安藤、三橋も闘技場へ降りてくる。
「勘違いしないで欲しいんだが、僕は姫様の仲間じゃない。
現にそこにいる2人を他のクラスメイトよりも強くしてあげたでしょ?
それに三橋さんには魔法付与の本を渡したし、
安藤さんがもつ気配を消すスキルは使い方次第で攻撃も防御も幅が広がるから極めなさいって
アドバイスしたし、松本くんは中々タイミングが無くてね、、ごめんよ」
俺以外がみんな心当たりがある。
「乗っ取りとか言っていたのは、もしかして姫様が乗っ取られているってことですか?」
「「「「!?」」」」
「松本くんは勘がいいんだね。そうさ、今の姫様は姫様じゃない。魔人が姫様になりすましてるんだよ」
「なんでそんなことがわかるんだよ。信じられるか?」
「僕は姫様が生まれる前からこの国に使えてきた。なんなら、何世代も前からね」
「そんな、何世代も前からなんて、ありえるかよ」
「あり得るのさ、魔女ならね」
「魔女って女だけじゃねーのか」
「魔女って言うのは、とある悪魔と契約し犠牲を出すことができたものだけに
与えられる者なんだよ。男も女も関係ないんだ」
「ってことは、ガルデリオ先生は契約して犠牲を払ったってことですか?」
「あぁ、僕は体を支払ったよ」
ガルデリオはゆっくり笑う。
「??」
するとガルデリオは自身の着ている脱いで見せた。
安藤と三橋はお互いに見ないように目を瞑る。
俺たちはその先生の姿を見て唖然とした。
「これが代償さ」
ガルデリオの体は中心部に手術を受けた切られたような跡がまっすぐついており、
なのに腹部の部分には内臓がないような皮と骨だけの状況だった。
それに男性ならついているであろうあれも無いのだ。
俺たちは絶句した。
「こう見えても食事をしなくて済むし、性行為もしなくていい。中々に便利な体になった」
ガルデリオは服を着た。
(流石にここまで見せることもなかったかな…)
「さて、改めて国外逃亡の計画を立てようか!
けどその前に結界を張らないとね!
姫様お抱えの魔人達がいつ気づくか分からないから」
「改めて姫様は何者なんだ?」
佐々木はガルデリオ先生の体のことを早く忘れたかった。
そのためにも本来の話をしなければならない。
「佐々木くんのその切り替えの早さ、すごいですね。
みなさんも是非とも見習ってください」
ガルデリオは改めてにっこり笑って話を進めていく。
「私も何百年も生きていて久しぶりなので
色々調べておりましたが、どうやら姫様は魔人とやらが演じているようです」
「魔人ってことは、魔王の家来か?」
「えぇ、そうです。ただ、魔人を殺すには彼らの本来の名前が必要になるのです。
今それがわからない以上、安易に姫様を殺すわけには行きません」
「だからっと言って泳がせたままでいいのかよ」
「むしろワザとそうしているのですか」
「素晴らしい。佐々木くんは機転の速さはありますが
松本くんの方が思考能力が深いようですね」
「とりあえず今君たち5人が一斉姫様のところに向かったとて
たぶん一蹴り、、、、いや近づくことなく殺されるでしょう。
魔人とはそういうものです」
「そんな奴が王宮にいて、大丈夫なのかよ。」
回答なんて分かっているのに、、、
「えぇ、ダメでしょうね。
私もそろそろつぎの働き先を決めないと…。
それに、あの姫様は、国王の娘に対する甘さを使って国王を操っている。本来この国は勇者召喚を行うはずではなかった」
まさか、、、そんな。俺たちは巻き込まれただけなのか。
あの姫様の思惑の駒でしかないと言うことか。
「本来ならオウガマヤ国が君達を召喚するはずだったんだ…。まぁいい。
起こってしまったことは仕方がない。
そして、君達が追い求める子達もたぶん、オウガマヤ国にいるだろう」
「和田と深見が!?」
「まぁ、これは勘ですがね」
勘かよ。なんなんだこの先生は。
「あと、ちょっとお手間ですが
全員で僕に向かってきてくれるかな?全力で」
「それは、口封じということか?」
「いや、君達の実力を知りたいんだ。
単に外に出したとて、魔物に殺されては君達も無駄死にになってしまうからね」
「俺たちを外に出してくれる事に、協力するメリットは?
正直ガルデリオ先生一人で逃げることも可能では?」
「君は、本当によく考えるね。頭がいいのは嫌いじゃないよ。
正直国外へ逃げたとて、僕くらい王宮の情報に詳しくなってしまうと追っ手がやってくるだろう。
追い払うのは容易いんだが、何年も何年も追われるのは流石にね。長生きも辛いもんだよ。
という事で、僕は死んだ事にしてこの国から逃げるか
国が崩壊するタイミングでこの国に愛想が尽きたとして国から出るか。
僕もね安全に出て行きたいんだよ。
君達を死んだということにして逃す方が容易いなんて
僕も自分で自分の首を締めてしまったよ。情けないねぇ」
「俺たちと一緒に死んだ事にして逃げるのは?」
「僕は魔王討伐に行かないし行ってしまったら
この国の書類関係が進まなくなるからね。それは貴族らが許さないだろう。
それにちょっとやそっとじゃ、僕が死なないことを彼らは知っている。
ほんと面倒な事になった」
「さぁ、僕の話はここまでで充分かな。んじゃ、始めようか♪」
ガルデリオ先生が両手で手を叩くと空気が変わる。
結局のところ、俺らはこの先生の協力がないと国外逃亡は難しいし
ここで本気で先生に立ち向かわないといけない。
俺たちは各々構える。
「「「「「よ、よろしくお願いします!!!!」」」」」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ものの1分だった。
そんなにかと思うが、そんなにだった。
しかも俺たちが重症の中
ガルデリオ先生は一歩も動いていないのだ。
俺と三橋で前後に回り同時攻撃をしたが見事に上半身をずらすだけで
交わされてほぼ相撃ちとなった。
佐々木と遠藤が魔術をかけようとしたが
先生からの防御魔法で全部かわされた。そしてカウンターを受けた。
正直先生としては、目をかけた2人がこのザマで悲しかったようだ。
安藤に関して気配消去で近づいて一発!という策略だったようだが、
漏れ出る微量の気配に気づかれ、武術で負けた。
「話になりませんね。よくこれで国外逃亡を計画したものだ」
先生は治癒魔法で俺たちを即座に治療した。
自分たちもこんなに弱いとは思わなかった。
少しでも訓練を通して強くなったと持っていたがまだまだだ。
個々でも全体としても弱い。
(これが現実か………)
「そうだな、これから各グループの訓練後に僕の特別訓練を施そう。
国外逃亡の計画も……考えているが、今は君らの力が足りなすぎるし
そっちに集中して貰いたいからね」
(朝から晩までこの先生と一緒かよ)
「佐々木くん、君はすぐに顔に出るね。
僕は朝から晩まで一緒に入れて嬉しいよ」
「うへぇ。キモい。」
「ただ、他の生徒にはどう説明すれば?」
「その必要はないよ。僕の人形達がそれっぽく動いていてくれるから」
そして出てきたのは俺たちと瓜二つの人形だった。
これらは半径300m以内であれば先生の思うがままに動かせるらしい。
「もしかしてこれを使って国街逃亡するのですか?」
俺は先生に聞く。
「よく気づいたね。さすが!だが、これから先はまだ言えないんだ」
ごめんね。とウィンクされた。
確かにキモいな。これは。
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