俺と幼馴染だけ、異世界の別の場所に転移したそうです

ふじ

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第3章 勇者たちの行方

8.

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正直昨日今日で何かできるほど、
自分たちは持ち物も武器も何も持っていなかった。

出来ることをやるしかない。

安藤は仲のいいクラスメイトが治癒グループにいるので、
あたかも軽い怪我したという名目でポーションを作ってもらっていた。
また怪我するかもしれないから出来るだけたくさん作って欲しいとお願いしておいた。

佐々木と遠藤は、俺ら全員のステータスを確認し戦略を立てていた。
と言っても、であるから地図とにらめっこだ。
古い地図ではあるが役にたつだろう。

三橋と安藤と俺は、前に騎士団の方々が教えてくれた訓練用の武器庫に潜入していた。
正直どんな武器がいいのかわからないが、
短剣と長剣、また魔術師用の杖や防護ブレスレットや
魔力付与のアクセサリーなど身につけられるものは片っ端から貰っていった。

(こんなガバガバな状態でいいのかよ…)
とも思ったが、こちらとしては好都合だ。

どうやら、安藤に触れられているものに関しては
人でも物でも気配を消すことができるらしい。
なんとも便利なスキルだ。
このまま逃げられるんじゃね?って思ったが、
逃げた後に自分たちのことを調べられたら困るのだ。

だから、できればとして国外へ逃げたかった。
だが、その代わりの死体の用意などは自分たちじゃできない。
だからこそ、協力者が必要だった。

俺たちは武器庫から離れた広場まで来てから、安藤のスキルを解いた。

「一回で約1時間は持ちそう!新記録更新だわ」
「沙織ちゃんすごい!」
「みんなの分の必要そうなものはとりあえず持ってこれた。あとは食料とかだな…」
「ポーションは由美に作ってもらったのを15本手に入れた。たぶん、大丈夫だと思う!」

俺たちは自分たちの成果に満足していた。
その時だった

「けんじろーう。どこにいるのー??」

洋子の声だった。
思わずに茂みの中に隠れる俺たち、
(なんでここに持田がいるんだ??)

正直午後のこの時間に持田がいるなんてことは今までなかった。

(もしかして、気づかれた…)
安藤も三橋も空気を察した。

「私が恭子とこれらの武器を隠しておくから、健二郎が洋子をどっかに連れてって!それか追っ払ってよ」
「お、俺が!?」
「あんたを探してるんだから、あんたが行くべきでしょ?」
うんうん。と三橋も頷く。

俺苦手なんだよなー、持田のこと。
あからさまな好意がちょっとなー。
最近は訓練もあってか、距離おけてたのにー…。

「俺はここだけど?」
茂みから出て、俺は持田に声をかける。

「どうした?何かあったか?」
「ううん、なんでもないんだけど。私ね!治癒グループに居るんだけど、
から好きな人を思う気持ちが治癒に繋がるって言われてさ、
ずーっと健二郎のこと考えてたんだよ?」

(うん。それが??としか言えない話の内容に俺は戸惑った)

持田は今までもこうやって好意を示してくれていた。
初めは嬉しいと思っていた時期もあったが、
今となってはウザいとしか感じなくなっていた。

「そ、そうか…」
「それでね、があなたが勇者様を守るのです。
って、治癒グループの中で1番優秀な私が勇者様を治すんだって!
健二郎、私が言いたいことわかるでしょ??」
「分かりはするが、俺は戦士だから、、勇者を探しているなら
他をあたってみたらどうだ?ほら、川崎とか。望月とか。」
「違うの!が教えてくれたんだ、自分だけの勇者を見つけたら、
ずーっと付いていくのが愛だって!健二郎が戦士とか勇者じゃないとか関係ないの!
私の勇者は健二郎だもん!だから、これからは私いつでも健二郎を守れるように
ずっとそばにいたいなーと思って、ダメかな?
それには私たちお似合いだって!嬉しくなっちゃった!」

ダメに決まってる!!
失礼だがこんなお荷物持ってけねーぞ。

「まだ戦いまでに時間もあるから、まだまだ後でもいいんじゃないか??」
「ううん、思いついたら吉日だよ?早速動かないと!」
「いや、ちょっとそれは…」
俺は茂みの方を見るが、気配消去を使っている
安藤と三橋がそこにいるのかどうかも俺には分からなかった。

「とりあえず、今日は俺は集中したいんだ。付き添うのは明日からでもいいか?」

(さっさと追い払わないと…)

「健二郎は気になる人いないの?」
女子ってすぐこう言う話好きだよなー。

「俺は、、、いない。
この世界に追いつくのに必死だからな。だから気持ちには答えられない。」
「それでも、私が健二郎を守るんだから。健二郎を守れるのは私だけなんだから。
健二郎が望まなくても私は健二郎についていくから。
それがが教えてくれた私たちの未来なんだから!!」
そういうと、持田は城の方へ戻っていった。

ちょっと恐ろしいくらいに執着されているのに気づいた。
もっと、早い段階で思いを切っておくべきだったか…
俺は罪悪感に苛まれた。

「熱々だねー」
「情熱的すぎて、見てて思わず手に汗握ったよー」

呑気なことを言う2人は、俺と持田の事を、茂みのところで見守っていたらしい。←
助けろよ!って思ったが、変に茂みから出る方がおかしいから
助けられなかった(ニヤリ)と言っていた。ほんとなー!!!!

変に時間を取られてしまった。

俺たちは厨房へ行って、テキトーな理由で
サンドイッチを作ってもらい。

夕飯を各自適当に済ませて、
19:50、地下闘技場へ向かった。

すでにみんな集まっていた。

「今日がかー」
佐々木が嫌味なことを言う。

「やめてよ!少なくとも私は生き残る可能性にかけているんだから」
「へいへい、ポジティブって素晴らしいですねー」

「作戦言うからね!」

遠藤がまとめる。
「まずは健二郎と俺とでスキルを使って闘技場に侵入する。相手に交渉する。
もしも交渉決裂の場合には真っ先に3人が逃げて、
俺らで時間を稼いで逃げること。落ち合うのは西口広場だ。
最悪そこから壁をよじ登って逃げる。一応ロープは仕掛けておいた」

いづれにせよ、俺たちは西口広場へ集まることにした。
うまくいく保証はないが、やるしかない。

目を配らせ俺たちは覚悟する。
いざ、戦いの場へ----



------------

俺と遠藤のみ闘技場へ入る。

なんとも静かな場所だった。
てっきり敵に囲まれることを予想していたが
こんなに静かなのも違和感がある。

「あれ、リスの目を通して、見えていたのは5人だったのですが…」

闘技場の真ん中にポツンと立っていたのは
ガルデリオだった。

「後の3名はドア近くで待機しているのですかね?」

「あなたが見守る者ですか?」
「えぇ、間違いなく。リスを使って貴方達に接近したのは僕です。
だってを立ててらっしゃるので」
「僕らは別に仲がいいだけで、他のグループがどんな訓練してるのか
情報交換していただけです。計画なんてなんの話だがさっぱり。。」
「でも、遠藤くん。僕が三橋さんの事を聞いた時には君はノーリアクションだったよね?」
「…………。」
「別にいいんだ。気にしてないから。それに他の3名も入ってくるといいさ。
特に佐々木くんは僕に歯向いたくて仕方ないだろうしね」

ガルデリオを右手人差し指をちょっと動かした。
すると闘技場のドアが勝手に開く。

そしてガルデリオは2人の前で
思い出したかの様にとある物を取り出した。

「これは遠藤くんの忘れ物かな?それとも佐々木くんかな?」

取り出して地面に置かれたのはだった。

「俺たちが壁にかけたあのロープに間違いない。。」
このロープを見て全てを悟った。

(俺たちに逃げ場はないってことか…。)

「さぁ、楽しい話をしようか」

そう言うと、腕を広げて
ガルデリオはにっこりと笑った。

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