42 / 52
第3章 勇者たちの行方
7.
しおりを挟む魔術師のグループは基本的午前中は基礎体力と武術訓練、午後は魔術師の訓練をしている。
基本的に加算方式を採っており、1時間ごとに点数が足りないものは午後の訓練後にペナルティ判断を受けた時間×15分間のペナルティが発生する。
「おい、遠藤。お前気づいてるか?」
「いやが応にも気づかざるおえない。」
ここ数日、佐々木と遠藤2名とも圧倒的にペナルティが多いのだ。
別に2人とも出来損ないというわけではない。むしろ佐々木は呪い関係、遠藤は時間に関しての魔術に優れていた。
「おまえは初日に煽ったせいで先生から気に入られてないのはわかるが、俺までも同様のペナルティがあるのはおかしい」
遠藤は特に目立ったことはしていない。むしろ真面目を絵に描いたような訓練を受けている。
(もしかして、俺らが計画していることがバレてたりして…)
佐々木は嫌な予感がしていた。
だがそれならもっと色んなやり方があると思うのもある。
あたかも、俺たち2人の能力を上げるようなペナルティばかりだ。。。
現にレベルだけで言ったら、俺と遠藤は他のやつより頭一つ分抜き出ている実感がある。
「少しは、身につきましたか?」
ガルデリオ先生が俺らに問いかける。
遠藤と俺は、念のため無視した。
「あぁ、そうだ。君たちのクラスメイトで三橋 恭子さんいるでしょ?仲良しなんですか??」
(気にしない、気にしない…)
「ちょうど僕が図書館で人を乗っ取る魔術を調べているときに会ったんですよ。とても勉強熱心だと思いましてね。」
(人を乗っ取るだと、何言ってるんだ…)
惑わされてはいけない…敵の罠かもしれない。。
「もしも人を乗っ取れるとしたら、皆さんはどうします??」
俺らを挑発してきてる。
(めんどくせぇ、先生だな)
佐々木は正直イラついていたが、自身の一時のイラつきでこの計画を台無しにさせるわけにはいけない。
遠藤も目をつぶりペナルティに集中する。
(中々に手強いですね…)
何百年もいきているガルデリオからしたら、
たかが10なん年なんてもはや誤差としか感じていなかったが、
(ここまで意志が強いなんて、もっといじめたくなりますね…)
ちょうどペナルティ4時間分の1時間が終了した。
「今日はここまででいいでしょう。お疲れ様でした」
ガルデリオはにっこり笑う。
(くそ、この計画がなきゃ真っ先に殺したい気分だぜ)
(佐々木、それはダメだ。この人についていき力を身につけるまでは…)
佐々木と遠藤は目配せをし、ガルデリオがいなくなったのを確認して、ゆっくりと芝生に倒れこんだ。
------------
「----ってことがあったんだ」
佐々木も今までのイライラか溜まっていたのか口調が強くなっている。
「私も一昨日だけどガルデリオ先生と接触したよ。魔術の本を探してた、なんか人を乗っ取るって…、正直何言ってるんだろうと思って怖くてその場から逃げるように出て行っちゃった。ごめん。」
まさか三橋のところにも接触があったとは…
「それ!俺らに対しては人を乗っ取れるとしたらって聞いてきやがった。俺らに何かするつもりだぜ」
本当にそうなのだろうか?何か引っかかる。
「そーいえばその先生私にも接触?してきたよ?」
「な、何かされたのか!?」
思わず遠藤が前のめりに聞く。
「人の気配を消すスキルを極めなさいって…すれ違い様に言われたから接触も何もないんだけど、、、」
「な、なんだ、、、」
遠藤が安心している。
案外、分かりやすいやつだな。
他の生徒への接触があるのかどうかにもよるが、それがないとすればあからさまに俺らを狙ってるとしか思えない。
「それとも何か気づいて欲しいとか…?」
思わず考えていたことが言葉に出てしまった。
「なんだそれ…」
「いや、よく分からないんだ。もしも俺たちが邪魔なら、なんらかの手を使って俺達を殺すか訓練不可能にすればいいだけだ。けど、あくまで言葉で俺たちを挑発したりしてきてる。言葉…」
俺の中で何かが繋がった。
けど、まだみんなには話せない。
もっと何か確信がないと…
「あ、こんなところにリスがいる。可愛い」
三橋が思わず駆け寄る。
リスはやけに従順に三橋の方へ近寄ってくる。
(こんなところにリス。夜のタイミングで?)
遠藤はふと思い出したのだ。
《--相手の動向を探るときの方法として、相手のもとにあたかもそこに居そうな動物や物を置くことで、動物の目や物を通じて相手の動向を探るのです。これは初歩的なーーー》
教えてくれたのはガルデリオだった。
「三橋、リスに触るな!!!」
遠藤のことば虚しく、恭子はすでに触っていた。
「え?」
するとリスが小さく爆発した。
沙織が恭子に駆け寄る。
どうやら爆発した際に手を離していたのか怪我はなかった。
爆発したリスを見てみると、煙から紙が出てきた。
《計画する者たちよ
明日20時に地下闘技場にて
我、そこにて待つ。
見守る者より 》
「これって、、、」
「あぁ、確実にバレたな」
「しかも、闘技場ってことは、戦うってこと?」
「ガルデリオにしろエリーゼにしろ、俺らじゃ全員で向かっても死ぬだけだぞ」
「どうするんだ、健二郎?」
俺たちは覚悟を決めざるおえなかった。
メンバー全員を見渡す。
「明日、、、対峙する。
戦う必要はない、話し合えればベストだが、そうでなければ強攻突破しかない。幸い明日は休息日だ。訓練はない。各自集められるだけの荷物を持って集まろう。」
「だと思ったぜ。やっぱりお前はそうでなきゃな」
「変に震えてきた…私おかしいのかな」
「武者震いってやつだろ、俺も同じだ」
「例えどんなことがあろうとも、気持ちでは負けない…」
「俺たちならできる。短い期間だが俺たちはやってきたんだ。立ち向かう勇気はあるはずだ。」
(そして必ず和田と深見に…)
各自拳を握り前に突き出す。
「「「「「俺たち/私たちは生き延びる」」」」」
------------
リスを送り込んだのはガルデリオだった。
(遠藤君は気づきましたか…)
もともと彼は真面目を絵にしたような出席態度だったからな。
こちらとしては佐々木くんと安藤さんに気づいて欲しかったが、まだまだ訓練が足りてませんね。
とりあえず思っていたより
まともな子達が気づいていた。
だが、姫様が乗っ取られていることまでは気づいていないようだな。単に姫様が悪人となっているようだ。
(明日はどこまで話すか…)
正直悩ましいところであった。
まさか魔人に支配されているなんて知られたら、この国の品位がー…という考えはない。
単純に彼らがパニックにならないか、それだけだった。
まぁ、5人もいれば上出来と考えていたガルデリオは明日全てを話すことを決めた。
少しでも希望を残さねばならない。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる