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第3章 勇者たちの行方
6.
しおりを挟む何故こんなところに三橋が?
「てめぇ、密偵か!?」
佐々木が脅すような形をとる。
「ち、違うの!話しを聞いて!」
「コソコソしてるような奴の話なんて聞けるかよ」
まずは落ち着くことが必要だな。
「佐々木落ち着け。三橋なんでお前がここにいる。正直に話してもらおうか」
(まさかこんなにも早くバレるなんて思ってなかった…)
三橋としては単に昨日の今日で彼らが集まるのではないかと思ったからだ。
安藤がこんなにもスキルの習得が早いとは思っても見なかったのだ。
「あたし実は昨日もここにいたの。
たまたま宴会後の暑さを冷ましたくて、歩いてたらここにみんなが集まるのを見て…」
「それでエリーゼ姫にでも情報売って、自分は安泰な地位に行こうってか??」
「ち、ちがう!」
三橋が自身の服装を握り締めながら話し始める。
「私も和田さんに逢いたいの。あの時のことありがとうって伝えたくて…。初めここに転移した時、和田さんと深見君がいなくて、ありがとうも言わずにさよならだって思ってた……。けど、昨日遠藤くんが2人とも生きてるって、私は和田さんに逢いたい。みんなの邪魔はしないようにするから、どうか私も仲間に入れて欲しいの!本来ならこんな形じゃなく、ちゃんとした申し入れが出来れば良かったんだけど、安藤さんのスキルの成長がこんなにも早いなんて思わなかったから…」
正直信じるか信じないか半々だった。
安藤は自分のスキルのすごさに驚いていた。
「俺らが国外逃亡した時には、同じ戦士グループである俺とお前が前衛だ。言ってることわかるか?」
「分かるわ。私も戦う」
「一ついいか。三橋は姫様の言葉はどう思う?」
俺たちが集まったのは、遠藤の予言もあるがみんな姫さんの言葉に違和感を感じたからだった。
三橋もそれが感じ取れるのか、、、
「正直私は姫様の言葉に影響される側だと思う。現に昨日の宴会後まではそうだったから……」
「んじゃ、足-----」
「引っ張ることになるかもしれない!だとしても私はみんなに認めてもらうまでついていくわ。それは変わらない!」
「だとしても、俺らのメリットがねぇ」
佐々木は呆れたようなリアクションを取る。
「俺らは確かに国外逃亡した後は、和田と深見を探す。けどそれは単に会いに行くだけじゃねぇ。俺の予想だが、和田と深見も仲間にして、改めて魔王を倒す」
俺も驚いた。
けど、そうだ。魔王とやらを倒さないとどこで生きていくにしろ俺たちは命を狩られることに怯えて生きていかなければならない。
和田と深見、どちらもどんなステータスを持っていてもあの2人なら、俺らにとって味方になってくれるとそう思ったからだ。
「お前にその覚悟があんのかよ」
それは俺らにも突きつけられている覚悟だった。
------------
三橋のことは一旦保留として
俺たちはとりあえず訓練にこのまま精を出す事にした。
そして、佐々木と遠藤が言っていたガルデリオ先生にも接近する必要があった。
安易に俺らに協力してほしいと言っても多分難しいだろうからなぁ。
そもそもガルデリオ先生自体がエリーゼ姫と繋がっていたらどうする。
本末転倒じゃないか。
正直俺たちは詰まっていた。
それでも何かあるのではないかと思い、2日に1回は集まるようにしたが、進展がないのが現状だった。
------------
「私、この後図書館に行くから今日は集まりに行けないの」
いつのまにか仲間になっていた三橋が言った。
「わかった」
そもそも三橋は剣を振るうほどの体力も筋力もない。持たされている剣も1番細くて軽いものであった。
正直騎士団の先生方も、彼女に対して諦めていた。
それでも彼女は諦めることはなかった。
「私は和田さんに会いたいって気持ちだけでみんなの仲間になったのは本当なの。只の私情。でも、私は諦めたくない。今ここで諦めてしまったら、和田さんに会うことも、その後魔王を倒すことも、何もできなくなっちゃう。。。」
《--勇気に大きいも小さいもないと思うわ。あなたが私に話しかけたのだって立派な勇気だもの。やるだけやってみて、落ち込むのはそれからでもいいんじゃない?そんな三橋さんを私は笑うことはできないよ。--》
恭子は悠理が以前くれた言葉を思い出していた。
(やれることはやらないと。和田さんに顔向けできない…)
恭子は城の中にある図書館へ向かう。
正直、騎士団の先生方に呆れられているのは認識していた。けど自身のスキルに《魔力向上》がある。
(このスキルを使って、魔力を剣に付与できたりしたら。……力をカバー出来るかしら)
魔力の扱い方の本を探す。
恭子は元々図書委員だったので本を探すのは得意だった。
図書館はいたって静かだ。
司書の方がいるのかも知れないが人気はないのは分かりきっていた。
けど、その静かさが恭子は好きだった。
(魔力の使い方…魔力の使い方…)
「何をお探しですか?」
声をかけてきたのはガルデリオ先生だった。
恭子は思わず固まる。
「剣に魔力の付与が出来ないかどうかと思いまして、そう言った類いの本を探していました」
(どうしよう。。みんなに伝えた方がいいのかな…)
けどここで変な動きをして怪しまれるのも困る。まだ10日間しか経ってない、ここで作戦がバレてはいけないのだ。あくまで普通に、あくまで普通に…
「それでしたらこの本はいかがでしょう?」
差し出された本は
確かに魔力をものに付与して使う使い方が書かれていた。
「あ、ありがとうございます」
「君は正直戦士には向いてないが何故戦士として頑張るんだね?」
ガルデリオ先生が私に聞いてくる。
その顔は純粋な感情で聞いてきてるようだった。
「昔の私だったら諦めてたと思います。けど、今は背中を押してくれた子の為に頑張りたいんです。いづれあったときに胸を張って会えるように、私は私で出来ることをするまでです」
「なるほど、、、」
「ガルデリオ先生こそ何故こちらに?」
「単純な調べ物ですよ。人の事を乗っとることができる魔術があるのかどうかのね…私もまだまだ勉強不足ですから」
乗っ取る…?何言ってるのだろうか…?
(こ、こわい。早くここから出よう)
「本探してくれてありがとうございました。
早速読んでみます。失礼しました!」
恭子はその場を立ち去った。
------------
彼女も気づいている側の子だと思ったが、そうではないのかな?
それとも姫様が乗っ取られていることまでは気づいていないのかな?
うーん、、、まだ確証が得れないなぁ。
(僕のグループだと2名ほどたぶん気づいている子がいる。戦士のグループだと2名かな?…隠密者だと1名もしくは2名…、治癒はさっぱりだ、やはり姫さんの防御陣は強いな…)
いづれも早々に目をつけて、フォローできるように動いていかなければならない。
あと2ヶ月を切っている。
その時は迫ってきているのだから。
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