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第2章 俺と幼馴染と異世界
24.
しおりを挟む討伐計画が立案されてから約1週間。
ギルドからは特に何もなく、
冒険者の中ではあの話はデマなのでは?となっていた。
そんな中、俺はC級に上がった。
モアウサギの討伐中に中型のグーラというイノシシを狩ることができたのだ。
っても、ルルラの言われるがままに体制を整え、毒を塗った短刀で狩っただけだが。
急所をうまく狙うことができ、なんとか倒せた。
(これも、ベスラムやルルラのおかげなのだろう。奢ってはいけない)
エルミンさんも中々に順調なペースでランクアップしていると喜んでくれた。
ただ、B級に上がるにはテストがある。なかなかの難関のようだ。
「今までC級まではみなさん上がるんですが、B級のテストで脱落する方が多いので
シンジさんは余計に経験を積んでから挑んでくださいね」
エルミンさんからのアドバイスだった。
「そういえば、まだユーリさんとは喧嘩中なのですか?」
「えぇ、タイミングを逃したというか、、、。
何度かカンパレリに戻っているのですが、悠理の姿が見えなくて。
シュリアさんに聞いても、言いづらいのか口を閉ざされているので
無理に聞かないことにしたんです」
「そうですか…」
「あいつもきっとあいつなりに頑張っているのだと思いますから、
俺は俺で頑張りますよ」
「そうですね、それが一番です」
エルミンさんは優しく微笑んでくれた。
(まだ、喧嘩中のようですね、、、シンシア様に報告しておきましょう)
俺はエルミンさんから報酬をもらう。
グーラを討伐した分、いつもより報酬額が高い。
「よし、今日は外食でもするか!」
《にくー、肉食べる》
《ワシも生肉が良いな》
「俺ちょっと師匠に話ししてくる!」
今夜の夕飯は盛り上がりそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほらほら、自我を保ちながら敵を攻撃するんだよ。
自我が保てなきゃ、周りにまで影響が出る。あんたシンジを殺すのかい?」
「う…るさ…い、だま…れ」
悠理はローリエの特訓真っ只中だった。
シュリア達には、ローリエの職場で修行中としており
ご飯に関してはローリエが悠理の分も運んで対応していた。
ローリエの職場と訓練場はつながっており
ローリエは自分の部屋と訓練場と職場を行き来している。
一通り自身の体内とローリエの魔力を同化させた悠理は
第2段階へと進んでいた。それは《自我制御》だった。
要は自我を保ちつつ魔力を発散することを常時出来るようにしなければならない。
起きている間はもちろん、寝てる間、トイレ、風呂など日々の生活している中でも
常に魔力を自身から発散させてまとわりつかせておくのだ。
戦いの中でこれが出来るのと出来ないのとでは、敵の察知に大きな違いが出る。
普段の人間は魔力を学ぶものであればであれば基本として学ぶような内容で
それは自身の魔力での場合であり、普通の人間でも半年はかかる内容だった。
それでも全員が身に付けられるものでない。
ローリエは悠理の魔力制御に関してシンシアよりも見込みがあると思ったのか
普段の生活だけではなく自我制御をしながら
ローリエの作る人形に攻撃するという訓練内容を行なっていた。
側から見ればなんとも粗雑で荒々しい訓練に見え
人形よりも悠理の方が先に壊れるのではないかと思われるくらいだ。
だが今回悠理は自身の魔力ではなく
ローリエの純潔の魔女の魔力を用いて行おうとしていたのだ。
だからこそ易々とは壊させてはくれない。壊れてくれないのだ。
コツなんてものはない、慣れることでカラダで覚えること、
魔力が自身の中でどう動くのかを認識するには、それが最短距離である。
(シンシアは、10日間かかったけどどうかしらね?)
ローリエは悠理を残して自身の職場に戻る。
「店長、郵便です」
普段は郵便など店員の方で確認し捨ててしまうのだが、、、
「シンシアからね、、、こちらで受け取るわ」
中身を見ると
《何度も電話しているが出てくれないので郵便で送ります。
お手すきの際に電話をください シンシア》
(なんとも味気ない郵便だこと…)
このタイミングで連絡よこすなんて、
あなたが望まなくとも会いにいってあげるわ。
「ちょっと留守にするけど、何かあったら連絡ちょうだいね」
「かしこまりました」
《飛翔》
ローリエはシンシアの元へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回の討伐隊の編成に頭を悩ますシンシア。
(人員配置は必要…。だが、、、)
正直オウマガヤ国では冒険者の母数は多くとも大半がC級程度のレベルだ。
討伐に行かせればどれほどの被害になるか、
今から育てるのも対応としてはもう遅い。
正直話を持ちかけてきた《ユーグラフェル国》にSランクなどを集めてもらおうか。
だが、範囲としてはこちらの国の方が距離が近い森での討伐だ。
安易にこちらが役に立たない冒険者達で向かっては
所詮それほどの国としての印象が先立ってしまう。
現在ユーグラフェル国とは友好関係を築けているが
相手は我らよりも血の気の多い国柄である。
襲えるとわかった獲物を易々と見逃すのか。
(だが、今ここで魔物討伐に一手を打っておかなければ…)
「あら、お悩みのようね?」
ローリエはギルド内のシンシアの部屋に入り
壁にもたれながらキセルを蒸す。
「電話でいいと思っていたのですがね…」
「久しぶりに昔の弟子の顔が見たくなったのよ、悪い?」
「いいえ、ちょうど煮詰まっていたところなので、、、」
「なら、いいじゃない。」
「単刀直入に聞きます。ユーリ、彼女はあとどれくらいで使い物になりますか?」
伏し目でキセルを吹かせていたローリエが目線をあげる。
目線を上げた先にはもちろんシンシアがいた。
「使い物とは?どういう意味かしらね?」
ローリエは頭の回転が早い、1聞けば10理解してしまう。
だからこそ少ない言葉で会話が成り立つのだが、
そんな彼女がわざわざ相手に説明させるのは、苛立っている証拠だ。
「近々、ユーグラフェル国のギルドと合同の魔物討伐隊を編成予定です。
そこに悠理さんを使いたい。いつになりますか?」
「わからないわね、なぜ彼女を??」
(分からないわけなかろうに、、、)
「ローリエ、あなたも彼女の力を試したくはないのですか?
あなたも気づいているでしょう?私なんかよりも彼女のが才能に溢れていることに。
引きこもって彼女につきっきりで訓練しているのがいい証拠だ!」
「お黙り!」
一瞬で空気が凍る。
「確かにあの子の才能はすごいわ。
魔力同化もあなたは1週間だったけど、彼女は3日間だった。
今は戦闘技術と自己制御を並行して覚えさせてるわ……」
「なら、なおさらだ!
あの子の力はふんだんに使ってこそ花開くのではないか、そうでしょう!」
「……………諸刃の剣なのよ」
ローリエはキセルを蒸す。
「あの子の力の源は確実にシンジ君よ。
国のためや自身の体裁のためなんて理由じゃ魔力は開かないわ」
力を欲するものは必ずと言っていいほど何かに依存している。
悠理の場合は真司だった。
「なら、その彼が今回の討伐に参加するとしたら…?」
ローリエの眉尻が動く。
「シンシア、これ以上言ったらどうなるか、、、」
握りしめていたキセルにも力がこもる。
「私からけしかけた訳ではない。彼が望んでいるのですよ。
それこそユーリさんに張り合うかのようにね。
あと10日間ほどで討伐隊は出発する予定です。それまでに、、お願いします」
珍しくシンシアが人に頼む態度を見せてきた。
「ふん」
ローリエはシンシアの元から去ったのだった。
(ローリエ、あなたが隠そうとも、ことらにも手段がありますからね…)
シンシアは静かに目を閉じて
改めて魔物討伐への考えを巡らせるのだった。
〔作者より〕
これで第2章は終了です。続きは第4章に続きます。
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