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第2章 俺と幼馴染と異世界
23.
しおりを挟む翌日体は痛いものの、不思議と目覚めは良かった。
「起きたか?」
フォースがドアを開けて入ってくる。
「師匠たちにも話はしておいた。俺の部屋だが自由に使ってくれ。
これお前らの分の朝食だ。2匹の分は通常の食事で問題ないよな?」
「あぁ、ありがとう。多分大丈夫だ」
俺は2匹を起こす。みんなで食事の時間だ。
ありがちなスープとパンだが不思議と味に馴染みがある。
「これは……………」
「それ、カンパレリのダルタさんが届けてくれたんだぞ。
《メモは受けっとった。いろいろ考えるときだろう。
落ち着いたらいつでも戻ってくるといい。待ってるから。
ユーリのことも心配するな》って。
お前は自分が思ってる以上に色んな人から愛されてれると思うぞ」
あと、これ。
と言って、フォースがベットの上を指差す。
一通りの冒険者グッズだ。
これもダルタさんが届けてくれたらしい。
「お見通しってやつか…」
俺の方にフォースが腕を置く。
「クエスト行くだろ?」
「あぁ、俺は俺なりに隣に立てるように頑張るだけさ」
「そうこなくっちゃ!」
フォースが嬉しそうに答える。
《ご主人ちょっとは元気になったかな?》
《たかが人間に一喜一憂に惑わされてはならんぞ》
《ベスラムも嬉しいくせにーーー》
《ふん、行くぞ》
俺たちは準備をしてギルドに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
悠理はずっとうなされていた。
昨日ローリエと魔力を同化させてからずっと頭がぐわんぐわんしている。
気持ち悪いが吐けない、気だるさがつきまとっている。
ベットの上で唸ることしかできないのだ。
「適度に水を飲みなさいよ」
ローリエが部屋に入ってくる。
水が素直に飲めたら苦労しない。
それくらい彼女なら分かっているだろうに。。。
「もう1人の彼は解体屋のところに行ったみたいね。
当分帰って来なさそうよ」
!?
悠理は自身の体のことで手一杯で
ローリエから言われるまで真司の存在が抜けていたのだ。
(今まで一度もそんなことはなかったのに…)
起き上がりたいが起きれない。何もできない。
「彼が帰って来ない分、私らも集中して訓練できるわね」
ローリエはにっこりと笑う。
それならまずはこの状態をどうにかしてくれ、、、
そう思う、悠理だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはようございます、シンジくん、フォースくん」
エルミンさんが出迎える。
「おはようございます。エルミンさん。
僕たちのランクでもできるクエストはありますか?」
正直自分の実力が把握しきれていないため、
自分で判断するよりもエルミンさんに判断してもらう方がいい。
「今ちょっと調べますね」
エルミンがクエスト依頼表を漁る。
「そういえば、ユーリさんは?」
手を動かしながらエルミンが聞いてくる。
「当分、別行動になりそうです。喧嘩しちゃって…」
「そうですか、、、クエストをしなくとも別に問題ありませんが
真司さんが先にランクアップするとクエストの依頼も
ランクごとになるので別々になってしまう可能性がありますから…」
「わかりました。伝えられそうなら伝えます」
「……?、わかりました。よろしくお願いします」
今日のクエストは《モアウサギ25体とシア草1kgの回収》だった。
早速俺はフォースとベスラム、ルルラでクエストに向かう。
「お気をつけて、」
エルミンさんの言葉を後にギルドから出発する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エルミンは普段から特定の冒険者に肩入れすることはない。
だが、シンジとユーリに関しては気になってしまうのだ。
元々はヒヨッコである2人に対して、シンシアギルド長が直接会いたがる
それこそがエルミンが興味を持ったきっかけである。
それにシンシア曰く、大変興味深い2人だそうで
適度に面倒を見るように言われていた。
(確かに、シンジくんに関しては魔獣2匹しかもA級とB級、同時契約なんて、、、)
しかも本人はピンピンしている。
気にするなって方が無理よねーーーー。
エルミンは遠い目をしつつ、
シンジとユーリが喧嘩中のようです。と他愛もない報告をシンシアにしていた。
「喧嘩中ですか、、、、?」
シンシアは机の上で手を組むと、メガネが光ったように見えた。
「理由はわかりませんが、当分は別行動になるようです」
「なるほど…理由はこちらで当たってみます。ありがとう。
通常業務に戻ってください。」
「かしこまりました」
「あと、彼らにはあくまで普段どおりで、よろしくね?」
シンシアがエルミンに笑顔を向ける。
「かしこまりました」
エルミンも負けずに笑顔で対応する。
お互い食えない性格であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はこの前に行った草原にモアウサギがいると思い向かう。
前回シルミンさんが教えてくれたことを復習しつつモアウサギを狩っていく。
フォースは草原の端っこで火つけて《守り石》で保護結界を結び
俺がモアウサギを持ってくるのを待ち遠しく待っていた。
ルルラは俺の上着の胸ポケットに入りモアウサギを探してくれる。
《ご主人2時の方向、2匹いるよー》
「おうよ!」
《今度は7時の方向、背後から襲いにきてるから注意!》
「あいよー」
ベスラムはフォースのところに向かって日陰で一休みしていた。
昼を少し回ったころ、
フォースが声をかけてきた。
「そろそろ昼にするぞー!」
現状、モアウサギは15体狩ることができた。なかなかにいいペースだ。
午後は残りの分と、草の収集に向かう。
狩ったうちの2匹を自身の食事用として用いるため
フォースが手早く解体する。
「ルルラのお陰でモアウサギがすぐ見つかるから順調だよ」
《それに私らの魔力も共有しているからね!ご主人は思っている以上に強くなってると思うよー?》
「そうなのか?全然そんな感じがしないのだが」
《お前さんは今の力に見合うだけの経験がないからな、まずはこう行った地道な所から
初めていくのが常套手段である。お前にぴったりだ》
「あぁ、俺は俺にやりかたで、、、な」
ベスラムとルルラを撫でながら昼を待つ。
「できたぞ!この前は焼いたからな、今度は蒸してみた!
持ってきた野菜なんと一緒に食べてくれよな!マスタードをつけるとうまいぞ」
「いただきまーす」
俺はこの日々を数日、過ごすことになる。
日々微々たる稼ぎだがアルバイトよりも自分で稼いでいる感覚が気持ちよかった。
もちろん、報酬はフォースと折半だ。
フォースは邪魔してるだけだからいらないとって言ってくれるけど
料理にだってお金はかかっているんだ。
きちんと払わないと気が済まないと話をすると
貰ってる分は美味しいものを作ることが妥協点となった。
フォースも草の収集であれば手伝ってくれて助かる。
モアウサギ以外にも小型の小動物も狩ることも多く、
フォースも「腕がなるぜぇ!」と張り切ってくれる。
時にはクエストになくとも日常的に街の中で必要な薬草や鉱物などを
収集しギルドに出すことで別途稼ぐことも出来た。
こう行った毎日を数日過ごす頃には俺は一人で
モアウサギを難なく狩ることができていた。
夕方にはギルドに戻りエルミンさんに報告し報酬をもらう。
時にはシルミンさんとも顔を合わせることもあり
ほかの冒険者とも話すことも増えた。人脈はあって損はない。
良くも悪くも色んな話が耳を通ってくる。
そんなある日、の話だった。
「近々、魔物の大規模討伐体が組まれるらしいぞ?」
「どうやら希望制らしいがな。褒賞は結構もらえるらしい。」
「国王様達の凱旋が近いからそれに向けての討伐体だろう」
「ただ俺らのようなランクの奴が行ったとて小型のやつで手一杯になるだろーよ」
「所詮、A級、B級、いってもC級向けだろうなぁ」
「シンジ、お前は申し込むのか?」
C級、D級、E級の冒険者たちで集まって話をしていた。
「俺はーーー、考えておくよ。まだまだE級だし」
《ご主人、あたしらが入れば余裕だよ?》
「だとしても、お前らの活躍を俺がもらうような話はちょっと…」
《ふん、変に遠慮しよって。貰えるものは貰えば良いのだ。上のランクに行けば
それはそれで色んな経験ができる。はよ我らのランクにまで上がってきてもらわねば困る》
「そうはいってもなーーーー」
「シンジくん、ちょっといいかしら?」
エルミンさんが俺に声をかける。
「え、ランクアップですか!?」
思わず声をあげる。
「えぇ、毎日きちんとクエストをこなしてくれたからか
いつのまにかD級へ上がっていたわ。私も気づかなくてごめんなさいね。」
「いえいえ、嬉しいです。ありがとうございます」
「この調子でいけば、C級ももうすぐよ、頑張って」
「本当ですか!?」
《やったじゃん、ご主人!》
「本当は彼らの実力だけでいったらシンジ君はB級のランクなんだけど。
それだと実戦で何かあった時が大変だから、あくまでシンジ君自身の実力として
判断させてもらってるわ」
「それで十分です。あのーーーー」
「何か?」
「俺くらいの奴でも討伐隊って参加できますかね?」
エルミンさんが固まる。
聞いちゃまずかったのか?
「んーーーーー」
「いいと思いますよ?何事も経験ですから」
答えたのはシンシアさんだった。
「ただ今戻りました」
帰ってすぐのシンシアに問いかけるシンジ。
「本当ですか!?、俺でも出来ますかね!?」
目を輝かせるシンジ、ルルラもやる気がみなぎっている。
「最前線とまではいかないでしょうが、
倒し損ねた小型の魔物を街に到達する前に狩っていくのも立派な討伐ですから」
《それであれば私らの力でフォローもできよう》
《ご主人の本格的なデビュー戦だねぇ》
ルルラはまたシャドーボクシングを行う。
「討伐隊が組まれた際には是非とも応戦します」
「期待してますよ」
シンシアは自室に戻る。
本日王国城内にて本格的な討伐隊に関しての話し合いが行われたところだった。
「できれば彼女もきて欲しいのですがー…」
シンシアはユーリとローリエが契約を師弟契約を結んだと確信し
連絡を取っているが、彼女からの返事はない。
特別訓練室で彼女をしごいているのだろう。
一度ハマると彼女はなかなか手放さない。
戻ってきた時に彼女はどれだけになっているのか。
(楽しみな反面、怖いですね…)
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