俺と幼馴染だけ、異世界の別の場所に転移したそうです

ふじ

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第2章 俺と幼馴染と異世界

22.

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泣いていたってしょうがない。

頭ではわかっている。
けどこんな現実を受け入れられない
俺は泣くことしかできない。

《ご主人………》
ルルラは膝を抱えた俺の足元で心配そうな顔をしている。
ベスラムはただ無言だった。

正直、2匹は口を閉ざされてはいたが3人に会話は聞けていた。
(まさか、本当に魔女なんてものがおるとは…)

魔獣と魔女が交友をもてばきっと鬼に金棒だろう。
ただ、魔女は大魔神との契約によってその姿になる。
魔を導く者である大魔神は、神聖な力を糧とする魔獣とは根本的に相性が悪いのだ。

(それに彼女あやつ場合、負のエネルギーを元に契約しておる。余計に厄介じゃ)

《ベスラム、、どうする?》
《うーむ、ひとまずここから其奴を運ぼう》

2匹は風の魔術を使い、真司を持ち上げる。
「おい、2匹とも何するんだよ!」
急に体が浮いたことで驚いた真司が声を出す。

《この建屋にいては気まずいじゃろうがどこへ向かえば…》
《あれは?解体屋のところ!》
ルルラが提案する。
《よかろう、ルルラ、場所はわかるか?》
《何とか匂いでわかる!》
《わかった。この街であればそう遠くもなかろう、いくぞ。》



2匹と1人は空を飛ぶ。
さながらピーターパンのようだ。
(何なんだよ…どうなんるんだ、おれーーーーー)
真司は落ち込む暇もないくらいに地面から離れている自身の体に戸惑っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「師匠、こんなもんでいかがですか?」
フォースは、訓練用の魔物の解体結果を師匠に見せる。

ファースの師匠であるジンバルは見定める。
「大筋は切れてきているが骨に肉が残りすぎだ!
なんども言わせるな、手首の角度を気にしろ!
素材を無駄にするな!」

「す、すみません」

「もう今日はよい」
ジンバルは解体部屋を出ていく。
「ありがとうございました」

フォースは中型位であれば難なく解体はこなせるのだが
大型になると力加減と手首の角度などが加減ができず解体残しが出来てしまう。

(もっと経験を積めば、、俺だって、、、)

フォースは自身の持つ解体刃の柄を握りしめる。

ドン!
《たのもーーーーーー》

そのドアは勢いよく開いた。
ベスラムが風魔法で思いっきり開けたのだ。

「なんだーーー!?」
フォースが驚く。

そして到着したのがわかると2匹は魔術を解く。
15cm程宙に浮いていたが解かれたことで地面に落ちる。
ドスン
2匹はわかっているから着地するが、真司は何もわからずにきているため
着地の体勢が取れずそのまま落ちた。

「痛い…」
《ごめん、主人》
《そんくらいも出来ぬのか、お主》

「シンジ、どうしたんだ?」
フォースが声をかける。

《しばしコヤツをここに匿ってはくれぬか?》
《今はね、ちょっと距離を取ってね、考える時間が必要なんだよ》
2匹はフォースの足元でここに運んだ意図を伝えるが
契約をしていないフォースには伝わらない。

「フォース、出会ったばっかりで申し訳ないんだけど。
悠理と喧嘩して、数日ここに泊めてくれないか………」

「それは構わねぇが、、。
ユーリってさっきお前を抱きしめてきた奴だろ?
何でそんなことになったんだよ。」

「それはーーーー」

「とりあえず、俺の部屋でいいか?
俺は片付けてから部屋に戻るから、
そこのドア開けて左手側2番目の部屋が俺の部屋だ」

「わかった」

「あと、ここに来るのは良いが、、
お前ここに来ること誰かに伝えたのか?
お前カンパレリに宿泊してるんだろ?」

「…………………」
俺は2匹を見る。

まぁ、そうだろうな。

「俺の部屋に紙とペンがあるから、メモ書きでもして
その2匹に届けてもらえよな」
フォースが察したのか提案してくれた。

「たすかるよ、ありがとう」

「んじゃ、部屋でな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺はメモ帳を2枚破り
1枚はダルタさん、シュリアさん、アルラあてに。
もう1枚は悠理にあてに。
メモはルルラによって届けてもらうことにした。

「明日クエスト行くのに何も持ってきてないや」
家出にしても何も準備をしていない状況だ。
それでも今は悠理と顔を合わせるには気まずいから
(気を利かせてくれた、2匹には感謝しないとな)

「おまたせ。風呂とかは入ったのか?」
「うん、夕飯も食べてあるから大丈夫だよ」
「んじゃ寝床だけだな。寝るのはそこのソファで良いか?
ブランケットはここだ。ほいよ」
「あぁ、十分だ。助かる」

フォースは気を利かせてくれたのか
暖かいお茶を出してくれた。

「んで、何があったんだ…?
無理して話したくねーならそれでもいいけどよ…」
フォースが聞いてくる。

俺はベスラムを撫でながら静かに話す。

「俺と悠理はずっと一緒だったんだ。幼馴染ってやつだーーーー」

それから俺は、悠理との関係で悩んでいることを話す。
ベスラムが擦り寄ってくる。
きっと心配しているのだろう。

冒険者になる前も助けてもらってばっかで
冒険者になって俺も強くなってこれからは2人で助け合って生きていけるもんだと思っていたこと。
けど結局は今でさえ何か隠されていて、自分だけで解決しようとされること。
俺は悠理にとって頼りない存在であること。

俺もまだまだ悠理を助けられる存在ではないとある人に言われた事。
言い当てられて悔しくなったが、何も言い返せない自分がいたこと。
強くなることがどんな事なのかダルタさんに問われて答えられなかったこと。
未だに自分なりの答えが見つかっていないこと。

フォースとベスラムはただただ静かに聞いてくれた。

「ーーーーーって、感じでさ。
ちょっとあそこにいるのは気まずいんだ………」

「そうか、、、、」
静かに聞いてくれていたフォースが口を開く。

「正直俺には幼馴染っていう関係のやつはいない。
俺は元々奴隷として売られそうになったところを
師匠に拾われた身だからな。けど、これだけはわかる。
ユーリは決してお前をお前が思うようには考えていないと思うぞ」

「そうかな………」

「もしもお前が思うようにユーリがお前の事を思っているとしたら
お前らの関係なんてとっくに破綻していると思うけどな。
だって、そんなギブアンドテイクな関係、十何年間も一緒にいれるわけないだろ?」

「…………………」

「たしかに今のお前は弱い。男としても召喚士としても冒険者としても!
魔獣と契約できたのはラッキーなのかもしれない。
けど、これからのお前はどうなるかわからねーじゃん。そうだろ?」

「俺は過去は過去だと割り切って、未来を考えるね。
決して最短ではないだろうけど、今のこの状況も今までの過去も全部は経験だ。
お前の血肉になって確実に身についているはずだ。
失敗も成功も全部未来の糧にする勢いで頑張るんだよ。
努力して頑張って失敗して、考えてまた頑張って、それをずーっと続けていくんだ。
そしたらいつのまにかお前自身が求める強さってもんが付いてくると思うぞ。
お前、ユーリの隣でユーリと笑っていたいんだろ?」

俺は泣きそうになる。
フォースが戸惑うように
「まぁ、これも師匠からの受け売りだけどよ。
俺はこの言葉で救われた。お前のことも少しは救ってくれると信じているよ」

さー、夜更かしは不健康の元だからなと言って、部屋の電気を消す。
ちょうどルルラがお使いから帰ってきた。
ソファの隙間で2匹はうずくまる。

俺はソファに横になる。
《お前、ユーリの隣でユーリと笑っていたいんだろ?》
フォースの言葉が響く。
いつも悠理は俺の前を歩いている。
そして俺の歩みを気にしては前から優しい笑顔で手を差し伸べるのだ。
けど俺はそんな関係が嫌だった。
悠理と並んで、隣で笑いあえる関係でいたいと思ったのだ。
それは小さいころ初めて悠理に会った時から変わらない気持ちだった。

(俺の奥深くにある気持ちをフォースに言い当てられるなんて…)

悔しくもフォースの言葉に助けられる真司だった。

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