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第1章 悲劇の始まり

8話

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魔力脱漏症。それが国王がかかっていた病名。

エルフの王家は死にやすい。それには理由がある。

幻影結界は第三のスキルでありながら強力、それゆえのデメリット。

幻影結界は持ち主がなくなれば消滅することから分かるように、少量の魔力が常に消費される。

普通に生活する分には何も問題ない。しかしそれが何百年と続くとどうだろう。

体内の魔力の器に隙間ができその隙間が長い年月をかけて大きく広がり壊れた蛇口のように漏れだしていく病。

エルフの国王がつい先日までかかっていた病名と一致する。

「君はジン君というのか! ルイ君にジン君、ようこそエルフの里へ! ガハハハッ!」



そして目の前で上機嫌なのは先程まで魔力脱漏症にかかり衰弱死しかけていた人物。エルフの里の国王ーーエルダ・ステンヘルム。

エリーと同じ金色と青い瞳。エリー・ステンヘルムの父親だ。

「おい、ルイ。ほんとにこの人が王様なのかよ?」

兄様が小声で僕にささやく。

「そ、そのはずなんだけどね。ははは」

「うぅ。。お父さんがうるさくてごめんなさい」

「それにしてもエリーって王女様だったんだね。最初聞いた時びっくりしたよ」



兄様のけがを治した後、僕たちは王城へ連れられエリーが王女だということを知る。

治す相手がこの里の王だと知ったときはめちゃくちゃ緊張した。

幸い門番の目の前でけがを治したのとエリーの説得によりすんなりと中に入ることができた。

城へ通された後、兄様を客室へ待たせ、僕とエリーは国王のいる部屋へと通された。

そして怪我を治し、兄様のいる客室に戻り現在に至る。



「ルイ君たちはボウル村からきたのかね」

「「はい」」

僕たちの住む村の名はボウル村。

ボウル村は南門と北門がありそれを隔てるように左右に森が広がっている。

僕たちが訪れたエルフの里があるのは西側にある森。いつも剣の修行をしていたあたりの奥にある場所だ。

「なるほど。だからエリーはこの子たちを見つけることができたのか。」

「それってどういうことですか?」

僕が国王の発言に疑問を覚え問う。

「エルフの結界がボウル村の西側をふさぐ形で円状に存在していてね、里の入り口から結界の円に沿って歩いていけば魔獣に出会うことなく安全にたどり着くことができるんだよ。......といって結界の効力が弱まっているから何度もやめなさいと言っているのだが。」

そういうと国王がエリーのほうを睨む。

「うっ」

ばつが悪そうにそっぽを向くエリー。

なるほど、西にエルフの里が存在したから西の森には昔から魔物が姿を見せなかったのか。

見せたとしても非常に小さく危険性のない魔物だった。

逆に東の森には奥に行けば行くほど危険な魔物が多く、年に一回ほど村に魔物が侵入してくることがある。

そのため東の森には常に大人が数人おり村の警備をしている。

知らぬうちにエルフの結界に助けられていたのか。

「それよりもルイ君に聞かなければならないことがある。私の病を治した、


   その力に関してだ」


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