20 / 50
3章 此花美桜 2
気のせいです
しおりを挟む
咲と共にまず初めに足を運んだのは、一階にある談話室。
真璃と初めて会った場所だし、今までの日記を見てみてもこの場所が書かれている頻度が高いからである。……まぁ、ここで初めて会ったのは今の私であり、前の私がどのように真璃と出会ったのかは分からないけど。
穏やかな太陽の日が差す中庭。それが見える窓の前まで来た所で、咲が言う。
「わたし、さっきの話でちょっとまだちゃんと把握出来てない所があるんですけど。……美桜さんは、真璃さんに告白、されたんですよね?」
「え? あー、うん。そうだね」
なんか、改めて人に言われると少し恥ずかしい。
思わず歯切れの悪い返事をすると、咲は唸るような声を上げた。
「んーと。気持ちの整理って言いますけど、美桜さんはその時率直にどう思ったんですか?」
咲の質問に、私はすぐに答えを返せない。
あの時は告白の他にも色々とあったために、私の中には様々な感情が生まれて混沌としていた。
……でも、やっぱりあの時私は——
「……嬉しかった、んだと思う」
——自分でも何故か分からないまま、嬉しさを感じ取っていた。
「嬉しいと思ったんなら、それは美桜さんも真璃さんの事を好きだって事なんじゃないんですか?」
不思議そうな瞳を向けてくる咲。
……咲の言う事はもっともだ。誰かに告白された時嬉しいと感じたなら、普通に考えれば、それは自分も相手と同じ気持ちで、告白された事を喜んでいるという事になる。
しかし。やっぱり私は、あの時何故嬉しいと感じたのか分からなかった。
……私は、真璃の事が好きなんだろうか。だから嬉しいと感じたのだろうか。
でも——。
「……もし、私も真璃の事を好きだとして……。その感情ってどこから生まれたんだろう」
「え?」
私がつい呟いた言葉を受けて、咲が聞き返してくる。
私は自分の頭の中を整えるようにしながら続きを口にした。
「感情ってさ。普通、何も無い所からは生まれないと思う。何か出来事があったり、記憶を思い返してみたり。そういう所から感情って生まれてくると思うんだけど……」
そこで一旦言葉を区切る。咲は真剣な表情で続きを待っているようだ。
「もし、告白された時の嬉しさが、私も真璃の事を好きだからって理由で感じたものだとしたらさ。その好きって感情はどこから生まれたのかな。……だって、私は真璃と過ごしたっていう一年間の事をすっかり忘れてるわけだし。覚えてない記憶から感情が生まれるとは思えない。……流石にこの二日だけで同じ女の子の真璃を好きになったとも思えないし……」
そこまで聞いた所で、咲は腕を組んで思案顔になる。
そんな咲に、私は最後の結論を出した。
「だからね、なんで自分が嬉しいって感じたかを知りたいの。もしそれが真璃の事を好きだからなんだとしたら、なんで真璃の事を好きになったのか、知りたい。ごめんね、上手く説明出来なくて。……でも、それが分からないと、真璃にちゃんと向き合えない。……気がするから」
私が伝えたい事がしっかり伝わったか、咲の表情からは読み取れない。
そんな咲は先ほどよりも大きく唸ってから口を開いた。
「……でも、美桜さんの言葉の通りに考えるなら、やっぱりこの二日の間に好きになったと考えるしかないですよね? 覚えていない記憶から感情が生まれないなら、覚えてる二日間から生まれたとしか思えません」
「……そうだよねぇ……」
言われて、今度は私が唸り声をあげる番となる。
出会って二日しか経っていない女の子を好きになってしまう女の子なのだろうか、私は。
真璃が今まで出会った中で一番綺麗な女の子だから?
その綺麗な女の子に頬にキスされたり、あーんされたり、抱き寄せられたりしたから?
だから、好きになってしまったのか。自分と同じ女の子を。そんな簡単に?
…………。正直、それはあまり考えたくない現実だ。
思考を重ねていく私だったが、ふと視界の端に映り込む咲ではない人影に気付き、頭を上げた。
見ると、咲の後ろにいつの間にか萌姉が立っている。……ていうか、なんで無言?
「わあ!!!」
「ふひゃあぁ!?」
音も無く近寄ってきた萌姉に勿論気付いていなかった咲は、突如後ろから出された萌姉の声に可愛い悲鳴をあげて飛び上がる。
何事かと後ろを確認した咲は、萌姉の姿を見て、一瞬時が止まったかのように体を凍り付かせた。
……と思ったら今度は素早く私の背中に回り込んできて、まるで人見知りの子供が母親の影に隠れるかのように、私の体を壁にして萌姉から距離を取る。
「ご、ごめん。そんなに驚くと思わなかった……」
そう謝罪する萌姉だったが、咲は私の背中から顔を覗かせるように萌姉の様子を窺っている。
「えっと、咲? 多分この人、別に悪気があったわけじゃないから……」
一応私も補足すると、咲は恐る恐るといった感じで私の背中から体を現した。
「ごめんなさい。悪気が無いのは知ってます……。私がちょっと苦手なだけです……」
驚かされるのが苦手という意味だろうか。……別に得意だという人も見たことは無いけど。
萌姉はというと、「あはは……」と変な空気を笑ってごまかそうとしている。
私は溜め息を漏らしながら、萌姉に顔を向けた。
「突然どうしたの? 何か用?」
「いやぁ、昨日みぃちゃんと噂してたその人がいたからさ。思わず」
思わずで人を驚かすな。
「噂?」
そして不思議そうにする咲。
そういえば色々あってすっかり頭から抜け落ちていたが、確かに萌姉と咲の話をした。
思い出した私は、咲にその事を聞いてみる事にする。
「咲さ。昨日萌姉の顔見て逃げたんだって?」
すると、咲は無言で目を逸らした。
萌姉も私の後に続く。
「しかもさ、その時何か呟いてたよね? 『もえねえ』って、聞こえた気がしたんだけど」
その言葉を受けてさらに顔までそむけ始めた咲は、冷や汗をかいているようだ。
「…………。……気のせいです。わたし、何も言ってません。逃げてもないです。偶然立ち去るタイミングが重なっただけです」
少しの沈黙の後、意を決したように紡いだ咲の言葉は、何もかも嘘だと簡単に分かるようなものだった。
私は萌姉と顔を見合わせる。
追及するかどうかのアイコンタクトを送っているのが伝わったのか、萌姉は首を横に振った。
——気にはなるが、追及はやめておこう。多分、萌姉はそう言っている。
私は頷くと、未だそっぽを向いている咲に声をかけた。
「そっか。ごめんね。私たちの気のせいだったみたい」
それを聞いた咲は、ちらっと横目で私たちを見た後、胸をなでおろしているようだった。
……咲は何かを隠しているようだが、そこに私に近づいてくる目的があるのだろうか。
「……ごめんね、変な邪魔しちゃって。じゃあ、あたし仕事に戻るから」
話が終わり、萌姉はそう手を振って背を向ける。
私はそんな萌姉の背中を呼び止めた。
「萌姉。……私と真璃ってさ、よくここにいたんだよね?」
萌姉は立ち止まると、振り返りながら答えてくれる。
「……うん。よくここで二人でいるの見かけたよ。……みぃちゃんが絵を習ったり、真璃ちゃんが絵を描いてるところをみぃちゃんが見てたりしてたかな」
「その時、私ってどんな感じだった?」
「楽しそうだったよ。とっても」
そう笑顔で言い残し、今度こそ萌姉は談話室から出て行った。
「……そっか……」
誰に言うでもなく呟くと、私は日記帳を開く。真璃に絵を習っているけどなかなか上手くならない事や、真璃の描いた絵がとても綺麗だった事が記されている。
「……楽しそうだなぁ」
書かれた字だけを見ているだけだが、なんとなくそう感じる日記だった。
その日記の中で次に多く出てきたのは図書室だ。
真璃と図書室で絵画の鑑賞なんかをしていた日が、日記の中に散見された。
私は日記帳を閉じると、次は図書室に行こうと咲に伝える。
頷いた咲は、いまだに少し強張らせていた体を動かし、私の後についてくるのだった。
真璃と初めて会った場所だし、今までの日記を見てみてもこの場所が書かれている頻度が高いからである。……まぁ、ここで初めて会ったのは今の私であり、前の私がどのように真璃と出会ったのかは分からないけど。
穏やかな太陽の日が差す中庭。それが見える窓の前まで来た所で、咲が言う。
「わたし、さっきの話でちょっとまだちゃんと把握出来てない所があるんですけど。……美桜さんは、真璃さんに告白、されたんですよね?」
「え? あー、うん。そうだね」
なんか、改めて人に言われると少し恥ずかしい。
思わず歯切れの悪い返事をすると、咲は唸るような声を上げた。
「んーと。気持ちの整理って言いますけど、美桜さんはその時率直にどう思ったんですか?」
咲の質問に、私はすぐに答えを返せない。
あの時は告白の他にも色々とあったために、私の中には様々な感情が生まれて混沌としていた。
……でも、やっぱりあの時私は——
「……嬉しかった、んだと思う」
——自分でも何故か分からないまま、嬉しさを感じ取っていた。
「嬉しいと思ったんなら、それは美桜さんも真璃さんの事を好きだって事なんじゃないんですか?」
不思議そうな瞳を向けてくる咲。
……咲の言う事はもっともだ。誰かに告白された時嬉しいと感じたなら、普通に考えれば、それは自分も相手と同じ気持ちで、告白された事を喜んでいるという事になる。
しかし。やっぱり私は、あの時何故嬉しいと感じたのか分からなかった。
……私は、真璃の事が好きなんだろうか。だから嬉しいと感じたのだろうか。
でも——。
「……もし、私も真璃の事を好きだとして……。その感情ってどこから生まれたんだろう」
「え?」
私がつい呟いた言葉を受けて、咲が聞き返してくる。
私は自分の頭の中を整えるようにしながら続きを口にした。
「感情ってさ。普通、何も無い所からは生まれないと思う。何か出来事があったり、記憶を思い返してみたり。そういう所から感情って生まれてくると思うんだけど……」
そこで一旦言葉を区切る。咲は真剣な表情で続きを待っているようだ。
「もし、告白された時の嬉しさが、私も真璃の事を好きだからって理由で感じたものだとしたらさ。その好きって感情はどこから生まれたのかな。……だって、私は真璃と過ごしたっていう一年間の事をすっかり忘れてるわけだし。覚えてない記憶から感情が生まれるとは思えない。……流石にこの二日だけで同じ女の子の真璃を好きになったとも思えないし……」
そこまで聞いた所で、咲は腕を組んで思案顔になる。
そんな咲に、私は最後の結論を出した。
「だからね、なんで自分が嬉しいって感じたかを知りたいの。もしそれが真璃の事を好きだからなんだとしたら、なんで真璃の事を好きになったのか、知りたい。ごめんね、上手く説明出来なくて。……でも、それが分からないと、真璃にちゃんと向き合えない。……気がするから」
私が伝えたい事がしっかり伝わったか、咲の表情からは読み取れない。
そんな咲は先ほどよりも大きく唸ってから口を開いた。
「……でも、美桜さんの言葉の通りに考えるなら、やっぱりこの二日の間に好きになったと考えるしかないですよね? 覚えていない記憶から感情が生まれないなら、覚えてる二日間から生まれたとしか思えません」
「……そうだよねぇ……」
言われて、今度は私が唸り声をあげる番となる。
出会って二日しか経っていない女の子を好きになってしまう女の子なのだろうか、私は。
真璃が今まで出会った中で一番綺麗な女の子だから?
その綺麗な女の子に頬にキスされたり、あーんされたり、抱き寄せられたりしたから?
だから、好きになってしまったのか。自分と同じ女の子を。そんな簡単に?
…………。正直、それはあまり考えたくない現実だ。
思考を重ねていく私だったが、ふと視界の端に映り込む咲ではない人影に気付き、頭を上げた。
見ると、咲の後ろにいつの間にか萌姉が立っている。……ていうか、なんで無言?
「わあ!!!」
「ふひゃあぁ!?」
音も無く近寄ってきた萌姉に勿論気付いていなかった咲は、突如後ろから出された萌姉の声に可愛い悲鳴をあげて飛び上がる。
何事かと後ろを確認した咲は、萌姉の姿を見て、一瞬時が止まったかのように体を凍り付かせた。
……と思ったら今度は素早く私の背中に回り込んできて、まるで人見知りの子供が母親の影に隠れるかのように、私の体を壁にして萌姉から距離を取る。
「ご、ごめん。そんなに驚くと思わなかった……」
そう謝罪する萌姉だったが、咲は私の背中から顔を覗かせるように萌姉の様子を窺っている。
「えっと、咲? 多分この人、別に悪気があったわけじゃないから……」
一応私も補足すると、咲は恐る恐るといった感じで私の背中から体を現した。
「ごめんなさい。悪気が無いのは知ってます……。私がちょっと苦手なだけです……」
驚かされるのが苦手という意味だろうか。……別に得意だという人も見たことは無いけど。
萌姉はというと、「あはは……」と変な空気を笑ってごまかそうとしている。
私は溜め息を漏らしながら、萌姉に顔を向けた。
「突然どうしたの? 何か用?」
「いやぁ、昨日みぃちゃんと噂してたその人がいたからさ。思わず」
思わずで人を驚かすな。
「噂?」
そして不思議そうにする咲。
そういえば色々あってすっかり頭から抜け落ちていたが、確かに萌姉と咲の話をした。
思い出した私は、咲にその事を聞いてみる事にする。
「咲さ。昨日萌姉の顔見て逃げたんだって?」
すると、咲は無言で目を逸らした。
萌姉も私の後に続く。
「しかもさ、その時何か呟いてたよね? 『もえねえ』って、聞こえた気がしたんだけど」
その言葉を受けてさらに顔までそむけ始めた咲は、冷や汗をかいているようだ。
「…………。……気のせいです。わたし、何も言ってません。逃げてもないです。偶然立ち去るタイミングが重なっただけです」
少しの沈黙の後、意を決したように紡いだ咲の言葉は、何もかも嘘だと簡単に分かるようなものだった。
私は萌姉と顔を見合わせる。
追及するかどうかのアイコンタクトを送っているのが伝わったのか、萌姉は首を横に振った。
——気にはなるが、追及はやめておこう。多分、萌姉はそう言っている。
私は頷くと、未だそっぽを向いている咲に声をかけた。
「そっか。ごめんね。私たちの気のせいだったみたい」
それを聞いた咲は、ちらっと横目で私たちを見た後、胸をなでおろしているようだった。
……咲は何かを隠しているようだが、そこに私に近づいてくる目的があるのだろうか。
「……ごめんね、変な邪魔しちゃって。じゃあ、あたし仕事に戻るから」
話が終わり、萌姉はそう手を振って背を向ける。
私はそんな萌姉の背中を呼び止めた。
「萌姉。……私と真璃ってさ、よくここにいたんだよね?」
萌姉は立ち止まると、振り返りながら答えてくれる。
「……うん。よくここで二人でいるの見かけたよ。……みぃちゃんが絵を習ったり、真璃ちゃんが絵を描いてるところをみぃちゃんが見てたりしてたかな」
「その時、私ってどんな感じだった?」
「楽しそうだったよ。とっても」
そう笑顔で言い残し、今度こそ萌姉は談話室から出て行った。
「……そっか……」
誰に言うでもなく呟くと、私は日記帳を開く。真璃に絵を習っているけどなかなか上手くならない事や、真璃の描いた絵がとても綺麗だった事が記されている。
「……楽しそうだなぁ」
書かれた字だけを見ているだけだが、なんとなくそう感じる日記だった。
その日記の中で次に多く出てきたのは図書室だ。
真璃と図書室で絵画の鑑賞なんかをしていた日が、日記の中に散見された。
私は日記帳を閉じると、次は図書室に行こうと咲に伝える。
頷いた咲は、いまだに少し強張らせていた体を動かし、私の後についてくるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
君は恋人、でもまだ家族じゃない
山田森湖
恋愛
あらすじ
同棲して3年。
毎朝コーヒーを淹れて、彼の寝ぼけた声に微笑んで、
一緒に暮らす当たり前の幸せを噛みしめる——そのはずだった。
彼女は彼を愛している。
彼も自分を愛してくれていると信じている。
それでも、胸の奥には消えない不安がある。
「私たちは、このまま“恋人”で止まってしまうの?」
結婚の話になると、彼はいつも曖昧に笑ってごまかす。
最初は理由をつけていたのに、今では何も言わなくなった。
周囲の友人は次々と結婚し、家族を持ち始めている。
幸せそうな写真を見るたび、彼女の心には
“言えない言葉”だけが増えていく。
愛している。
でも、それだけでは前に進めない。
同棲という甘い日常の裏で、
少しずつ、確かにズレ始めているふたりの未来。
このまま時間に流されるだけの恋なのか、
それとも、家族へと歩き出せる恋なのか——。
彼の寝息を聞きながら、
彼女は初めて「涙が出そうな夜」を迎えていた。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる