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しおりを挟む「嫌ですよ。自分より年上を説教するなんて」
書類を読みながら担当は深くため息をついた。
そこには43歳の万引き犯の情報が載っている。
「でも、これは本人のためですから。娘のために怒られてもらいます」
時間通り二人はやってきた。
娘は年齢的には妥当な、痩せた女性だった。
身なりはきれいに整えており、子どもがいるような雰囲気は感じられない。
どこにでも居るような人。
父親は娘より背が低く、表情や話し方は生真面目そうな印象を受けた。
菓子折りを持ち、片足をかばうように歩いていた。
彼らは別室で担当と話をすることになった。
話を終え、担当と戻ってきた父親と娘は店のスタッフに再度深々と謝罪して帰っていった。
娘が何を思っているかなんて知らないが、来たときより顔色が悪く見えた。
「『お父さん、教育を間違えてますよ』って言いましたよ」
担当は深々と息を吐いた。
「お父さんに悪いけど、かなり厳しめに言いました。それじゃないと、本人に響かないでしょうから」
皆複雑そうな表情で黙っていた。
年老いた父親が自分のせいで目の前で怒られている。
警察に被害届を出さない対価なら父親としては安いものかもしれない。
それでも、普通の神経なら、自分自身が怒られるよりもっときつく感じるだろう。
「……繰り返す人は繰り返しますよ。それでも」
何件も見てきたからこその言葉でもあった。
そう話してる間に警備室から電話がかかってきた。
他店の服を万引きした女子高生のバッグから新品の化粧品がまとめて出てきたので店のものなのか確認してほしいとのことだった。
別のスタッフが警備室へ向かう。
呆れたように担当が言う。
「だいたいこういうことをやるのは家庭に問題がある子が多いんですよ。片親家庭とか」
「私も片親ですけど」
そこは即座に言わざるをえなかった。
担当の経験では割合的に多いのかもしれないが、一人で育ててくれた私の母に対してひどい話だ。
私の父は酒にパチンコにで母に隠れて借金をし、子どもにまで暴力を振ったため離婚した。
養育費も払われない生活でドがつくほどの貧乏な子ども時代を送った私から見れば皆裕福に見えた。
娘のために足をかばいながら歩いて怒られに来た父親、あれが本当の父親なんだろう、と思った。
人は恵まれているものに気付かない。
盗むこともできない、得られないものが彼女にはある。
そのことに今すぐ気付いてほしいと思った。
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