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手と手をあわせて
"僕"の正体とは
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「──ナンダカ、ヒーラー様ノ癒シノ力、強クナッテマセンカ・・・?」
「ええ、そうですね。この子が私の力を高める方法があると言うもので試しにやってみたのですが、効果はご覧の通り。癒しの力自体も強くなりましたし、一度に3人に癒しを与えられるようにもなりました。それに新しい力も得ることができましたね」
今、僕達は捕虜として捕らえたコボルト達の見張り兼、ケガをしたコボルト達の治療をしている。
といっても、治療は主にヒーラー様がその癒しの力を使ってしてくれているので、見張りとして残った僕とハントさん他、数人のゴブリン達は座って休んでいるだけなのだが・・・。
残りのホブおじさんはじめトラップさん達は、身体の資源の鉱脈へと行っている。現状の人数では完全に鉱脈を3制圧することは難しいので、資源を回収できるだけ集めて、ひとまずは仲間を増やすためだ。
ちなみに、もう1つ残っていた身体の資源は、コボルト戦でも活躍してくれた『ゴブリンメイジ』──通称『メイ爺』へと生まれ変わった。
メイ爺はその名の通り"魔法"を使えるゴブリンだ。トラップさんの時と同じように命の資源を多めに使ったら、力が高い状態でできあがり、最初から火の魔法と眠りの魔法を使えたのだ。
それは、メイ爺が作られたあとに分かったことだったけど、やっぱり僕はそれを最初から知っていた気がする・・・。
そうであったから最後の罠をああいう風に仕掛けるよう、トラップさんにお願いしたのだから──
「コイツガ・・・?オ前ハ、一体ナンナンダ?ナンデソンナコトヲ色々ト知ッテイル?」
ヒーラー様の力を上げたのも、僕はそれを当然のように知っていて、生誕の祭壇で命の資源を消費したらできたのだ。
「なんで・・・って言われても、知っていたとしか言えないんだよなぁ・・・。むしろ、僕が教えてほしいくらいだよ」
「ハア・・・」
ハントさんはまったくもって納得いってない顔だ。
「そのあたりはこの子が生まれた経緯に関係があるのかもしれませんね」
「ん?ヒーラー様は僕が生まれた時のことを知ってるの?」
生誕の儀式を行う際に何かしらの触媒を入れると、その触媒に影響されたゴブリンが生まれることはもう分かっている。
僕が色んなことを知っていたのも、何かしらの触媒が使われているからでは──というのは、僕自信も気になるところだ。
「・・・いえ。それは分かりません」
「え?どうして・・・」
僕の記憶では、僕が生まれたときには、もうすでにヒーラー様も、ホブおじさんも、ハントさんもいたはずだ。それなのに分からないというのはなぜ──
あれ?そういえば僕はいつ生まれたんだ?
あの、薄暗い洞窟で重たい瞼を開いた前の・・・。人間に襲われたという前の記憶があやふやだ。
「私達はこれまでずっとあの洞窟で暮らしていたはずですが、あなたがいつからいたのかは知らない・・・。いえ、記憶にないのです」
「・・・ソウイエバ、ソンナ気ガスルナ・・・」
どういうことだろう?
僕の記憶もあやふや。ヒーラー様もハントさんも記憶にないと言う。それなら、僕はどこから来たというのか。
「・・・確かなことは言えませんが、私の力が強くなったように、あなた自身もその力を生誕の祭壇で強めてみたら、もしかしたら何かが分かるかも・・・、そんな気がします」
ヒーラー様はコボルト達への癒しを続けながら、僕の目を真っ直ぐ見つめそう言った。
トラップさんも、メイ爺も、ヒーラー様も。力を上げたことにより、より強い力と能力を手に入れていた。 僕にも何か能力が現れる可能性があるのでは?
それがもしかしたら僕の秘密を知るきっかけになるかもしれない。よし!ぜひやってみよう。
「そうです!良かったらあなたにも何か、呼び名──名前を付けませんか?いつまでも"この子"とか"お前"では呼びづらいですし、それが切っ掛けで何か分かるかもしれませんよ?」
唐突にヒーラー様がそんなことを言い出した。
「え?名前?」
確かに、嫌──というわけではないけど、"この子"や"お前"じゃこの先人数が増えたときに誰のことか分かりづらくなるかもしれない。魔物に名前ってのも何だか可笑しな気もするけど、ちょっとワクワクもする。
「俺モ、オ前ニ"ハント"トイウ呼ビ名ヲツケテモラッタカラナ。イインジャナイカ?」
ハントさんやトラップさん、メイ爺の通称を決めたのは確かに僕だが、何のヒネリもない安直な名前でなんだか申し訳ない。
「・・・それで、どんな名前が良いですか?」
「えっ??!ぼ、僕が決めるの?」
いやいやいや。それはないでしょ!
自分で自分の名前を決めるなんて・・・、嫌すぎる。安直な名前はなんか嫌だし、気取りすぎても恥ずかしいし・・・。
「そ、それは、ヒーラー様が決めてくれない?僕だとほら・・・、名付けの才能がないというか・・・、さすがに恥ずかしいので・・・」
「ふふ。そうですか?・・・では、どうしましょうか・・・」
ヒーラー様は癒しの手を止め、腕を組んで考え始める。
良かった──。決めてくれるみたいだ。願わくば恥ずかしくなくカッコイイ名前でありますように!
「そうですね・・・。色々と知っているあなたに相応しく、私達に勝利を導いてくれたあなたに相応しい名前──」
ドキドキ──ワクワク──
「──では、『シダ』という名はいかがでしょうか?」
シダ──僕の名前。
安直でもなく、恥ずかしくもなく、呼びやすく言葉の響きも良い。なかなか素敵な名前じゃないかな?
「・・・うん!いいね、それに決めた。ヒーラー様。素敵な名前をありがとう!」
「ふふ。気に入って頂けましたか?それは良かったです」
僕の名前はシダ。シダ。シダ。うん!いいね。
「ヒーラー様・・・。ソノ名前デイイノデスカ・・・?」
「ん?なに?ハントさん、羨ましいの?」
「イヤ・・・、ソウジャナクテナ・・・」
もう~、なんだよハントさん。自分の名前が安直(つけたのは僕だけど・・・)だからってイチャモンつけようとでもいうの?
「ええ。『シダ』はゴブリンの"神"の名です。私達に力を与え、私達に勝利を齎したこの子にピッタリな名前だと思います」
「──えっ・・・か、神さ──ま??
「ええ、そうですね。この子が私の力を高める方法があると言うもので試しにやってみたのですが、効果はご覧の通り。癒しの力自体も強くなりましたし、一度に3人に癒しを与えられるようにもなりました。それに新しい力も得ることができましたね」
今、僕達は捕虜として捕らえたコボルト達の見張り兼、ケガをしたコボルト達の治療をしている。
といっても、治療は主にヒーラー様がその癒しの力を使ってしてくれているので、見張りとして残った僕とハントさん他、数人のゴブリン達は座って休んでいるだけなのだが・・・。
残りのホブおじさんはじめトラップさん達は、身体の資源の鉱脈へと行っている。現状の人数では完全に鉱脈を3制圧することは難しいので、資源を回収できるだけ集めて、ひとまずは仲間を増やすためだ。
ちなみに、もう1つ残っていた身体の資源は、コボルト戦でも活躍してくれた『ゴブリンメイジ』──通称『メイ爺』へと生まれ変わった。
メイ爺はその名の通り"魔法"を使えるゴブリンだ。トラップさんの時と同じように命の資源を多めに使ったら、力が高い状態でできあがり、最初から火の魔法と眠りの魔法を使えたのだ。
それは、メイ爺が作られたあとに分かったことだったけど、やっぱり僕はそれを最初から知っていた気がする・・・。
そうであったから最後の罠をああいう風に仕掛けるよう、トラップさんにお願いしたのだから──
「コイツガ・・・?オ前ハ、一体ナンナンダ?ナンデソンナコトヲ色々ト知ッテイル?」
ヒーラー様の力を上げたのも、僕はそれを当然のように知っていて、生誕の祭壇で命の資源を消費したらできたのだ。
「なんで・・・って言われても、知っていたとしか言えないんだよなぁ・・・。むしろ、僕が教えてほしいくらいだよ」
「ハア・・・」
ハントさんはまったくもって納得いってない顔だ。
「そのあたりはこの子が生まれた経緯に関係があるのかもしれませんね」
「ん?ヒーラー様は僕が生まれた時のことを知ってるの?」
生誕の儀式を行う際に何かしらの触媒を入れると、その触媒に影響されたゴブリンが生まれることはもう分かっている。
僕が色んなことを知っていたのも、何かしらの触媒が使われているからでは──というのは、僕自信も気になるところだ。
「・・・いえ。それは分かりません」
「え?どうして・・・」
僕の記憶では、僕が生まれたときには、もうすでにヒーラー様も、ホブおじさんも、ハントさんもいたはずだ。それなのに分からないというのはなぜ──
あれ?そういえば僕はいつ生まれたんだ?
あの、薄暗い洞窟で重たい瞼を開いた前の・・・。人間に襲われたという前の記憶があやふやだ。
「私達はこれまでずっとあの洞窟で暮らしていたはずですが、あなたがいつからいたのかは知らない・・・。いえ、記憶にないのです」
「・・・ソウイエバ、ソンナ気ガスルナ・・・」
どういうことだろう?
僕の記憶もあやふや。ヒーラー様もハントさんも記憶にないと言う。それなら、僕はどこから来たというのか。
「・・・確かなことは言えませんが、私の力が強くなったように、あなた自身もその力を生誕の祭壇で強めてみたら、もしかしたら何かが分かるかも・・・、そんな気がします」
ヒーラー様はコボルト達への癒しを続けながら、僕の目を真っ直ぐ見つめそう言った。
トラップさんも、メイ爺も、ヒーラー様も。力を上げたことにより、より強い力と能力を手に入れていた。 僕にも何か能力が現れる可能性があるのでは?
それがもしかしたら僕の秘密を知るきっかけになるかもしれない。よし!ぜひやってみよう。
「そうです!良かったらあなたにも何か、呼び名──名前を付けませんか?いつまでも"この子"とか"お前"では呼びづらいですし、それが切っ掛けで何か分かるかもしれませんよ?」
唐突にヒーラー様がそんなことを言い出した。
「え?名前?」
確かに、嫌──というわけではないけど、"この子"や"お前"じゃこの先人数が増えたときに誰のことか分かりづらくなるかもしれない。魔物に名前ってのも何だか可笑しな気もするけど、ちょっとワクワクもする。
「俺モ、オ前ニ"ハント"トイウ呼ビ名ヲツケテモラッタカラナ。イインジャナイカ?」
ハントさんやトラップさん、メイ爺の通称を決めたのは確かに僕だが、何のヒネリもない安直な名前でなんだか申し訳ない。
「・・・それで、どんな名前が良いですか?」
「えっ??!ぼ、僕が決めるの?」
いやいやいや。それはないでしょ!
自分で自分の名前を決めるなんて・・・、嫌すぎる。安直な名前はなんか嫌だし、気取りすぎても恥ずかしいし・・・。
「そ、それは、ヒーラー様が決めてくれない?僕だとほら・・・、名付けの才能がないというか・・・、さすがに恥ずかしいので・・・」
「ふふ。そうですか?・・・では、どうしましょうか・・・」
ヒーラー様は癒しの手を止め、腕を組んで考え始める。
良かった──。決めてくれるみたいだ。願わくば恥ずかしくなくカッコイイ名前でありますように!
「そうですね・・・。色々と知っているあなたに相応しく、私達に勝利を導いてくれたあなたに相応しい名前──」
ドキドキ──ワクワク──
「──では、『シダ』という名はいかがでしょうか?」
シダ──僕の名前。
安直でもなく、恥ずかしくもなく、呼びやすく言葉の響きも良い。なかなか素敵な名前じゃないかな?
「・・・うん!いいね、それに決めた。ヒーラー様。素敵な名前をありがとう!」
「ふふ。気に入って頂けましたか?それは良かったです」
僕の名前はシダ。シダ。シダ。うん!いいね。
「ヒーラー様・・・。ソノ名前デイイノデスカ・・・?」
「ん?なに?ハントさん、羨ましいの?」
「イヤ・・・、ソウジャナクテナ・・・」
もう~、なんだよハントさん。自分の名前が安直(つけたのは僕だけど・・・)だからってイチャモンつけようとでもいうの?
「ええ。『シダ』はゴブリンの"神"の名です。私達に力を与え、私達に勝利を齎したこの子にピッタリな名前だと思います」
「──えっ・・・か、神さ──ま??
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