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里帰り①
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結婚式も済んで落ち着いてきた頃に、私は一度実家に帰省することにした。
侯爵家の使用人たちも私のことをとても心配してくれていたから、無事な姿を見せるための帰省だ。
屋敷に到着するや否や、マリーに強く抱き締められた。幼いころから私のお世話をしてくれていたメイドのマリーは、私の顔を見るなり涙を流して無事を喜んでくれて、私も涙が溢れてしまった。マリーと私が落ち着くと、それを見ていた他の使用人たちも銘々に声を掛けてくれて、私は再会できた喜びを噛み締めた。
元の私の部屋でマリーにお茶を入れてもらう。私の好きだったフレーバーのお茶が、当たり前のように目の前に用意されて心が温かくなった。――ここに帰ってこれたんだ。
今日はマリーとじっくり話したいからと、マリーにもソファーに座ってもらった。
私が異世界で結婚をして幸せに暮らしていることをこの屋敷の使用人たちは知っているけれど、マリーには私の口から報告したかったのだ。
「心配を掛けてごめんね。突然あんなことになったけれど、あちらで素敵な人と出会うことが出来たの。異世界に行くこともまた運命だったのかなって思うのよ」
マリーは私が今とても幸せだと言うと、涙を流しながら祝福してくれた。
「お嬢様があの王子と売女のせいで異世界に飛ばされたと聞いた時は、二人とも殺してやりたいほど憎みましたが、結果的にあの王子と結婚せずに済んで、心から愛する素敵な伴侶と巡り合うことが出来たと聞いて、マリーは嬉しくて仕方がありません」
途中怖いことを言っていたけれど、私を想ってのことなのでスルーすることにした。
しかしネトリ男爵令嬢はさておき、ピエール様に関しては色々あったけれど今は和解している。それにこの世界とあちらの世界を私が自由に行き来出来るのは、ピエール様のおかげでもある。そのために、多大なお力を発揮してくださったし、今では夫の良き研究仲間であるので、ピエール様の名誉のためにもフォローしておかなければならない。せめて私の身内だけでも、異世界で心を入れ替えて頑張っているピエール様を許して上げて欲しい。所謂ハニートラップに引っ掛かってしまったのだし、ある意味被害者とも言える。彼もまたたくさんの物を失ったのだから。あちらの世界で再会した日、ピエール様は一度死んで生まれ変わったのだ。私もケビンもそれを応援したいと心から思っているから、マリーには知っておいてもらいたい。
「あらまあ……。あの王子も異世界に行っていたんですね」
こちらの世界ではピエール様は王族籍からの除名になったあと、行方不明だということになっているそうだ。あちらの世界と行き来出来る魔法陣があることは、この世界でもあちらの世界でも侯爵家と国王陛下のみが知っている国家機密であるため、使用人のマリーは知らなかった。でもマリーは、この世界の第二の母と慕うほど私を大切にしてくれていたから、マリーにだけは知っていてもらいたいと、特別に打ち明ける許可をもらったのだ。
「お嬢様をあんな目に遭わせた王子をすぐに許すことは出来ませんが、お嬢様が自由にあちらとこちらを行き来出来るようにしてくれたことだけは感謝せねばなりませんね」
私に対して過保護気味であるマリーは少し辛辣なところがあるけれど、それが私のことを大切に思ってくれているからこそだということが分かるから、私は彼女が大好きなのだ。
生まれ変わったピエール様は、あの変わり者と称される大魔導士であるケビンの理論をキチンと理解することが出来る。それを一般人にも分かりやすく噛み砕いて説明することに長けた唯一の人物で、今では親友同士と言っても過言ではない間柄になっている。
ピエール様は元々、努力を惜しまない勉強熱心な人間だったのだ。何事もなければ、こちらの世界で兄である王太子様を支え、国を治めることに尽力していたことだろう。それが今では異世界で魔術師として腕を振るっているのだから人生とは何が起こるか分からないものだ。
第二王子という立場は、私の想像するよりもたくさんの苦悩があったに違いない。婚約者だった頃は自分の忙しさを理由にそれに気付かないふりをしていた。少し考えたら分かることなのに、向き合ってこなかったのだ。婚約者として心の拠り所であるべき立場であったにも拘らず、寂しい思いをさせてしまっていたことは未だに申し訳なく思っている。ピエール様本人は、自分も婚約者を大切にしていなかったからお互い様だと言ってくれているし、和解後はもうそのような話はしていないけれど、私は心の隅に留めて忘れないようにしているのだ。周りの人たちにもう二度とそのような思いをさせないために。
侯爵家の使用人たちも私のことをとても心配してくれていたから、無事な姿を見せるための帰省だ。
屋敷に到着するや否や、マリーに強く抱き締められた。幼いころから私のお世話をしてくれていたメイドのマリーは、私の顔を見るなり涙を流して無事を喜んでくれて、私も涙が溢れてしまった。マリーと私が落ち着くと、それを見ていた他の使用人たちも銘々に声を掛けてくれて、私は再会できた喜びを噛み締めた。
元の私の部屋でマリーにお茶を入れてもらう。私の好きだったフレーバーのお茶が、当たり前のように目の前に用意されて心が温かくなった。――ここに帰ってこれたんだ。
今日はマリーとじっくり話したいからと、マリーにもソファーに座ってもらった。
私が異世界で結婚をして幸せに暮らしていることをこの屋敷の使用人たちは知っているけれど、マリーには私の口から報告したかったのだ。
「心配を掛けてごめんね。突然あんなことになったけれど、あちらで素敵な人と出会うことが出来たの。異世界に行くこともまた運命だったのかなって思うのよ」
マリーは私が今とても幸せだと言うと、涙を流しながら祝福してくれた。
「お嬢様があの王子と売女のせいで異世界に飛ばされたと聞いた時は、二人とも殺してやりたいほど憎みましたが、結果的にあの王子と結婚せずに済んで、心から愛する素敵な伴侶と巡り合うことが出来たと聞いて、マリーは嬉しくて仕方がありません」
途中怖いことを言っていたけれど、私を想ってのことなのでスルーすることにした。
しかしネトリ男爵令嬢はさておき、ピエール様に関しては色々あったけれど今は和解している。それにこの世界とあちらの世界を私が自由に行き来出来るのは、ピエール様のおかげでもある。そのために、多大なお力を発揮してくださったし、今では夫の良き研究仲間であるので、ピエール様の名誉のためにもフォローしておかなければならない。せめて私の身内だけでも、異世界で心を入れ替えて頑張っているピエール様を許して上げて欲しい。所謂ハニートラップに引っ掛かってしまったのだし、ある意味被害者とも言える。彼もまたたくさんの物を失ったのだから。あちらの世界で再会した日、ピエール様は一度死んで生まれ変わったのだ。私もケビンもそれを応援したいと心から思っているから、マリーには知っておいてもらいたい。
「あらまあ……。あの王子も異世界に行っていたんですね」
こちらの世界ではピエール様は王族籍からの除名になったあと、行方不明だということになっているそうだ。あちらの世界と行き来出来る魔法陣があることは、この世界でもあちらの世界でも侯爵家と国王陛下のみが知っている国家機密であるため、使用人のマリーは知らなかった。でもマリーは、この世界の第二の母と慕うほど私を大切にしてくれていたから、マリーにだけは知っていてもらいたいと、特別に打ち明ける許可をもらったのだ。
「お嬢様をあんな目に遭わせた王子をすぐに許すことは出来ませんが、お嬢様が自由にあちらとこちらを行き来出来るようにしてくれたことだけは感謝せねばなりませんね」
私に対して過保護気味であるマリーは少し辛辣なところがあるけれど、それが私のことを大切に思ってくれているからこそだということが分かるから、私は彼女が大好きなのだ。
生まれ変わったピエール様は、あの変わり者と称される大魔導士であるケビンの理論をキチンと理解することが出来る。それを一般人にも分かりやすく噛み砕いて説明することに長けた唯一の人物で、今では親友同士と言っても過言ではない間柄になっている。
ピエール様は元々、努力を惜しまない勉強熱心な人間だったのだ。何事もなければ、こちらの世界で兄である王太子様を支え、国を治めることに尽力していたことだろう。それが今では異世界で魔術師として腕を振るっているのだから人生とは何が起こるか分からないものだ。
第二王子という立場は、私の想像するよりもたくさんの苦悩があったに違いない。婚約者だった頃は自分の忙しさを理由にそれに気付かないふりをしていた。少し考えたら分かることなのに、向き合ってこなかったのだ。婚約者として心の拠り所であるべき立場であったにも拘らず、寂しい思いをさせてしまっていたことは未だに申し訳なく思っている。ピエール様本人は、自分も婚約者を大切にしていなかったからお互い様だと言ってくれているし、和解後はもうそのような話はしていないけれど、私は心の隅に留めて忘れないようにしているのだ。周りの人たちにもう二度とそのような思いをさせないために。
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