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第四篇 ~蘇芳に染まらない情熱の空~
92項
しおりを挟むセイランに関してはソラに任せるという方針が決まったところで、カムフは思案顔を浮かべつつレイラに視線を送る。
「じゃあおれたちはおれたちで、手分けしてロゼさんの情報が他に何かないか探してみよう」
カムフを見つめながらレイラは肩を竦め、苦笑交じりに言った。
「そうね。もしもロゼも王都に来ているならあの見た目だし、目撃者がいても可笑しくはないものね」
と、話がまとまったところで、突如ソラがソファから立ち上がり叫ぶ。
「じゃあ話し合いは終わり! 一旦休憩にしよ!」
そう言うと彼女は急ぐようにしてベッドへ再度、倒れ込んだ。
直後には大きな欠伸が聞こえてくる。
「ってわけで……おやすみ」
「ちょっとソラ、流石に着替えてから寝なさいよね」
と、レイラが忠告するのも空しく。ソラは最早寝息を立てて眠ってしまっていた。
現在はギリギリ早朝と言った時刻。寝るには早すぎるが、流石に仕方がないとカムフは眉尻を下げながら言った。
「まあまあ…ここ何日も色々とあったし、車での移動もあって疲労が溜まってたんだろ。おれたちだって似たようなもんだし……今はゆっくり休ませようぜ」
「って言うけど…ソラの取っ散らかった靴やら鞄やらを片付けるのはわたしなんだからね!」
頬を膨らませながらそんな文句を洩らすレイラであるが、彼女も相当疲れていたのだろう。大した片付けもせずにベッドへ潜り込むとそのまま寝入ってしまっていた。
「まだ朝食も食べてないってのに……けどまあ、アレは集団移動エナ車とは全然違う乗り心地だったからなあ。疲れるのも無理はないよな……」
そう呟くカムフも欠伸が一つ漏れ出る。
彼は不意に昨夜―――随分と肝が冷えた車での移動のせいで一睡も出来なかったことを思い返しつつ、自分に宛がわれたベッドに座り込んだ。
隣のベッドではキースもまた、うつらうつらと今にも寝てしまいそうなほど頭を垂れていた。
「疲れた頭で行動してても何も入ってこないしさ……キースも、今眠れるうちに眠っとくか」
カムフはキースにそう語り掛け、キースは大きく頷く。
それから間もなくしてカムフは全てのカーテンを閉め回って、もう一度ベッドに潜り込んだ。
睡魔は充分にあり、目を閉じれば直ぐにでも眠れそうであった。
が、しかし。カムフはそんな睡魔にも勝る大きな懸念のせいでなかなか眠れずにいた。
(灰燼の怪物がエナ使いで……そして偶然にもロゼさんもエナ使いだったなんて……)
カムフはふと、灰燼の怪物のせいでエクソルティスの門が封鎖されようとしているこの状況下で、ロゼは現在どうしているのだろうと考える。
(ただでさえロゼさんはいろんな意味で結構目立つからな…不審者に間違えられそうな気するし、世間は知らなくても共通点がある以上、自然と警戒もしてるだろうな……だとすると、今は何処かに身を潜めているか、もしくは目立たないよう変装している可能性もあるよな…)
そうなると、ロゼを探すのは案外一筋縄ではいかないのかもしれない。
そんな不安を抱いているうちに、カムフもまた静かに寝息を立て眠ってしまっていた。
仮眠を取ったつもりだったソラたち。
そうして、皆がほぼ同時に目を覚ました時刻は―――夕方。しかも今まさに日が暮れようとしている時刻であった。
「流石に寝すぎじゃない、わたしたちっ!?」
懐中時計を片手に飛び起きたレイラは慌てて身支度をしようとする。
その一方でソラはまだ布団の中だ。
「いつまで寝てんのよ! とっとと起きなさいよ!」
そう言いながらソラのベッドに近付くと、レイラは彼女の背中をべしべしと叩き起こそうとする。
「もうちょっと…寝ててもいー?」
しかし、未だ夢心地のソラは起きる様子もなく。更に布団へと潜り込んでしまう始末。
「一刻も早くロゼを探すんじゃなかったの!?」
『ロゼ』の一言がよっぽど効いたようで。ソラは眠そうにしていたのが嘘のように飛び起きた。
「そうだった!!」
起きるなりソラは慌ただしく靴を履き、鞄を持つ。
「じゃああたし、ちょっとアマゾナイト本部の方に行って来る!」
そう言ってソラはすぐさま部屋を飛び出そうとする。
と、そのときだ。
「ストーップ!」
カムフが制止の声を上げた。
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