22 / 683
第一幕 転生歌姫のはじまり
第一幕 エピローグ 『再び始まる…』
しおりを挟む
カイトさんと別れた私は一旦宿に帰ってきた。
打ち上げの時間までまだ少し時間があるけど、さすがに歩き疲れたからちょっと休憩。
服は…そのままでいいか。
約束の時間が近づくまで部屋でのんびりした。
「え~と、『金の麦穂亭』だっけ…たしか、この辺りのはず」
約束の時間も目前となり、私は宿を出て南地区の飲食店や酒場が多く集まる地域で目的のお店を探している。
「お~い、カティアちゃん!」
声をかけられ振り向くと、『鳶』の面々が。
カイトさんも一緒だ。
「あ、皆さん、さっきぶりです」
「カティアさん、昼は挨拶もせず済みませんでした…」
「あ、リーゼさん。復活されましたか」
「ええ…済みません。どうも魔法の事となると周りが見えなくなってしまいまして…」
「あはは…でも、熱中できる事があるのは羨ましいです」
「そう言ってもらえると…あ、ところであの[変転流転]なんですけど、ちょっと詠唱で分からないところがありまぐえっ!?」
あ、デジャヴュ…
「はいはいダメよ、リーゼ。せっかくもとに戻ったのに、また手間をかけさせないでちょ~だい」
「ちょっ…レイラ…さん、く、苦しい…」
レイラさんに首根っこを掴まれて引きずられて行った…
…後で話を聞いてあげようかな。
みんなと一緒にお店の前まで来ると、うちの父さん達もちょうど到着したところだった。
「おう、カティア。『鳶』の連中も一緒か」
「うん、ちょうどそこで一緒になったの」
「あら~?カティアちゃんは~、カイトくんとデートしてたんでしょう~?」
「なっ!?なぜそれを!?」
「…あらあら~?冗談のつもりだったのだけど~本当に~?」
し、しまった!
ハメられた!?(※自爆です)
「そういえば~、そのケープ見たことないわ~。もしかして~プレゼントかしら~?」
「ち、違うよ、これは自分で買ったんだよっ!」
「『これは』~?」
い、いかん、喋れば喋るほど墓穴を掘ってしまう!
ここは戦略的撤退を…!
「まあまあアネッサさん、そのくらいにしてあげて下さい」
と、レイラさんが根掘り葉掘り聞こうと迫ってくる姉さんを止めてくれた。
おお!救いの神はここにいたか!
「お店の前で立ち話も何ですし、中でじっくりたっぷり根掘り葉掘り聞かせてもらいましょう?」
「あら~、それもそうね~」
どうやら救いの神はいなかったらしい…
店内には他のお客さんもいたが、隅の一角が予約席になっていた。
皆着席してそれぞれ飲み物を注文する。
そして、皆の飲み物が出揃ったタイミングで、父さんが乾杯の音頭を取る。
「そんじゃあ飲物はみんな回ったか?…よし。では、依頼の成功と、新しい出会いを祝して。乾杯!」
「「「かんぱ~い!(ッス)」」」
父さんの掛け声に合わせて、それぞれ手にしたコップを掲げたあと、お互いに軽くぶつけあってカツン、と打ち鳴らす。
私はコップに口を付けて、なみなみと注がれたビールをぐびぐび、と一気に半分ほど飲み干す。
ぷはぁ!
う~ん、美味しい!
【私】は今まで殆ど酒精の無いものしか飲んだことが無かったけど、【俺】は結構お酒は好きな方だったので、久し振りに飲めて嬉しいな。
味わいも前世と比べて大きな違いはない。
もちろん、前世の方が洗練されてると思うけど、これはこれでクラフトビールみたいな感じでとても美味しいと思う。
一杯目は早々に飲み終わり、早くも二杯目を注文した。
「…おい、カティア。そんな一気に飲んで大丈夫か?あまり強いのは飲んだ事ないだろ?」
と、ティダ兄さんが心配そうに聞いてくるけど、大袈裟だな~。
「大丈夫だよ、ビールなんて大して強くもないでしょう?」
「…そうか?なら、いいんだが…」
ーー 五分後 ーー
「それれ~、カイろさんわ~ろうなんれすぅ~?こいびろとかって~いるんれすか~?」
あはは~、何か気分いい~。
あれ?
何でカイトさんはそんなにドン引きしてるのかしらん?
(なぁ…あいつあんなに酒に弱かったか?)
(…普段飲んでるのはジュースみたいなもんだったからな)
(あら~、だからティダも言ってたのに~。でもこれはこれで面白いわ~)
(カティアちゃんにも、意外な弱点があったッスね~)
「…なあ、そろそろやめておいたらどうだ?大分酔ってるぞ?」
酔ってないですって、【俺】はお酒に強かったんだから~。
「なにいっれるんれすか~、ビールなんかれ酔うわけないじゃないれすか~。れ?ろうなんれす?」
「…いや、いないが…」
「そうれすか~。奇遇れすね~、わらしもいないんれすよ~。『お互い様』れすね~?」
そっか~、いないんだ~。
良かった~。
「…そうだな…」
「じゃあ~、わらしのことっれ~、どうおもいまふ~?」
「あ、ああ、可愛いと思うぞ」
「やっら~!じゃあ~、ちゅう~しれくらさい~」
「何でそうなるっ!?」
「え~い!ひざまくりゃっ!きゃははっ!」
「お、おいっ!?…もう、無茶苦茶だ…」
「…アネッサ。[解毒]頼む。流石にこれ以上は忍びない…」
「そうね~。もう少し見たい気もするけど~、カイト君もドン引きしてるし~。…はい、[解毒]っと」
「…はっ!?…あ、あれ?私はいったい何を…?」
…二杯目のビールに口を付けたところまでは覚えてるんだけど?
取り敢えず謎なのは…
「…何でカイトさんに膝枕されてるんです?」
「…覚えてないのか?」
「…全く」
いつまでも膝枕してるわけにもいかないので身体を起こすと、皆がこちらに注目していた。
うう…恥ずかしい。
いったい私は何をしたんだ!?
「カイト君を口説いてたわね~」
「!?」
「こんな可愛い子にゴロゴロにゃんにゃんすり寄られて役得ね。でもだめね、カイト。女の子に恥をかかせるものじゃないわ」
ゴロゴロにゃんにゃん!?
ほんと何してたのっ!?
「…カイトさん」
「あ、ああ、何だ?」
「忘れてください」
「…善処しよう」
「カティア。お前、酒はやめておけ」
「そうね~。カイト君と二人きりの時に~しておきなさい~」
「…いや、俺の前でも困るんだが…」
そ、そんな~!?
お酒が飲めないなんて~…
くっ、初めて転生のデメリットを感じたわ…
そしてカイトさん、ごめんなさいね!?
そんなにドン引きされると、私、泣きます!
「は~い、じゃあカティアちゃんはこちらへ~」
「ささっ、どうぞどうぞ!」
「ううっ…お手柔らかに…って、リーゼさんもですか?」
「ふふ、私だって女の子ですからね。魔法にだけ興味があるわけじゃないんですよ?」
そうですか…
あなたは魔法オタクを貫き通してくれても良いのですよ?
「…でも、別にそんな大した話はないですよ?」
「それじゃあ~、そんなに恥ずかしがることはないわね~」
「ですね。さあ、洗いざらい吐きなさい!」
そして、朝偶然出会って手合わせしたことから、一緒に買い物したことまで、事細かに報告させられた。
「へえ~、プレゼントし合うだなんて。カイトもなかなかやるわね~」
「うふふ~、店員さんナイスよ~」
「…冒険者向けの魔道具店。そんなお店があったんですね。後で場所教えて下さいね」
うう…大したこと無いって言ったけど、やっぱり恥ずかしかったよ。
と言うか、手合わせはともかく、その後は傍から見たら完全にデートにしか見えなかったね…
もう、【俺】の意識の葛藤とか関係なく普通に楽しんでたよ。
そしてリーゼさんは『私も女の子だから』と言ってた割に、やっぱり興味があるのはそっちなんだね…
そんなこんなで賑やかで楽しい時間が過ぎていく。
そんな中、ほろ酔いでご機嫌になった父さんが、何か余興をやれ、とロウエンさんに振る。
「おう、ロウエン。お前、なんか面白ぇことやれや」
「また、無茶振りッスねぇ…まあ、オイラにできるのはこれくらいッスね…」
無茶振りと言いつつ、ロウエンさんは立ち上がって…余っていたコップを回収して重ねていく。
十個くらいあるかな?
そして、重ねたコップを空中に投げる。
バラけながら落ちてくるそれを左右の手で交互に掴んでは投げ掴んでは投げ、と繰り返す。
だんだんとスピードを上げていき、それが限界に達すると…
最後に一つコップを掴んだと思うと、全てのコップがそこに次々と重なって行って、終了。
見事なジャグリングに周りで観ていた他の客からも喝采が上がった。
だが、父さんのコメントは辛辣だ。
「それは見飽きたぞ」
「オイラに一体何を求めてるんスか…」
まあ、一座では見慣れてるからねぇ…
「いや、凄かったですよ!うちも何か出来ればいいんですけど。…あ、そうだ、カイト!あなた確かリュート弾けるでしょ?私お店から借りてくるわ!」
と言って、レイラさんがお店の人にリュートを借りに行った。
このお店、端の方にオルガンみたいな物もあって、これらの楽器は借りられるらしい。
即興で演奏会とか行われたりするそうだ。
それって、凄く楽しそう!
「カイト、借りてきたわよ!」
「まったく、強引だな…」
そう文句を言いつつも、リュートを構えてじゃらん、と軽く音を出して調子を確かめる姿がとても様になっていて格好いい。
「リクエストは?」
「そうねぇ、何がいいかしら?」
「あ、じゃああれはどうです?『気まぐれな神』とか。今回はオキュパロスさまにご縁が有りましたし」
と、リーゼさんが提案する。
そうだね、今回オキュパロス様の助力が無かったら、こうして打ち上げする事も出来なかった。
…あまりその呼び名は好きじゃ無いらしいことは黙っておこう。
「ああ、わかった」
じゃら~ん、と掻き鳴らすと店内の注目が集まる。
巧みな指さばきで弦を弾き、軽快なリズムの、どこかユーモラスな曲が流れ始めた。
オキュパロス様の様々な逸話を面白おかしく歌にしたもので、他の神々をモチーフにした楽曲と共に広く大衆に親しまれている。
店内は大いに盛り上がり、たくさんの人々が手拍子でリズムを取り始めた。
「おお、こいつぁ凄えな!玄人はだしってもんだ。おい、ロウエン、お前負けてんぞ」
「切なくなるんでここで比較に出さないで欲しいッス…」
本当、素敵な演奏…
私は手拍子に加わることもなく、じっくりと聞き惚れていた。
やがて曲はクライマックスを迎え、ジャンッ!と小気味良い音と共に終了した。
店内中は拍手喝采の嵐。
大いに盛り上がる。
「凄い凄い!カイトさん!カッコ良かったです!」
「ふふ、ありがとう」
「全く大したもんだ。おい、カティア!ここで負けてちゃあ、一座の名折れだ。つぎはお前が歌って、度肝を抜いてやんな!」
「あ、だったら!私カイトさんの演奏で歌ってみたいな!」
「ああ、いいぞ。俺も楽しみだな」
「あら~、素敵じゃない~(初めての共同作業ね~)」
「やった!カティアちゃんの歌が聞けるなんて、ラッキー!」
「ふふ、楽しみですね」
そうして開かれた即興の音楽会。
お店の人の好意もあって簡易な舞台が整えられた。
即席の舞台に立つ私。
その少し後ろにリュートを携えた彼。
私が視線を向けると彼は微かに微笑んで頷く。
ひと呼吸おくと、彼は指でトントントン、とリュートを軽く叩いてリズムをとってから、伴奏を始める。
そしてタイミングを合わせて、私は歌声を紡ぎ始めた。
最初は囁くように静かに、徐々に感情を込めながら大きくなっていくその歌声は店中に響き渡り…
そうして、楽しいひとときが過ぎていく。
楽しい仲間たち。
新しい出会い。
まだ厄介事もありそうだけど、きっと何とかなる。
【俺】も【私】も同じ私。
まだ色々と悩むかもしれないけど、きっと何とかなる。
数奇な運命に導かれ、再び始まった人生。
めいっぱい楽しまないと損だよね。
よし!また明日も頑張ろう!
ーー 第一幕 転生歌姫のはじまり 閉幕 ーー
打ち上げの時間までまだ少し時間があるけど、さすがに歩き疲れたからちょっと休憩。
服は…そのままでいいか。
約束の時間が近づくまで部屋でのんびりした。
「え~と、『金の麦穂亭』だっけ…たしか、この辺りのはず」
約束の時間も目前となり、私は宿を出て南地区の飲食店や酒場が多く集まる地域で目的のお店を探している。
「お~い、カティアちゃん!」
声をかけられ振り向くと、『鳶』の面々が。
カイトさんも一緒だ。
「あ、皆さん、さっきぶりです」
「カティアさん、昼は挨拶もせず済みませんでした…」
「あ、リーゼさん。復活されましたか」
「ええ…済みません。どうも魔法の事となると周りが見えなくなってしまいまして…」
「あはは…でも、熱中できる事があるのは羨ましいです」
「そう言ってもらえると…あ、ところであの[変転流転]なんですけど、ちょっと詠唱で分からないところがありまぐえっ!?」
あ、デジャヴュ…
「はいはいダメよ、リーゼ。せっかくもとに戻ったのに、また手間をかけさせないでちょ~だい」
「ちょっ…レイラ…さん、く、苦しい…」
レイラさんに首根っこを掴まれて引きずられて行った…
…後で話を聞いてあげようかな。
みんなと一緒にお店の前まで来ると、うちの父さん達もちょうど到着したところだった。
「おう、カティア。『鳶』の連中も一緒か」
「うん、ちょうどそこで一緒になったの」
「あら~?カティアちゃんは~、カイトくんとデートしてたんでしょう~?」
「なっ!?なぜそれを!?」
「…あらあら~?冗談のつもりだったのだけど~本当に~?」
し、しまった!
ハメられた!?(※自爆です)
「そういえば~、そのケープ見たことないわ~。もしかして~プレゼントかしら~?」
「ち、違うよ、これは自分で買ったんだよっ!」
「『これは』~?」
い、いかん、喋れば喋るほど墓穴を掘ってしまう!
ここは戦略的撤退を…!
「まあまあアネッサさん、そのくらいにしてあげて下さい」
と、レイラさんが根掘り葉掘り聞こうと迫ってくる姉さんを止めてくれた。
おお!救いの神はここにいたか!
「お店の前で立ち話も何ですし、中でじっくりたっぷり根掘り葉掘り聞かせてもらいましょう?」
「あら~、それもそうね~」
どうやら救いの神はいなかったらしい…
店内には他のお客さんもいたが、隅の一角が予約席になっていた。
皆着席してそれぞれ飲み物を注文する。
そして、皆の飲み物が出揃ったタイミングで、父さんが乾杯の音頭を取る。
「そんじゃあ飲物はみんな回ったか?…よし。では、依頼の成功と、新しい出会いを祝して。乾杯!」
「「「かんぱ~い!(ッス)」」」
父さんの掛け声に合わせて、それぞれ手にしたコップを掲げたあと、お互いに軽くぶつけあってカツン、と打ち鳴らす。
私はコップに口を付けて、なみなみと注がれたビールをぐびぐび、と一気に半分ほど飲み干す。
ぷはぁ!
う~ん、美味しい!
【私】は今まで殆ど酒精の無いものしか飲んだことが無かったけど、【俺】は結構お酒は好きな方だったので、久し振りに飲めて嬉しいな。
味わいも前世と比べて大きな違いはない。
もちろん、前世の方が洗練されてると思うけど、これはこれでクラフトビールみたいな感じでとても美味しいと思う。
一杯目は早々に飲み終わり、早くも二杯目を注文した。
「…おい、カティア。そんな一気に飲んで大丈夫か?あまり強いのは飲んだ事ないだろ?」
と、ティダ兄さんが心配そうに聞いてくるけど、大袈裟だな~。
「大丈夫だよ、ビールなんて大して強くもないでしょう?」
「…そうか?なら、いいんだが…」
ーー 五分後 ーー
「それれ~、カイろさんわ~ろうなんれすぅ~?こいびろとかって~いるんれすか~?」
あはは~、何か気分いい~。
あれ?
何でカイトさんはそんなにドン引きしてるのかしらん?
(なぁ…あいつあんなに酒に弱かったか?)
(…普段飲んでるのはジュースみたいなもんだったからな)
(あら~、だからティダも言ってたのに~。でもこれはこれで面白いわ~)
(カティアちゃんにも、意外な弱点があったッスね~)
「…なあ、そろそろやめておいたらどうだ?大分酔ってるぞ?」
酔ってないですって、【俺】はお酒に強かったんだから~。
「なにいっれるんれすか~、ビールなんかれ酔うわけないじゃないれすか~。れ?ろうなんれす?」
「…いや、いないが…」
「そうれすか~。奇遇れすね~、わらしもいないんれすよ~。『お互い様』れすね~?」
そっか~、いないんだ~。
良かった~。
「…そうだな…」
「じゃあ~、わらしのことっれ~、どうおもいまふ~?」
「あ、ああ、可愛いと思うぞ」
「やっら~!じゃあ~、ちゅう~しれくらさい~」
「何でそうなるっ!?」
「え~い!ひざまくりゃっ!きゃははっ!」
「お、おいっ!?…もう、無茶苦茶だ…」
「…アネッサ。[解毒]頼む。流石にこれ以上は忍びない…」
「そうね~。もう少し見たい気もするけど~、カイト君もドン引きしてるし~。…はい、[解毒]っと」
「…はっ!?…あ、あれ?私はいったい何を…?」
…二杯目のビールに口を付けたところまでは覚えてるんだけど?
取り敢えず謎なのは…
「…何でカイトさんに膝枕されてるんです?」
「…覚えてないのか?」
「…全く」
いつまでも膝枕してるわけにもいかないので身体を起こすと、皆がこちらに注目していた。
うう…恥ずかしい。
いったい私は何をしたんだ!?
「カイト君を口説いてたわね~」
「!?」
「こんな可愛い子にゴロゴロにゃんにゃんすり寄られて役得ね。でもだめね、カイト。女の子に恥をかかせるものじゃないわ」
ゴロゴロにゃんにゃん!?
ほんと何してたのっ!?
「…カイトさん」
「あ、ああ、何だ?」
「忘れてください」
「…善処しよう」
「カティア。お前、酒はやめておけ」
「そうね~。カイト君と二人きりの時に~しておきなさい~」
「…いや、俺の前でも困るんだが…」
そ、そんな~!?
お酒が飲めないなんて~…
くっ、初めて転生のデメリットを感じたわ…
そしてカイトさん、ごめんなさいね!?
そんなにドン引きされると、私、泣きます!
「は~い、じゃあカティアちゃんはこちらへ~」
「ささっ、どうぞどうぞ!」
「ううっ…お手柔らかに…って、リーゼさんもですか?」
「ふふ、私だって女の子ですからね。魔法にだけ興味があるわけじゃないんですよ?」
そうですか…
あなたは魔法オタクを貫き通してくれても良いのですよ?
「…でも、別にそんな大した話はないですよ?」
「それじゃあ~、そんなに恥ずかしがることはないわね~」
「ですね。さあ、洗いざらい吐きなさい!」
そして、朝偶然出会って手合わせしたことから、一緒に買い物したことまで、事細かに報告させられた。
「へえ~、プレゼントし合うだなんて。カイトもなかなかやるわね~」
「うふふ~、店員さんナイスよ~」
「…冒険者向けの魔道具店。そんなお店があったんですね。後で場所教えて下さいね」
うう…大したこと無いって言ったけど、やっぱり恥ずかしかったよ。
と言うか、手合わせはともかく、その後は傍から見たら完全にデートにしか見えなかったね…
もう、【俺】の意識の葛藤とか関係なく普通に楽しんでたよ。
そしてリーゼさんは『私も女の子だから』と言ってた割に、やっぱり興味があるのはそっちなんだね…
そんなこんなで賑やかで楽しい時間が過ぎていく。
そんな中、ほろ酔いでご機嫌になった父さんが、何か余興をやれ、とロウエンさんに振る。
「おう、ロウエン。お前、なんか面白ぇことやれや」
「また、無茶振りッスねぇ…まあ、オイラにできるのはこれくらいッスね…」
無茶振りと言いつつ、ロウエンさんは立ち上がって…余っていたコップを回収して重ねていく。
十個くらいあるかな?
そして、重ねたコップを空中に投げる。
バラけながら落ちてくるそれを左右の手で交互に掴んでは投げ掴んでは投げ、と繰り返す。
だんだんとスピードを上げていき、それが限界に達すると…
最後に一つコップを掴んだと思うと、全てのコップがそこに次々と重なって行って、終了。
見事なジャグリングに周りで観ていた他の客からも喝采が上がった。
だが、父さんのコメントは辛辣だ。
「それは見飽きたぞ」
「オイラに一体何を求めてるんスか…」
まあ、一座では見慣れてるからねぇ…
「いや、凄かったですよ!うちも何か出来ればいいんですけど。…あ、そうだ、カイト!あなた確かリュート弾けるでしょ?私お店から借りてくるわ!」
と言って、レイラさんがお店の人にリュートを借りに行った。
このお店、端の方にオルガンみたいな物もあって、これらの楽器は借りられるらしい。
即興で演奏会とか行われたりするそうだ。
それって、凄く楽しそう!
「カイト、借りてきたわよ!」
「まったく、強引だな…」
そう文句を言いつつも、リュートを構えてじゃらん、と軽く音を出して調子を確かめる姿がとても様になっていて格好いい。
「リクエストは?」
「そうねぇ、何がいいかしら?」
「あ、じゃああれはどうです?『気まぐれな神』とか。今回はオキュパロスさまにご縁が有りましたし」
と、リーゼさんが提案する。
そうだね、今回オキュパロス様の助力が無かったら、こうして打ち上げする事も出来なかった。
…あまりその呼び名は好きじゃ無いらしいことは黙っておこう。
「ああ、わかった」
じゃら~ん、と掻き鳴らすと店内の注目が集まる。
巧みな指さばきで弦を弾き、軽快なリズムの、どこかユーモラスな曲が流れ始めた。
オキュパロス様の様々な逸話を面白おかしく歌にしたもので、他の神々をモチーフにした楽曲と共に広く大衆に親しまれている。
店内は大いに盛り上がり、たくさんの人々が手拍子でリズムを取り始めた。
「おお、こいつぁ凄えな!玄人はだしってもんだ。おい、ロウエン、お前負けてんぞ」
「切なくなるんでここで比較に出さないで欲しいッス…」
本当、素敵な演奏…
私は手拍子に加わることもなく、じっくりと聞き惚れていた。
やがて曲はクライマックスを迎え、ジャンッ!と小気味良い音と共に終了した。
店内中は拍手喝采の嵐。
大いに盛り上がる。
「凄い凄い!カイトさん!カッコ良かったです!」
「ふふ、ありがとう」
「全く大したもんだ。おい、カティア!ここで負けてちゃあ、一座の名折れだ。つぎはお前が歌って、度肝を抜いてやんな!」
「あ、だったら!私カイトさんの演奏で歌ってみたいな!」
「ああ、いいぞ。俺も楽しみだな」
「あら~、素敵じゃない~(初めての共同作業ね~)」
「やった!カティアちゃんの歌が聞けるなんて、ラッキー!」
「ふふ、楽しみですね」
そうして開かれた即興の音楽会。
お店の人の好意もあって簡易な舞台が整えられた。
即席の舞台に立つ私。
その少し後ろにリュートを携えた彼。
私が視線を向けると彼は微かに微笑んで頷く。
ひと呼吸おくと、彼は指でトントントン、とリュートを軽く叩いてリズムをとってから、伴奏を始める。
そしてタイミングを合わせて、私は歌声を紡ぎ始めた。
最初は囁くように静かに、徐々に感情を込めながら大きくなっていくその歌声は店中に響き渡り…
そうして、楽しいひとときが過ぎていく。
楽しい仲間たち。
新しい出会い。
まだ厄介事もありそうだけど、きっと何とかなる。
【俺】も【私】も同じ私。
まだ色々と悩むかもしれないけど、きっと何とかなる。
数奇な運命に導かれ、再び始まった人生。
めいっぱい楽しまないと損だよね。
よし!また明日も頑張ろう!
ーー 第一幕 転生歌姫のはじまり 閉幕 ーー
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる