【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
23 / 683
幕間

幕間1 『ダードレイ』

しおりを挟む
 アネッサのヤツが言うには、俺の娘は恋をしているらしい。

 あのお転婆娘がそんじょそこいらの男にそう安々と惚れるもんかねぇ?
 ましてや昨日今日会ったばかりの男になんて。

 まあ、俺には乙女心なんて複雑怪奇なものはサッパリ理解出来ねえんだが。

 ともかく、血が繋がっていないとは言え大事な一人娘には違い無え。
 あいつを悲しませる様なヤツには娘はやれん。
 父親としてしっかりと見定めなければならねえ。


 だが、そう意気込んではみたものの、その相手、カイトの野郎はなかなか大した奴だと思う。

 剣の腕もさる事ながら、あの若さであの胆力。
 リーダーとしての資質も十分だし、状況把握や情報分析の手際を見るに頭もキレる。
 パーティーの良好な雰囲気から、性格も悪くないことが伺える。
 ちょいと真面目すぎるような気もするがな。

 それに、あの剣の型、鳶というパーティー名。
 もしかしたら…

 まあ、結局のところ、俺はあまり口出ししない方がいいか、て結論に至っている。



 俺の娘、カティアは不思議なやつだ。

 教えれば教えただけ何でも吸収しちまう才能の塊。
 それに奢らず何時だって一生懸命だし、気さくで人当たりがよく誰からも好かれる。
 とんでもねぇ美貌なのに、本人にあまり自覚が無えから危なっかしいところでもあるんだがな。

 ともかく、カティアは自慢の娘ってやつだ。
 こう言うのを親馬鹿って言うのかねえ…

 そんな自慢の娘だが、ある日急に雰囲気、と言うか存在感が変わった。
 ティダの奴は神聖な雰囲気に感じたなんて言っていたが、まさにその通りだった。

 なんと、あの失われたはずのエメリール様のシギルを受け継いでいるってんだから驚きだ。
 シギル持ちって言やぁ大抵は王族の血筋に現れるもんだが、エメリール様のシギルを受け継ぐ王家の血筋は途絶えて久しい。
 アネッサが随分興奮していたが、正に歴史的発見ってやつだ。

 だが、失われた王家の血筋だろうが何だろうが、あいつが俺の娘である事に変わりは無え。

 あいつは騒がれることを嫌って秘密にして欲しいって言ってたが、もしその秘密のせいで厄介事に巻き込まれるのであれば、俺は父親としてあいつを守るだけだ。


 俺はあいつに感謝してるんだ。

 十五年前、俺は傭兵として戦乱の世を渡り歩き、戦いに明け暮れる人生にすっかり心が荒んでいた。

 そんなときに、まだ赤ん坊だったあいつに出会ったんだ。

 瀕死の母親から託された、まだ赤ん坊だったあいつをその手に抱いたとき、その小さな命の暖かさに俺の心は救われた。
 命を奪う事しかできなかった血塗られた手でも、救える命がある。
 優しさとか愛情とか、人として当たり前のものを取り戻したんだ。

 その時から、カティアを守り育て、幸せにすることが俺の使命となった。


 他の連中も似たようなもんだろう。

 俺がカティアを連れて、傭兵団を辞めるって言ったとき、殆どのやつが付いてきやがった。
 大の大人がまだ小さい赤ん坊に救いを求めるなんざ情けねえ限りじゃねえか。

 やれ乳だ、やれオムツだ右往左往する光景は滑稽そのものだったぜ。
 何人か女性団員も居たはずなんだが、男以上に男らしいヤツばかりで役に立たねえのは俺らと大して変わらなかった。
 ババアが居てくれたから良かったが、その時に力関係が出来上がっちまったのは誤算だった。
 おかげで未だに誰も頭が上がらねえ。

 傭兵を辞めた俺達はその後もどうにかして食い繋がなけりゃならなかった。
 多少の貯えはあるもののそれだって何も稼ぎが無けりゃああっと言う間に尽きちまう。

 誰かが劇はどうかなんて言ってきた。
 最初は何言ってんだ?なんて思ったが、ちょうど大戦も終結し、戦乱で荒んだ人たちを楽しませるのも悪くないとも思った。
 もちろん、ずぶの素人が最初からそう上手く出来るはずも無え。
 だが、傭兵仕込の殺陣なんかは結構ウケたし、だんだんと様になってきて少しづつ客も集まるようになってきた。
 ロウエンのジャグリングみてえに、一芸を持ってるやつは合間に披露したりなんかして、そんなふうに試行錯誤しながらも、途中シクスティンのやつも加わって軌道に乗ってくると、確かな手応えを感じるようになってきた。

 俺の、いや一座の大事な娘であるカティアもすくすくと成長していき、いつの頃からかあいつも舞台に立つようになった。
 そして、その神がかった歌声は観客を虜にし、あっと言う間に一座の看板スターになっちまった。
 演技はからっきしだったが。



 俺にはサッパリ分からねえが、アネッサが言うにはカイトとはいい雰囲気らしい。
 いずれ俺の手を離れて行く時が来るのも近いのかも知れねえな。

 だが、それまでは俺の娘として守らなければならねえ。

 いつかその役割を、あいつが選んだ男に託すその時まで。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...