60 / 683
第三幕 転生歌姫の新たなる旅立ち
第三幕 11 『昇格』
しおりを挟む「ねえ父さん、私、父さんの気持ち分かっちゃったよ」
凱旋も終わって宿に帰り、皆でまったりしている時、ふと今日の出来事を思い出して父さんに話しかける。
ばあちゃんに預けていたミーティアは、今はカイトさんとロビーの隅っこで遊んでいる。
どうやらばあちゃんにオモチャを買ってもらったらしい。
積み木やヌイグルミでおままごとみたいな事をしているようだ。
「…何だ?藪から棒に」
「二つ名ってさぁ…恥ずかしいよね…」
「…ああ、アレか。…そうだな、誰が考えたんだろうな、あの慣習。Aランクには漏れなく付いてくるという…」
「まださ、『剛刃』とか『閃刃』とかはいいじゃない?私も『歌姫』とかだったらまだ納得できたと思うんだよね」
「…『星光の歌姫』だったか?」
「やめてっ!その名を呼ばないで!ルビを振らないで!」
思わず頭を振って叫びながら突っ伏してしまう。
「…現実逃避しても、あれだけ大々的にぶち上げちまったからなぁ…もうすっかり知れ渡ってんだろ」
そうだよな~、広場を埋め尽くす程の人だ。
住民のかなりの割合があの場にいただろう。
もはや噂を止める方法などありはしない。
「ま、諦めろ。そのうち慣れるさ」
「…父さんは慣れたの?」
「…すまん」
「何がそんなに嫌なんだ?格好いい二つ名じゃないか」
そっか~。
ティダ兄的にはアリなんだね。
…じゃあやっぱ駄目じゃん。
はぁ~、今更ジタバタしてもしょうが無いか。
もう忘れよう。
「それよりもさ、二つ名なんて話になったのも、リファーナ様が私は確実にAに昇格するだろう、って言ったからなんだけど…それも試験無しで」
「そりゃそうだろうな。あれだけの活躍をしておいて昇格しない、なんてこたぁねえだろ」
「そう言うものなの?」
「そう言うもんだ。実力に見合わないランクのままなのはギルドも嫌がるだろうしな」
「じゃあ、姉さんもAランクになろうよ」
「い~や~よ~」
「いいじゃない、仲間になろうよ~。私が二つ名考えるからさ」
「やめて~、あんなの付けられたら生きていけないわ~」
そこまでなの!?
既に付けられた私はどうすりゃいいのさ…
ミーティアと一緒に部屋に戻って、お風呂にも入って今日の疲れが癒やされる。
あとは、寝るだけだ。
「ミーティア、おやすみなさい」
「おやすみ~、ママ。きょうはおつかれさまでした、なの~」
「あら、ありがとう。ミーティアもお利口さんでお留守番できて偉かったよ」
なでりなでり。
にぱ~。
「えへへ~」
「さ、もう寝なさい」
「は~い」
…
……
………
す~、す~、と寝息が聞こえてきた。
どうやら眠ったようだ。
さて、私はステータスでも確認しておこうかな。
=======================
【基本項目】
名前 :カティア
年齢 :15
種族 :人間(女神の眷族)
クラス:ディーヴァ
レベル:45
生命値:1,853 / 1,853
魔力 :3,401 / 3,401
筋力 :305
体力 :196
敏捷 :512
器用 :272
知力 :403
【魔法】 ▼
【スキル】▼
【賞罰】
■請負人相互扶助組合
ランク:B(A内定)
技量認定(戦闘):上級
技量認定(採取):中級
【特記】
■エメリールの加護(魂の守護)
※即死攻撃完全無効化
■エメリールの印
※発動時全ステータス +300
※常駐時全ステータス +100
※発動効果[葬送]:アンデッド特攻(極)
■エメリナの加護(慈愛の御手)
※治癒系魔法の効果増(極)
■エメリリアの加護(勝利の旗手)
※戦闘時の味方の能力値増(大)
■称号:星光の歌姫
【装備】
=======================
お~、結構レベルが上がってるね~。
あとは…
あ、リナ姉さん、リリア姉さんの加護が追加されてるね。
説明も詳細になってる。
ん?
印の効果が記載されてる…
[葬送]…アンデッド特攻ってなってるけど、これで異界の魂も滅する事が出来たってことかな。
あとは…
ああ!?
こんなところにも二つ名が!?
魂にすら刻まれるというのか…
何て重いものを背負ってしまったんだ…
はあ…
もう寝よ…
ん?
ああ、例の夢か。
「こんにちは、お姉ちゃん」
予想通り、もう一人の【私】に話しかけられる。
「こんにちは。また少し大きくなったね」
前回よりちょっとだけ成長したようだ。
もう少ししたら私に追いつくだろう。
「今回はお疲れ様、大変だったね」
「そうだね。でも誰も死なずに済んで良かったよ」
「ふふ、大活躍だったものね。『星光の歌姫』さん?」
「もういいって…それに、それは自爆だよ?キミは私なんだから。顔が引きっってるじゃないか」
「うくっ…自分で口にして思った以上にダメージが大きかったよ…」
「「はぁ…」」
「それはそうと!早くカイトさんに言わないと、もう時間ないよ?」
「…それも自爆だなぁ。もともとはキミの感情なんだよ?」
「むむ…それはそうだけど…でも、今の主体はお姉ちゃんなんだから、ビシッとしてもらわないと!」
「何という理不尽…分かったよ、頑張ってみるよ。…でも、いざ話をしようとすると怖くなっちゃって」
「何も告白ってわけじゃないんだよ?」
「…そっちはそっちでどうなのかなぁ?」
「ま、まだ早いんじゃないかな…?」
「「……」」
「ダメだね、私たちって…」
「「はぁ…」」
なんだか情けなくなってきたよ…
よく考えたら、これってただの独り言だよねぇ…
どっちも私なんだから…
自問自答して解決する類の悩みなら良かったんだけど。
数日後。
私はミーティアを連れてギルドに向かっていた。
今回の対軍団戦の報酬を受け取るためだ。
ここ数日、街を歩いていると色々と声をかけられるようになった。
もともと私の顔はそこそこ知られていたが、あの凱旋以来さらに有名人になってしまったのだ。
幸いにも取り囲まれたりはしないが、まあ常識がある住民たちで良かったよ。
ミーティアもいつも私と一緒にいるもんだから、彼女もすっかり有名人だ。
もともと愛らしい容姿ということもあって、道行く人、特にお爺ちゃんお婆ちゃんから大人気で、よくお菓子をもらったりなんかする。
素直で愛想もいいからね~。
と言うことで、人々の注目を浴びながらギルドまでやって来た。
「こんにちは~、スーリャさん」
「おねえちゃん、こんにちは!」
「こんにちはカティアさん、ミーティアちゃん。今日は魔軍討伐戦の報酬の受け渡しでしょうか」
「はい、その件でお伺いしました」
「承知しました。…カティアさんがいらしたらギルド長の方へ案内するように言われております。こちらへどうぞ。」
…ああ、リファーナ様が言っていたとおりかな?
Aランクへの昇格。
少なくとも昇格資格を得るのは確実だと。
今回案内されるのは、以前の会議室のような所ではなく、ギルド長の執務室らしい。
コンコン。
「ギルド長、カティアさんをお連れしました」
「ああ、入っていいぞ」
「失礼します」
スーリャさんに案内されて室内に入る。
いかにも組織のトップが使う執務室といった風情で、前世で言うところの社長室のようなイメージだ。
…まあ、そんなところに入ったことはないんだけど。
「こんにちは、ガルガさん」
「おじちゃん、こんにちは~」
「おお、ミーティアもいっしょか、よく来たな!」
普段は貫禄があって怖がる人もいるけど、相好を崩すととても優しそうな雰囲気になる。
まるで親戚のオジサンのようだ。
「さて、カティアよ。お前を呼んだのは他でもない…」
「…昇格、ですか?」
「その通りだ。前回の魔軍討伐における目覚ましい活躍。その貢献度を算定したが、充分にAランクへの昇格要件を満たすものだ」
「ありがとうございます」
「ママ、すごいの!」
まあ、ここまでは想定内。
問題は無条件に昇格なのかどうか。
…いや、真の問題は、あの二つ名が正式に授与されてしまうのかどうかだ!
「私も現場にいたのでな。お前の活躍はこの目でしっかりと見せてもらったよ」
私は、リファーナ様の指揮下だったので当日ガルガさんには会っていないけど、遊撃部隊以外の冒険者の指揮はこの人がとっていたはず。
「そして、ギルドとしては今回の活躍自体が充分にAランクとして相応しいものであると判断した。よって、昇格試験は免除。今この時をもってAランクへの昇格を認める」
!…くっ、これで昇格は確定。
あとは、アレがどうなるか…
「更に、だ。侯爵閣下よりSランクへの推薦の話が上がっている」
「え、Sランク…ですか?」
当たり前だけど、閣下にはもう報告が行ったんだね。
しかし、Sランクか…ピンと来ないな~?
「そうだ。あれだけの戦闘で一人の死者も出さないというのは、まさに英雄と言うに相応しい成果だろう。だが、こちらについてはすぐに決められるものではない。本部に推薦を上げてから、代表者会議を経て承認されれば、という事だ」
「そうですか…まあ、あまりピンと来てませんし、どっちでもいいですよ」
「ふむ。まあ、カティアは名誉欲とは無縁か」
そうだね。
まあ、高ランクのほうが引退一時金なんかもかなりの物になるし、昇格できるものならしておきたい。
「ま、そちらは気長に待ってれば良い。あとは、Aランク昇格に伴い、ギルドから称号が贈られるのだが…」
!!
来たっ!
「今回はリファーナ様、ルシェーラ様たっての希望でな、すでに『星光の歌姫』で決まっておる」
はあーーっ!!?
もう決定なんですか!?
「…拒否権は?」
「ない。無理だ。諦めろ。大人の事情を察しなさい」
そ、そこまで言う!?
ああ、権力者が厨二病を患うとこのような悲劇が生まれるんだね…
ええいっ!!
もうヤケクソだっ!
私が『星光の歌姫』、カティアだよっ!!
…
……
………は、恥ずかしーーっ!!
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる