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第七幕 転生歌姫と王都大祭
第七幕 16 『武神祭〜三日目 モーリス商会にて』
しおりを挟む「う~、くやしいですわ…」
「まあまあ、ルシェーラちゃん…」
悔しがるルシェーラをレティがなだめてるんだけど…ホントに負けず嫌いだよねぇ。
しかし腕相撲に負けて悔しがる侯爵令嬢とはいったい…
「でも、あの人…ラウルさんも言ってたけど、実際の戦闘だとどうなるか分からないんじゃない?」
と私もフォローしておく。
「…いえ、私はまだまだAランクの方と戦えるだけの実力はありませんわ」
「そうかなぁ…?でも、仮にそうだとしても、ルシェーラならすぐになれると思うけど」
「そうでしょうか…?でも、何れにしても日々鍛錬あるのみですわ!」
ゴオーッ!と目が燃えているかのようだ。
…この娘は一体何を目指しているのであろうか?
とは思うものの、結構彼女には助けられてるし…そもそも私も似たような立場なので何も言えないわ。
「とにかく、今日はお祭りなんだから切り替えてもっと楽しみましょ」
「そうですわね…すみませんでした」
「ううん、大丈夫だよ。じゃあ行こっか」
そして当初の目的地である西大広場へと歩を進める。
外周部に向かうにつれて賑わいは更に増し、第二城壁を超えるともはや真っ直ぐ歩く事も出来ない程だった。
「凄い人だね…」
「ほんと。でも、これぞ祭り!って感じがするよ」
「そうですわね、この雰囲気も楽しまないと」
そうやって人混みを掻き分けて歩くことしばし、私達は目的地の西大広場へとやって来た。
ここは商工業が盛んな第一城壁内地域の中でも特に大きな店が集まるところで、アズール商会を始めとした有力商会の本店…確かモーリス商会の王都本店もここにあったと思う。
三~四階建ての、この世界ではかなり大規模な建物…前世で言うところのデパートのようなものが軒を連ね、普段から買い物客でごった返すところである。
「もしかして、モーリス商会の方で何かやってるの?」
「お!カティア、ご明察だね。あっちだよ!」
レティを先頭に進んでいくと、何やら背の高い柵で囲まれたブースがあり、その入口と思しきに場所には長い行列が出来ていた。
入口には看板が立ててあり、その内容を見てみると…
「『モーリス商会技術開発部 成果発表会』…?」
「そゆこと。結構並んでるからスタッフ用の入口から入れてもらおうか。こっちだよ」
どうやらブースはモーリス商会の建物の前に設営されていて、建物とブースの間にスタッフ用の通用口が設けられているみたい。
そこには商会員らしき人が立っていた。
「すみません、こちらは関係者以外は…って、お嬢様じゃないですか」
「お嬢様じゃなくて『会長』ね!」
「は、はぁ、すみません…それで、今日はご友人の方達とお祭りを楽しんでくるのでは?」
「そうだよ。で、ウチの出展も見てもらおうかな、と思ってさ」
「ああ、なるほど。ではご案内いたしましょうか?」
「ううん、大丈夫。私が案内するから。みんな忙しいでしょ。あ、でも今リディーはいるかな?彼も忙しいかもだけど…」
「副会長なら今は休憩中なので大丈夫だと思いますよ。いま商会の方にいらっしゃいます」
「そか。ありがとう」
そう言って私達は商会の中に入れてもらった。
一~二階は店舗スペースになっているみたいだけど、そこは素通りして更に上の階に向う。
「リディーさんって副会長なんだ?」
「そう。技術開発部門長と兼任ね。最近は色々と任せて負担をかけちゃってるから、もう少し有能な人材が欲しいところだね…」
そう言いながらレティは三階にある部屋の扉をノックする。
どうやらここがリディーさんの執務室のようだ。
コンコン。
「どうぞ、開いてますよ」
「お邪魔しま~す」
「失礼しますわ」
「お仕事中すみません…」
レティの後に続いて私達も部屋の中にお邪魔する。
「何だ、レティか。それに皆さんもお揃いで」
「何だ、とはご挨拶ね。もっと会長を敬いなさいよ」
「折角の祭りなんだから、こんなところに顔出していないでもっと色々見回ってくれば良いだろうに」
「いや、カティアとルシェーラちゃんにウチの催し物を案内しようと思ってさ。今回の責任者はリディーだから一応挨拶がてら許可をもらってからと思ってね」
「律儀なやつだな…会長なんだから堂々と見ていけばいいだろ。でも、まあ折角お二人にお越しいただいたのですから、私がご案内いたしましょう」
「え、いいよいいよ。休憩中でしょ」
「そうなんだけど、今日は特に他にやることもないしな。それに今回の催しはレティはあまり関わってないだろ?説明なら俺の方が適任だな」
「…そぉ?じゃあお願いしようかな」
という事でリディーさんに案内してもらうことになったんだけど…
(レティシアさん、何だか嬉しそうですわ)
(…そうだね。そしてルシェーラも何だか嬉しそうだよ)
(だって…お二人の関係を見てると、ワクワクしません?)
(ホント好きだよね…)
確かにルシェーラの言うとおり、レティは何だか嬉しそうにしているけど…どうなんだろうね?
例えそういうことなんだとしても…彼女はまだ自分の気持ちには気付いていないだろう。
(まあ、暖かく見守ろうじゃないの)
(そうですわね。今後も目が離せませんわ!)
「?ルシェーラちゃん、どうしたの?なんだかニヤニヤしてるような…」
「いえいえ、何でもありませんわ」
「そう?じゃあ早速見に行こうか!」
そしてモーリス商会の催し物を行っているブースまでやって来た。
リディーさんが今回の催しについての説明をしてくれる。
「さて、今回の催しなんですが…我がモーリス商会の技術開発部門で行っている数々の研究成果や試作品などを展示しております」
「鉄道開発で培った技術とかを応用してね。いろいろ活用することを模索してるんだよ。その成果発表ってことね」
リディーさんの説明をレティが補足する。
うん、いいコンビだね。
「では、先ずはこちらから。これは…皆さんも試作品をお使い頂いてるのでご存知かもしれませんが、通信の魔道具ですね」
と最初に案内したくれたのは、例の通話の魔道具。
私達が持ってるものと見た目はそれほど変わらないが…
「皆さんがお持ちのものは直接端末間を繋いで通話を行っており、通話できる相手が限られますが…今研究しているのは中継局を介して多数の相手と通信が行えるものを目指してます」
うん。
まんま前世の電話だね。
これは実用化が待ち遠しいね。
「試作品は通話できる場所の範囲が限られるという事でしたが、それの解決の目処は立っているんですか?」
と質問してみる。
今のところ王都周辺とイスパルナで通信できないということはなかったけど。
「方向性としては…端末の感度を高め、地脈ではなく空気中の魔素を媒介とする事で解決できるのではないかと考えております。ノイズの除去などまだまだ課題はありますが」
「カティアに紹介してもらったプルシアさんの協力もあってね。解決の糸口が見えてきたって感じ」
「あ、そうなんだ、力になれたみたいでよかったよ。プルシアさんは今どちらに?」
「確かもう王都に来てるはずだよ。たぶんアズール商会にいるんじゃないかな?」
「そっか~。じゃあ後で会いに行ってみようかな」
カイトとミーティアも一緒に連れてけば喜んでくれるかもしれない。
そうすると明日かな?
久しぶりの再会を楽しみにしつつ、引き続きリディーさんに案内されて他の出展も見て回る。
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