【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
170 / 683
第七幕 転生歌姫と王都大祭

第七幕 18 『武神祭〜四日目 思い出』

しおりを挟む
 武神祭は丁度真ん中の四日目。
 人出は衰えるどころか、一番の催し物である武神杯が明日から始まるということもあってか、更に混雑を増しているように見える。


 今日はカイト、ミーティア、そして…

「おねえさまとお出かけ、たのしみです!」

 異母妹のクラーナも連れてお祭り見学の予定である。
 私とクラーナは王城から、カイトとミーティアのいる劇団の邸に向うことになってる。

「クラーナは今日は何か見たいものはある?」

 先日聞いた時は劇団が見たいと言ってたが、それはもう見たので改めて聞いてみた。
 私の問にクラーナは、ん~、む~、と可愛らしく唸って悩んでいる。

「ふふ…まあ、街を歩きながら面白そうなものを見つければいいかな?」

「はい!まちをあるいたことはないのでたのしみです!」

 お姫様はそうそう街中を歩いたりはしないか。
 まだ小さいから、どこか王城の外に移動するにしても馬車だろうし。
 でも今回許可が出るあたり、私がイメージしていた王族よりはゆるいと思う。





 クラーナと手を繋いで王城を出発する。
 私は例によって魔法薬で髪の色を変えてるし、クラーナはまだお披露目もしていないので王都民には顔を知られていない。
 もちろん少し離れたところにはケイトリンとオズマの護衛コンビの他、クラーナの護衛騎士もついてきている。


 そして、八番街に向っているのだが…色々な露天を見る度に「あれはなんです?」「こっちは?」などとクラーナの興味の赴くままに寄り道してたりするので、その歩みは遅い。
 いろいろ見せてあげたいのは山々なんだけど、待ち合わせもあるから、クラーナをやんわりと窘める。

「クラーナ?後でゆっくり見れるから。ミーティア達も待っているし、今は待ち合わせ場所に向かわないとね?」

「あ…すみません、おねえさま。ミーティアちゃんをまたせちゃ、わるいですものね」

 うんうん、直ぐに理解してくれて良い子だね~。

 ナデナデ。
 にぱー。


 そして、今度は寄り道せずに…心持ち足早に、でもクラーナの歩調も気にしながら待ち合わせ場所に向かうのだった。














「ミーティアちゃん!おはよう!」

「ママ!クラーナちゃん!おはよう!」

「カイト、お待たせ~」

「おはよう、二人とも」

 邸に来た私達が中に入ると、玄関先で二人が待っていたので挨拶を交わす。

「カイトは初めてだったよね。この子が私の妹のクラーナだよ。クラーナ、この人は私の…え~と」

 まだ正式じゃないけど、婚約者…で良いんだよね?
 私がちょっと言葉に詰まっていると、カイトがクラーナに自己紹介する。

「はじめまして、クラーナ。俺は君のお姉さんの婚約者でテオフィルスと言うんだ。よろしくな」

 と、しゃがんで目線を合わせながら言う。

「まあ!おねえさまの?じゃあ、わたくしのおにいさまになるのですね!」

「う、うん、そうなるかな?」

 いや、疑問系じゃなくて、そうなるんだけど。
 改めて言われるとちょっと気恥ずかしい。

「あら?でも…おねえさまはさっき、おにいさまのことを『カイト』とおっしゃってましたわ?」

「あ~…そうだな、街を歩くときは『カイト』と名乗ってるんだ。だから、今日はカイトと呼んでくれ」

「わかりました!『おしのび』ですわね!ではカイトおにいさま、とおよびしますわ!」

 理解が早いねぇ。
 クラーナは実年齢よりもかなり賢いと思う。

 と、ちょいちょい、とミーティアが私の手を引っ張る。

「?…どうしたの?ミーティア」

「パパのお名前は、ほんとはテオ…フィルス?って言うの?」

「あぁ…そうだね。え~と、でも普段はカイトって呼べば良いと思うよ」

「うん!でも、ミーティアはパパってよぶからだいじょうぶなの」

 ああ、確かに。


 とにかく紹介も終わったので早速街へ繰り出すことに。
 けど…今日はどこに行こうかな?

「う~ん、何を見に行こっか?子供たちが楽しめそうな催しはあったかな…?」

「じゃあ、少し離れてるが…六番街に行ってみないか?」

「六番街と言うと…エメリール神殿があるとこだね」

「ああ。南大広場でもいろいろやってるみたいだが…神殿の近くに緑地公園があるだろう?」

「うん。私はまだ行ったことないけど、聞いたことはあるね」

「そこにな、子供向けの遊具なんかが設営されてるらしいんだ」

「へえ~…じゃあミーティアやクラーナでも楽しめるかな?」

「だと思う」

「じゃあ、露店散策しつつそこを目指しましょうか」

「「は~い!」」

 元気いっぱいに二人揃って返事をする。
 ん~、可愛いねぇ…


 そして、目的地が決定したので六番街に向かって歩き始めた。










 はい、と言うわけでやって参りました六番街の緑地公園です。

 ここに至るまで、いくつか気になった露店で買食いしたり、可愛らしいアクセサリーに夢中になったりして祭の雰囲気を堪能したので結構時間がかかったが、まだまだ時間はたっぷりある。

 カイトの情報通り、公園には普段は見られない様々な遊具が設営されて子供連れの家族で大いに賑わってる。

 ブランコや滑り台、ジャングルジムなどの子供向け遊具の他、ちょっとしたアスレチックなんかは大人でも楽しめそうだ。
 聞いた話によると、今回の祭りに合わせて設営されたが、祭が終わっても常設になるみたい。
 つまり、今後は児童公園ってことになるんだね。

「おねえさま!みんなたのしそうです!」

「そうだね、クラーナも好きな遊具で遊んでいいよ」

「はい!ミーティアちゃん、いこっ!」

「うん!」

 といって最初に二人が向かったのは滑り台だ。
 公園の築山を利用して木製の滑り板が設置されており、結構な長さがあるそれを子どもたちは大はしゃぎで滑っている。
 
「並んでるからね、ちゃんと順番を守るんだよ」

「「は~い!」」

 そう言って二人は築山を登っていき順番待ちの列に並んだ。

 カイトと私が下で待っていると、二人が仲良く重なって滑ってきた。

「「きゃーーっ!」」

 歓声を上げてとても楽しそう。
 年相応の無邪気で可愛らしい様子にほっこりする。
 クラーナもお姫様と言っても、他の子とそんなに変わらないね。

「ママ!すごい楽しいの!」

「ねえさま!もういっかい行ってきます!」

「うん、思う存分に楽しんできてね」




 それから何回か滑ってから他の遊具に行くことに。

「つぎはあれ!」

 と言って二人が駆け出した先にあるのはアスレチックだ。
 櫓のようなものが幾つも組まれて、そこに登るための梯子やロープあり、櫓と櫓を繋ぐ吊橋やロープなどが渡されている。
 高さはそれほどでもなく、さらに落ちても大丈夫なようにネットが張ってあり、以前ブレゼンタムで遊んだときよりは幾分安心して見ていられると思う。

「クラーナちゃん、行こっ!」

「うん!」


 ミーティアはスルスルと登っていき、クラーナはややぎこちないながらも、それについていく。
 クラーナもそこそこ運動神経はあるみたいだね。

 そうして二人でどんどんとアスレチックを制覇していくのだが…


「お、おねえさま~!こ、こわいです!」

 櫓の中でも一番高い、塔のようなものの天辺まで登ったは良いものの、怖くなって降りられなくなったみたいだ。

「クラーナちゃん、だいじょうぶだよ!すこしづつ足をかけておりれば!」

 先に下に降りていたミーティアが心配そうに声をかけるが、クラーナは足がすくんで見動きが取れない。


「ありゃ、流石にミーティアみたいにはいかないか……ちょっと助けてくるね」

「ああ、気を付けてな」

 と、カイトに言い残して私はピョンピョンと足場を蹴って櫓を登っていく。

「おねえさま!」

「ふふ、もう大丈夫だよ。さあ、私に捕まって。怖かったら目を瞑ってなさい」

 私にしがみついて来たクラーナを抱え、登ってきたときと同じように何度か足場を蹴りながら一気に下に降りてきた。

 おおーーっ!

 周囲から驚きの声と拍手の音が聞こえる。
 ちょっと目立ってしまったな…

 それにしても、今日はドレスとかじゃなく動きやすい格好でよかったよ。
 スカートであんな動きしてたら見られちゃうからね…

「もう降りてきたよ、クラーナ」

「クラーナちゃん、大丈夫?」

「はい、ありがとうございます、おねえさま!あんなたかいところから…すごいです!」

 と尊敬の眼差しで興奮してお礼を言ってくれた。
 可愛い妹から褒められるのは嬉しいね!





 その後は少し休憩…露店で買ってきたアイスクリームを皆で食べてからまた別の遊具で遊び、今は公園内を散策しているのだが…

「あっちの方…人が集まってるな?」

「あ、ホントだ。何かやってるのかな?」

「ママ!見に行ってみよう!」

 ミーティアに手を引かれて人集りのあるところまでやって来た。
 どうも子供が多いみたい…と思って見てみると、どうやらいくつかの露店が賑わってる様子。
 近づいて露天を覗いてみると…

「ああなるほど、子供向けの露店が集まってるんだね」

「おねえさま、これはなんでしょう?」

「射的だね。ほら、あそこに並んでる景品を弓で狙って、当たったらそれを貰えるみたいだね」

 雰囲気は前世と似たようなものだけど、使うのはもちろん銃ではなく、子供向けのおもちゃみたいな弓矢だ。

「まあ!やってみたいです!」

「ミーティアも!」

「お、お嬢ちゃんたち、やってくかい?」

 こちらに気付いた店員さんが話しかけてくる。
 半銀貨一枚で5回チャレンジできるとのこと。

「じゃあ、このお金を店員さんに渡してあげてね」

「「わ~い!ありがとう!」」



 そして、二人は弓矢をつがえて景品を狙う。
 その目は真剣そのものだが、とても微笑ましい。

「えいっ!…ああ、外れちゃいました」

「むう、ミーティアも…」

「ほら、まだあるから頑張って!」


 最初は扱いに慣れてないのもあって中々当たらなかったが、やがて…

「やった!ママ!当たったよ!!」

 と、ミーティアの最後の矢がヌイグルミに当たったようだ。
 あれは、赤い…ドラゴンかな。
 デフォルメされて可愛らしい感じ。

「お!お嬢ちゃん、おめでとう!はい、どうぞ」

「ありがとう!」

「わあ~、いいなぁ…ミーティアちゃん」

 結局一本も当たらなかったクラーナが羨ましそうに見つめる。
 ちょっと可愛そうだし何か別のものを、と考えてると…

「クラーナちゃん、これあげる!」

「え!?…ううん、それはミーティアちゃんがとったんだから、ミーティアちゃんのものだよ」

 うう…二人ともホントにええ子や…

 と、そんな二人の様子を見ていた店員さんがまた話しかけてきた。

「二人とも良い子だね。ほら、同じものがあるから持ってきな!」

 と、もう一つあった同じヌイグルミを渡してくれた。

「良いんですか?」

「ああ、折角の祭なんだ。楽しい思い出にしてくれたら、こっちも嬉しいからな」

「わあ!ありがとうございます!」

 ヌイグルミを受け取ったクラーナが大喜びでお礼を言った。
 思いがけずサービスしてもらったが、子供好きで親切な店員さんなんだね。

「本当に、ありがとうございます」

 私とカイトもお礼を言ってからその場を後にした。








 そうしてその後も色々見て回って十分にお祭りを満喫し、夕日が街を赤く染める頃になって帰路につく。
 二人とも随分はしゃぎ回って疲れたらしく、私とカイトの背中でそれぞれ寝息を立てている。

 本当はアズール商会にも行きたかったけど…それはまたの機会かな。


 今日がこの子達にとって大切な思い出になってくれるといいな…
 背中に暖かな体温を感じながら、そんな事を思うのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...