【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第八幕 転生歌姫と母娘の絆

第八幕 12 『魔族』

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 そいつは…いわゆる『獣人』だった。

 もともと大柄だったその身体は一回りも二回りも大きくなって2メートルは優に超え、全身が白い獣毛に覆われる。
 その顔も人間離れして、まるで狼のような肉食獣そのものとなる。

 先程までとは比べ物にならない程の闘気を纏い、圧倒的な力を感じさせる。
 手にはヤツ自身の身の丈ほどもある大剣を持っている。


「くはははっ!!まだ名乗ってなかったな!俺は『獣騎士』のラルヴァ!!まぁ、別に覚えなくてもいいぜ?お前らはここで死ぬんだからな!」

「ラルヴァか。ちゃんと覚えておいてやるから安心してくたばっちまいな!」

 流石は父さん、しっかり煽るのは忘れないね。

 だけど、あいつ…ただのハッタリなんかじゃないよ。
 それは父さんもわかってるだろうけど。

 とにかく、生半可な実力の者が相手しても犠牲が増えるだけだ。

「私達エーデルワイスが直接の相手をします!他の人達は支援に徹して下さい!!」

「カティアさん!私も…!」

「「私達も!」」

 ルシェーラとケイトリン、オズマがそう言うが…

「ゴメン。今回ばかりは相手が悪い。前衛は父さん、ティダ兄、カイト、私で行くよ。あれは…『魔族』だ」

 ルシェーラは確かに強い。
 ほぼAランク級の力を持っていると言っても良いだろう。
 実戦経験も急速に積んでいるとは思うが、あれを相手どるにはまだ不十分だと思う。
 その僅かな経験の不足が致命的な隙となりかねないのだ。
 ケイトリンとオズマも、アレの相手は荷が重いだろう。

「その代わり…姉さんやティセラさんたち後衛の護衛をお願い!」

「…分かりましたわ」

「…承知しました」

「分かりましたけど、カティア様が危なくなったら盾にでもなんでもなりますからね!」

 渋々だが納得はしてくれたみたい。
 3人とも、かえって足手まといとなりかねないと思ったのかもしれない。
 だけど、ケイトリンを盾にするわけにはいかないから、しっかりしないとね…


「ふん…どうやら俺たちのことは知ってるみたいだな?」

「かつての『魔王』と同じく、『異界の魂』をその身に降ろした人間でしょう?」

 以前、リル姉さんに聞いた事がある。
 魔王程ではないが、『異界の魂』の隔絶した力を得た異形の者たちだ。

「俺たちは、『黒き魂』と呼んでるがな…まあ、その通りだ。だが、知っているのなら分かるだろう?俺たちが、ただの人間など足下にも及ばん力を持っていることを」

「うん、そうだね。…だから、申し訳ないけど皆で囲んでボコボコにさせてもらよ」

 あんなバケモノ相手に、馬鹿正直に正々堂々一対一なんてやってられません…ってね。

「面白ぇ…やれるもんならやってみな!!」

 かつてないほどの激しい戦いが始まる…!









 



「ぐるぁーーーっ!!!」

 ドゴォッ!!!

 ビリビリと空気を震わす咆哮とともに振り下ろされた大剣の一撃が開戦の合図となる!
 私達は瞬時に散開してそれを躱すが、大きく地面を穿ったその威力に戦慄を覚える。


「いつぞやのオーガエンペラー並み……いや、それ以上のパワーとスピードだな」

「ああ。こりゃあ、骨が折れそうだぜ…」

 オーガエンペラーって、魔軍襲来の時の?
 その時の話は聞いてるけど…父さんが[鬼神降臨]使っても倒しきれなくて、シギルを解放したカイトと協力してようやく倒したんでしょ?

 それよりも上となると……いや、その時は再生能力が尋常じゃなかったから苦戦したんだっけ。
 コイツはどうだろうか…?


「はっ!あんな低俗なヤツと一緒にしてくれるなよ!!俺は人間を超越して生物の進化の到達点に至った存在…『魔族』なんだからな!!」

「なるほどね。以前私を狙った暗殺者が触手の化け物になったのは…その進化に失敗したってことかな?」

「そうだ。魔族にまで到れるのは、この俺のように黒き神に選ばれた者だけだ!さあ、お喋りは終わりだ。そろそろくたばんな!!」

 もう少し情報を引き出したいけど…こっちもミーティアの救出が最優先だから、それほど時間はかけられない。



 そして猛攻が始まる…!

 今度は単発ではなく嵐のような連続攻撃だ。
 掠っただけでも大ダメージは必至。


 しかしこちらだって負けてはいない!

 歴戦の勇士である父さんやティダ兄は流石の安定感で、紙一重でも危なげなく攻撃を回避して反撃の機会を伺っている。
 私は既にディザール様のシギルを常駐状態で発動、カイトも同様だ。
 

 段々とパターンも読めてきた。

 確かに基本スペックは尋常じゃ無さそうだけど…それに頼り切っていて、単調な攻撃はこのメンバーなら問題にならない。

 あとは耐久がどれほどか…

 私を狙った大振りの攻撃を躱しざま、ヤツの脇腹に薙刀で斬りつける!

 ザンッ!!

「ぐあっ!!」

 確かな手応えがあった通り、斬りつけた部分がざっくりと避けて血飛沫があがった!
 見た感じ、即座に再生するということも無い。


 …こんなものなのか?

 いや、そんなはずはない。
 今もなお感じるプレッシャーは、これまで相対したどの敵よりも強大なものだ。

 まだ、力を隠しているはず。

 そう思って見れば、火山が噴火の前に鳴動するかのような不気味なものが蠢いてるように感じられる。
 他の皆もそう思っているのだろう、慎重な姿勢を崩していない。


「くふふっ…なかなかやるじゃないか。流石は神々の眷族とその仲間達だな。これは出し惜しみしては失礼ってもんだなぁ?」


 やはり、まだ本気じゃないか。
 これからが本番ってことだ。

「けっ!随分舐められたもんだな…勿体ぶってねえで、さっさと本気出しな!きっちり畳んでやらぁっ!!」

「言われなくとも……地獄を見せてやるっ!!精々後悔するといいぜっ!!」

 そう宣言したヤツの闘気がさらに強大なものになっていく!

 そして、全身を覆う白い獣毛が漆黒に染まっていき、その体躯もまた膨れ上がる!!



 全く…某宇宙人みたいに3段階目もあったりしないよね!?
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