217 / 683
第八幕 転生歌姫と母娘の絆
第八幕 12 『魔族』
しおりを挟む
そいつは…いわゆる『獣人』だった。
もともと大柄だったその身体は一回りも二回りも大きくなって2メートルは優に超え、全身が白い獣毛に覆われる。
その顔も人間離れして、まるで狼のような肉食獣そのものとなる。
先程までとは比べ物にならない程の闘気を纏い、圧倒的な力を感じさせる。
手にはヤツ自身の身の丈ほどもある大剣を持っている。
「くはははっ!!まだ名乗ってなかったな!俺は『獣騎士』のラルヴァ!!まぁ、別に覚えなくてもいいぜ?お前らはここで死ぬんだからな!」
「ラルヴァか。ちゃんと覚えておいてやるから安心してくたばっちまいな!」
流石は父さん、しっかり煽るのは忘れないね。
だけど、あいつ…ただのハッタリなんかじゃないよ。
それは父さんもわかってるだろうけど。
とにかく、生半可な実力の者が相手しても犠牲が増えるだけだ。
「私達エーデルワイスが直接の相手をします!他の人達は支援に徹して下さい!!」
「カティアさん!私も…!」
「「私達も!」」
ルシェーラとケイトリン、オズマがそう言うが…
「ゴメン。今回ばかりは相手が悪い。前衛は父さん、ティダ兄、カイト、私で行くよ。あれは…『魔族』だ」
ルシェーラは確かに強い。
ほぼAランク級の力を持っていると言っても良いだろう。
実戦経験も急速に積んでいるとは思うが、あれを相手どるにはまだ不十分だと思う。
その僅かな経験の不足が致命的な隙となりかねないのだ。
ケイトリンとオズマも、アレの相手は荷が重いだろう。
「その代わり…姉さんやティセラさんたち後衛の護衛をお願い!」
「…分かりましたわ」
「…承知しました」
「分かりましたけど、カティア様が危なくなったら盾にでもなんでもなりますからね!」
渋々だが納得はしてくれたみたい。
3人とも、かえって足手まといとなりかねないと思ったのかもしれない。
だけど、ケイトリンを盾にするわけにはいかないから、しっかりしないとね…
「ふん…どうやら俺たちのことは知ってるみたいだな?」
「かつての『魔王』と同じく、『異界の魂』をその身に降ろした人間でしょう?」
以前、リル姉さんに聞いた事がある。
魔王程ではないが、『異界の魂』の隔絶した力を得た異形の者たちだ。
「俺たちは、『黒き魂』と呼んでるがな…まあ、その通りだ。だが、知っているのなら分かるだろう?俺たちが、ただの人間など足下にも及ばん力を持っていることを」
「うん、そうだね。…だから、申し訳ないけど皆で囲んでボコボコにさせてもらよ」
あんなバケモノ相手に、馬鹿正直に正々堂々一対一なんてやってられません…ってね。
「面白ぇ…やれるもんならやってみな!!」
かつてないほどの激しい戦いが始まる…!
「ぐるぁーーーっ!!!」
ドゴォッ!!!
ビリビリと空気を震わす咆哮とともに振り下ろされた大剣の一撃が開戦の合図となる!
私達は瞬時に散開してそれを躱すが、大きく地面を穿ったその威力に戦慄を覚える。
「いつぞやのオーガエンペラー並み……いや、それ以上のパワーとスピードだな」
「ああ。こりゃあ、骨が折れそうだぜ…」
オーガエンペラーって、魔軍襲来の時の?
その時の話は聞いてるけど…父さんが[鬼神降臨]使っても倒しきれなくて、印を解放したカイトと協力してようやく倒したんでしょ?
それよりも上となると……いや、その時は再生能力が尋常じゃなかったから苦戦したんだっけ。
コイツはどうだろうか…?
「はっ!あんな低俗なヤツと一緒にしてくれるなよ!!俺は人間を超越して生物の進化の到達点に至った存在…『魔族』なんだからな!!」
「なるほどね。以前私を狙った暗殺者が触手の化け物になったのは…その進化に失敗したってことかな?」
「そうだ。魔族にまで到れるのは、この俺のように黒き神に選ばれた者だけだ!さあ、お喋りは終わりだ。そろそろくたばんな!!」
もう少し情報を引き出したいけど…こっちもミーティアの救出が最優先だから、それほど時間はかけられない。
そして猛攻が始まる…!
今度は単発ではなく嵐のような連続攻撃だ。
掠っただけでも大ダメージは必至。
しかしこちらだって負けてはいない!
歴戦の勇士である父さんやティダ兄は流石の安定感で、紙一重でも危なげなく攻撃を回避して反撃の機会を伺っている。
私は既にディザール様の印を常駐状態で発動、カイトも同様だ。
段々とパターンも読めてきた。
確かに基本スペックは尋常じゃ無さそうだけど…それに頼り切っていて、単調な攻撃はこのメンバーなら問題にならない。
あとは耐久がどれほどか…
私を狙った大振りの攻撃を躱しざま、ヤツの脇腹に薙刀で斬りつける!
ザンッ!!
「ぐあっ!!」
確かな手応えがあった通り、斬りつけた部分がざっくりと避けて血飛沫があがった!
見た感じ、即座に再生するということも無い。
…こんなものなのか?
いや、そんなはずはない。
今もなお感じるプレッシャーは、これまで相対したどの敵よりも強大なものだ。
まだ、力を隠しているはず。
そう思って見れば、火山が噴火の前に鳴動するかのような不気味なものが蠢いてるように感じられる。
他の皆もそう思っているのだろう、慎重な姿勢を崩していない。
「くふふっ…なかなかやるじゃないか。流石は神々の眷族とその仲間達だな。これは出し惜しみしては失礼ってもんだなぁ?」
やはり、まだ本気じゃないか。
これからが本番ってことだ。
「けっ!随分舐められたもんだな…勿体ぶってねえで、さっさと本気出しな!きっちり畳んでやらぁっ!!」
「言われなくとも……地獄を見せてやるっ!!精々後悔するといいぜっ!!」
そう宣言したヤツの闘気がさらに強大なものになっていく!
そして、全身を覆う白い獣毛が漆黒に染まっていき、その体躯もまた膨れ上がる!!
全く…某宇宙人みたいに3段階目もあったりしないよね!?
もともと大柄だったその身体は一回りも二回りも大きくなって2メートルは優に超え、全身が白い獣毛に覆われる。
その顔も人間離れして、まるで狼のような肉食獣そのものとなる。
先程までとは比べ物にならない程の闘気を纏い、圧倒的な力を感じさせる。
手にはヤツ自身の身の丈ほどもある大剣を持っている。
「くはははっ!!まだ名乗ってなかったな!俺は『獣騎士』のラルヴァ!!まぁ、別に覚えなくてもいいぜ?お前らはここで死ぬんだからな!」
「ラルヴァか。ちゃんと覚えておいてやるから安心してくたばっちまいな!」
流石は父さん、しっかり煽るのは忘れないね。
だけど、あいつ…ただのハッタリなんかじゃないよ。
それは父さんもわかってるだろうけど。
とにかく、生半可な実力の者が相手しても犠牲が増えるだけだ。
「私達エーデルワイスが直接の相手をします!他の人達は支援に徹して下さい!!」
「カティアさん!私も…!」
「「私達も!」」
ルシェーラとケイトリン、オズマがそう言うが…
「ゴメン。今回ばかりは相手が悪い。前衛は父さん、ティダ兄、カイト、私で行くよ。あれは…『魔族』だ」
ルシェーラは確かに強い。
ほぼAランク級の力を持っていると言っても良いだろう。
実戦経験も急速に積んでいるとは思うが、あれを相手どるにはまだ不十分だと思う。
その僅かな経験の不足が致命的な隙となりかねないのだ。
ケイトリンとオズマも、アレの相手は荷が重いだろう。
「その代わり…姉さんやティセラさんたち後衛の護衛をお願い!」
「…分かりましたわ」
「…承知しました」
「分かりましたけど、カティア様が危なくなったら盾にでもなんでもなりますからね!」
渋々だが納得はしてくれたみたい。
3人とも、かえって足手まといとなりかねないと思ったのかもしれない。
だけど、ケイトリンを盾にするわけにはいかないから、しっかりしないとね…
「ふん…どうやら俺たちのことは知ってるみたいだな?」
「かつての『魔王』と同じく、『異界の魂』をその身に降ろした人間でしょう?」
以前、リル姉さんに聞いた事がある。
魔王程ではないが、『異界の魂』の隔絶した力を得た異形の者たちだ。
「俺たちは、『黒き魂』と呼んでるがな…まあ、その通りだ。だが、知っているのなら分かるだろう?俺たちが、ただの人間など足下にも及ばん力を持っていることを」
「うん、そうだね。…だから、申し訳ないけど皆で囲んでボコボコにさせてもらよ」
あんなバケモノ相手に、馬鹿正直に正々堂々一対一なんてやってられません…ってね。
「面白ぇ…やれるもんならやってみな!!」
かつてないほどの激しい戦いが始まる…!
「ぐるぁーーーっ!!!」
ドゴォッ!!!
ビリビリと空気を震わす咆哮とともに振り下ろされた大剣の一撃が開戦の合図となる!
私達は瞬時に散開してそれを躱すが、大きく地面を穿ったその威力に戦慄を覚える。
「いつぞやのオーガエンペラー並み……いや、それ以上のパワーとスピードだな」
「ああ。こりゃあ、骨が折れそうだぜ…」
オーガエンペラーって、魔軍襲来の時の?
その時の話は聞いてるけど…父さんが[鬼神降臨]使っても倒しきれなくて、印を解放したカイトと協力してようやく倒したんでしょ?
それよりも上となると……いや、その時は再生能力が尋常じゃなかったから苦戦したんだっけ。
コイツはどうだろうか…?
「はっ!あんな低俗なヤツと一緒にしてくれるなよ!!俺は人間を超越して生物の進化の到達点に至った存在…『魔族』なんだからな!!」
「なるほどね。以前私を狙った暗殺者が触手の化け物になったのは…その進化に失敗したってことかな?」
「そうだ。魔族にまで到れるのは、この俺のように黒き神に選ばれた者だけだ!さあ、お喋りは終わりだ。そろそろくたばんな!!」
もう少し情報を引き出したいけど…こっちもミーティアの救出が最優先だから、それほど時間はかけられない。
そして猛攻が始まる…!
今度は単発ではなく嵐のような連続攻撃だ。
掠っただけでも大ダメージは必至。
しかしこちらだって負けてはいない!
歴戦の勇士である父さんやティダ兄は流石の安定感で、紙一重でも危なげなく攻撃を回避して反撃の機会を伺っている。
私は既にディザール様の印を常駐状態で発動、カイトも同様だ。
段々とパターンも読めてきた。
確かに基本スペックは尋常じゃ無さそうだけど…それに頼り切っていて、単調な攻撃はこのメンバーなら問題にならない。
あとは耐久がどれほどか…
私を狙った大振りの攻撃を躱しざま、ヤツの脇腹に薙刀で斬りつける!
ザンッ!!
「ぐあっ!!」
確かな手応えがあった通り、斬りつけた部分がざっくりと避けて血飛沫があがった!
見た感じ、即座に再生するということも無い。
…こんなものなのか?
いや、そんなはずはない。
今もなお感じるプレッシャーは、これまで相対したどの敵よりも強大なものだ。
まだ、力を隠しているはず。
そう思って見れば、火山が噴火の前に鳴動するかのような不気味なものが蠢いてるように感じられる。
他の皆もそう思っているのだろう、慎重な姿勢を崩していない。
「くふふっ…なかなかやるじゃないか。流石は神々の眷族とその仲間達だな。これは出し惜しみしては失礼ってもんだなぁ?」
やはり、まだ本気じゃないか。
これからが本番ってことだ。
「けっ!随分舐められたもんだな…勿体ぶってねえで、さっさと本気出しな!きっちり畳んでやらぁっ!!」
「言われなくとも……地獄を見せてやるっ!!精々後悔するといいぜっ!!」
そう宣言したヤツの闘気がさらに強大なものになっていく!
そして、全身を覆う白い獣毛が漆黒に染まっていき、その体躯もまた膨れ上がる!!
全く…某宇宙人みたいに3段階目もあったりしないよね!?
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる